Vaada Raha… I Promise

3.5
Vaada Raha... I Promise
「Vaada Raha… I Promise」

 2009年9月11日公開の「Vaada Raha… I Promise」は、脊髄損傷により四肢麻痺となった医師と利発な少年を巡る感動的な物語である。「Vaada Raha」とは直訳すれば「約束があった」という意味になる。

 監督はサミール・カルニク。過去に「Nanhe Jaisalmer」(2007年)や「Heroes」(2008年)などを撮っている。主演はボビー・デーオールとカンガナー・ラーナーウト。子役ながらその主演二人を超える存在感を示す役柄を演じるのは「Nanhe Jaisalmer」の主役ドイジ・ヤーダヴだ。ドイジは「Nanhe Jaisalmer」でボビーと共演していた。

 他に、モヒニーシュ・ベヘル、シャラト・サクセーナー、ヴィヴェーク・シャウク、アトゥル・アグニホートリーなどが出演している。

 映画公開時にはインドに滞在していたが、この映画は見逃していた。2024年5月13日に鑑賞し、このレビューを書いている。

 デューク・チャーウラー(ボビー・デーオール)は優れた外科医で、彼がライフワークにしていた癌の治療法の研究でも米国の医療協会から資金提供を受けるなど、世界的に認められていた。ところが恋人のプージャー(カンガナー・ラーナーウト)にプロポーズした夜、交通事故に遭って脊髄損傷の重傷を負い、首から下が麻痺状態になってしまう。以後、プージャーからは連絡が途絶え、人生に絶望する。

 デュークが入院していた病院ではローシャン(ドイジ・ヤーダヴ)という少年が主のような顔をしていた。彼は、白血病を患った姉のローシュニーと共に入院しており、気さくな人柄が病院の人々から愛されていた。ローシャンは早速デュークとも友達になり、塞ぎ込んだデュークに積極的に話しかける。当初は彼を邪魔者扱いしていたデュークも次第にローシャンの天真爛漫さに心を開き、生きようとする気持ちが沸き起こってきた。

 食事を拒否していたデュークはものを食べ始め、リハビリにも精を出すようになる。おかげで徐々に身体が動くようになってきた。ローシャンの姉が白血病であることを知ったデュークはリハビリと並行して癌の研究を再開する。そして彼は遂に治療法を確立し、歩行にも成功する。だが、そのときデュークはローシャンが死んだとの訃報を聞く。実は白血病だったのはローシュニーではなくローシャン自身であった。

 5年後、デュークはプージャーと結婚し、ローシャンという子供をもうけていた。

 カンガナー・ラーナーウトはこの映画の撮影時まだ20歳余りだったはずである。彼女は外部から映画界に飛び込んだアウトサイダーながら17歳という若さで「Gangster」(2006年)に主演しデビューを果たした。この映画の鑑賞を決めたのも、第一にカンガナーが出演していたからである。

 しかしながら「Vaada Raha… I Promise」においてカンガナーが演じたプージャーは、あまりいい役ではなかった。まず、詳しい説明もなくいきなり登場するのであまり彼女の人物設定がよく分からない。しかも、ボビー・デーオール演じる許嫁のデュークを交通事故で四肢麻痺になった途端に振るという、同情しにくい役柄である。彼女がデュークを振った理由について、一応正当化するような説明はされていたものの、納得はしにくい。さらに、最後でも再び詳しい説明なくデュークとよりを戻して結婚している姿が提示され、彼女を巡るモヤモヤした気持ちが解消されないまま終わる。カンガナーにとってはほとんど見せ場のない映画であった。

 ほとんど寝たきりのボビー・デーオールは、首から上しか動かせないという制約の中で悲劇の医師デュークをよく演じていた。だが、「Vaada Raha… I Promise」を成立させていたのはむしろ、ローシャン役を演じた子役俳優ドイジ・ヤーダヴであることは万人が認めるところであろう。「Nanhe Jaisalmer」でも好演していたが、今回も暗くなりがちなストーリーにたった一人で明るい光を照らしており、絶賛に値する。もちろん、死を前にしながら明るく振る舞う人物が登場する感動作は「Anand」(1971年)から「Kal Ho Naa Ho」(2003年)まで枚挙に暇がなく、目新しさはないものの、外れがなく安定している。

 映画に転機をもたらす重要なギミックになっていたのは、デュークが横たわる病室の窓から見える風景だ。カメラはわざと外の風景を見せていなかったが、窓の外をローシャンがのぞき込み、外の様子をデュークに聞かせる。デュークはそれを聞いててっきり、病院の窓の外には広場が広がり、子供たちがクリケットに興じていると信じ込むが、歩くことができるようになった彼が真っ先に窓の外を見てみたところ、そこには壁があり、景色は塞がれていた。ローシャンはデュークを楽しませるために即興で情景を作り出し聞かせていたのだった。それに気付いたとき、ローシャンはもうあの世に旅立っていた。

 人生に絶望していたデュークが前向きな気持ちになれたのにはローシャンの存在が大きかった。だが、もうひとつ重要な要素が「許し」である。デュークは、自分を四肢麻痺にした交通事故を起こした張本人の父親から、事故について都合のいい供述をして欲しいと頼まれる。事故を起こしたチェータンは既に亡くなっていたが、彼の加入していた保険は今回の事故に対応するには保険料が足らず、父親は困窮していた。デュークが、いくらか自分の過失を認める供述をすれば、彼の入っている保険から保険金が下りることになり、チェータンの父親は救われる。彼はそれを求めてデュークのところへ来るのだが、当然のことながら自分の運命を呪うデュークがその通りにするはずがない。だが、ローシャンとの出会いなど、気持ちの変化があったことで、デュークはチェータンの父親の希望に沿った供述をし、彼を救った。そのときから、ピクリとも動かなかった手指が動くようになったのだった。いわば、他人を許したことで彼自身が救われたのだった。

 デュークにはジュニアという名前の愛犬がいた。デュークが事故に遭ったことでジュニアは食事をしなくなる。ローシャンはデュークを元気づけるために病院にジュニアを密かに連れ込んでデュークに会わせる。だが、意外にジュニアの存在はデュークの回復に寄与しなかった。むしろ、デュークが自身の回復をジュニアに見せることで、ジュニアを元気づけていた。

 基本的にはインドを舞台にした映画だが、ダンスシーンになるとトルコに飛ぶ。イスタンブールのブルーモスクやエフェソスの古代遺跡などで撮影が行われていた。

 「Vaada Raha… I Promise」は、「Nanhe Jaisalmer」で注目を浴びた子役俳優ドイジ・ヤーダヴがボビー・デーオールと再共演し、ヒロインに若きカンガナー・ラーナーウトを起用した感動系の作品である。興行的には大失敗に終わっており、確かに目新しさはないが、外れのない王道のストーリーを忠実に踏襲しており、悪くはない作品だ。


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