Ankur Arora Murder Case

3.5

 2013年6月14日公開の「Ankur Arora Murder Case(アンクル・アローラー殺人事件)」は、犯罪ドラマのような題名であるが、実際は大病院での医療事故を題材にした裁判ドラマ映画である。

 プロデューサーはヴィクラム・バット。監督は「Summer 2007」(2008年)のソハイル・ターターリー。キャストはケー・ケー・メーナン、ティスカ・チョープラー、アルジュン・マートゥル、ヴィシャーカー・スィン、ハルシュ・チャーヤー、パーオリー・ダーム、マニーシュ・チャウダリー、ヴィシェーシュ・ティワーリー、クシュブー・カマルなどである。

 ローメーシュ(アルジュン・マートゥル)は、シェーカーワト普通病院の研修医だった。インドでもっとも優秀な外科医アスターナー(ケー・ケー・メーナン)の下で研修を積んでいた。同僚のリヤー(ヴィシャーカー・スィン)とは恋仲にあり、職員寮で同棲していた。

 ある日、盲腸手術のために入院した少年アンクル・アローラー(アンクル・アローラー)の体調が手術後に急変し、意識不明となって、死んでしまう。アンクルは手術前にビスケットを食べてしまっており、手術を担当したアスターナー医師が胃の中の食べ物を除去しなかったことが原因で死に至ったのだが、アスターナー医師は自分の名誉と病院の評判を守るため、肺の機能不全による死と原因を捏造した。たまたま手術室にいたリヤーは、口裏を合わせるように強制され、アンクルがビスケットを食べたことを報告した看護婦ロージーナー(クシュブー・カマル)を故郷に帰す。

 ローメーシュは生前のアンクルに、必ず元気になると約束していた。ローメーシュはリヤーから死の原因を聞き出し、マスコミに流す。アスターナー医師、病院のオーナーであるシェーカーワト(ハルシュ・チャーヤー)、そして弁護士のラージーヴ(マニーシュ・チャウダリー)に追及されたリヤーはローメーシュに漏らしたことを明かす。リヤーはローメーシュと別れることになる。

 ローメーシュは研修医を辞職し、アンクルの母親ナンディター(ティスカ・チョープラー)と共にアスターナー医師と病院を相手取って訴訟を起こす。原告側の弁護士に就いたのがカージョリー・セーン(パーオリー・ダーム)であったが、彼女はラージーヴと不倫関係にあった。ラージーヴからは裁判を長引かせるように指令されていた。しかし、ラージーヴに妊娠した子供を堕胎させられたことでラージーヴと敵対するようになり、裁判での勝利を目指して弁護を始める。ゴアに潜伏していたロージーナーを証人に呼んだりして努力するが、被告側の妨害に遭い、リヤーがアスターナー医師に有利な証言をしたことで、訴訟は却下されてしまう。

 責任を感じたリヤーは研修医を辞める。だが、そのときにアスターナー医師が罪を自白するところを密かに録音していた。そのビデオはマスコミによって放送され、アスターナー医師は逮捕される。こうしてナンディターは病院側から賠償金を勝ち取った。

 医療事故により死亡した少年を巡る物語で、前半は主に病院内でストーリーが進み、後半は裁判ドラマとなる。だが、広範な社会問題を扱った映画ではなく、件の少年は、病院の共同創始者も務める敏腕医師のうっかりミスが原因で死んでおり、病院の経営者も加わってミスの隠蔽工作に走ったことがそもそもの問題として提示されていた。

 主人公の若い研修医ローメーシュは、生前に交わした少年との約束を忘れられず、自らのキャリアを投げ打ち、恋人リヤーとの縁も切って、尊敬していたアスターナー医師に立ち向かう。

 後半になると、原告となった病院側は、裁判を有利に進めるために、原告が用意した証拠の隠滅に走る。また、原告の弁護士カージョリーは被告の弁護士ラージ-ヴと不倫関係にあり、裁判でも被告に味方するような弁論を行っていたことも早い段階で明らかになるが、それもラージーヴがカージョリーに堕胎を要求したことでカージョリーは本気で原告のために仕事をし出す。

 意外なことに、裁判は被告側の勝利に終わるが、リヤーがスティングオペレーションをしたことでアスターナー医師の不正が発覚し、最終的には原告側の勝利となる。

 スリラー映画を得意とするヴィクラム・バットが製作と同時に脚本も担当しており、いかにも昭和的な筋書きのスリラー映画であった。作品の中に社会的なメッセージ性は乏しく、絡み合う人間関係の中で物語がどう展開していくのかを楽しむタイプの娯楽映画である。

 演技派俳優を取り揃えているため、彼らの競演は映画の一番の見所だ。ケー・ケー・メーナン、ティスカ・チョープラー、そしてアルジュン・マートゥルなどの演技が賞賛に値する。

 「Ankur Arora Murder Case」は、医療事故によって死亡した少年を巡る裁判ドラマで、前半は病院が舞台、後半は裁判所が舞台の構成になっている。古風な作りではあるが、しっかりした構成で、スリラー映画として完成されている。