C Kkompany

4.0

 ムンバイーで「D」または「Dカンパニー」といえば、1993年のボンベイ連続爆破事件の首謀者とされるアンダーワールドのドン、ダーウード・イブラーヒームと彼のギャングのことである。1986年にインドから逃亡した後、海外からムンバイーのアンダーワールドを支配し続けてきた。ダーウードは娯楽業界が好きで、ヒンディー語映画界とも密接な関係を持っていた。よって、彼を直接的・間接的に取り上げたヒンディー語映画はとても多い。

 2008年8月29日公開の「C Kkompany」は、ダーウード・イブラーヒームの「Dカンパニー」をもじった題名のコメディー映画だ。インドのTVドラマ業界を牛耳るバーラージー社が製作しており、エークター・カプール社長がプロデューサーである。監督は新人のサチン・ヤールディー。

 エークター・カプールが強力な人脈を駆使して作った映画で、キャストが非常に豪華である。主演はエークター・カプールの弟トゥシャール・カプール、コメディアン俳優のラージパール・ヤーダヴ、そして名優アヌパム・ケール。その他に、庶民から圧倒的な人気を誇るミトゥン・チャクラボルティー、ベンガルビューティーのラーイマー・セーン、「Lage Raho Munna Bhai」(2006年)でマハートマー・ガーンディーを演じたディリープ・プラバーヴァールカル、さらにサンジャイ・ミシュラー、ニキル・ラトナーパールキー、ヴィナイ・アプテーなどが出演している。

 特別出演陣も驚くほど豪華だ。エークター・カプール自身が本人役でカメオ出演している他、カラン・ジョーハル、マヘーシュ・バット、サンジャイ・ダット、セリーナ・ジェートリーなど、ヒンディー語映画界の有名監督やスターがチョイ役で出演している。また、サークシー・タンワル、ヒテーン・テージワーニー、ガウリー・プラダーン、クリストル・デスーザ、カラン・パテール、アリー・アスガルなど、TV界で活躍する俳優たちも多数出演している。

 インドの娯楽業界では映画とTVが併存関係にあり、ステータスでは映画スターの方が圧倒的に上である。だが、エークター・カプールは映画界とTV界の両方で事業を行っており、この2つの世界の橋渡しができる立場にある。そんな彼女が、ヒンディー語映画史に残るほど豪華な特別出演で彩られた「Om Shanti Om」(2007年)に負けるなと、映画界とTV界のスターたちを大集合させた映画を作ったのがこの「C Kkompany」だといえる。また、バーラージー社の自虐的なパロディーがあったのも印象的だった。

 舞台はムンバイー。アクシャイ・クマール(トゥシャール・カプール)、ラマーカーント・ジョーシー(アヌパム・ケール)、ランボーダル・ジャー(ラージパール・ヤーダヴ)の三人は、同じアパートのC棟に住む負け犬仲間だった。

 アクシャイは犯罪番組のレポーターで、アンダーワールドのドン、ダットゥーバーイー(ミトゥン・チャクラボルティー)の妹プリヤー(ラーイマー・セーン)と付き合っていた。プリヤーは、マフィアに囲まれた生活に嫌気が差しており、アクシャイと共にドバイに逃げようとしていたが、アクシャイにはそのお金がなかった。ダットゥーはプリヤーを、仲のいいマフィアの娘と結婚させようとしていた。

 ラマーカーントは既に定年退職していたが、息子のプルショッタム(ニキル・ラトナーパールキー)から冷遇されており不満を持っていた。プルショッタムの養育に費やした1千万ルピーを返金してもらおうと考えていた。

 ランボーダルは身長が低く、妻や息子からも蔑まれていた。しかも彼は息子に内緒でショッピングモールで着ぐるみ師の仕事をしていた。とうとう妻と息子から愛想を尽かされ家を出て行かれてしまった。ランボーダルは家族を見返すため、自分の会社を持ちたいと夢見ていた。

 三人に共通していたのは金が欲しいということだった。建設会社を経営するプルショッタムに財力があったため、三人は彼を脅して、1千万ルピーを用意させる。そのときに使った偽のマフィア名が「Cカンパニー」であった。

 謎の新マフィア、CカンパニーがニュースでTVで大々的に報道されたことで一躍有名になる。しかも、Cカンパニーはマフィアの脅迫により住居を追われそうになっていた人々を助けたため、さらに人気になる。政府の汚職に嫌気が差していた人々は、「アンダーワールドのロビン・フッド」の登場を歓迎する。一方、今までムンバイーを恐怖で支配してきたダットゥーは、新たなライバルの登場に激怒する。ダットゥーは、知己の警察官ジャーウレー警部補(ヴィナイ・アプテー)に命じてCカンパニーの正体を突き止めさせるが、全く手掛かりがなかった。とうとうダットゥーの経営するクラブが、Cカンパニーに勇気づけられた市民のデモ活動によって廃業に追い込まれる。

 しかし、ダットゥーは、プルショッタムがCカンパニーに1千万ルピーのみかじめ料を支払おうとしていることを知り、金の受け渡しの瞬間がチャンスだと察知して待ち伏せする。それによって、アクシャイ、ラマーカーント、ランボーダル、そしてプリヤーが捕まってしまう。彼らはCカンパニーの解散を約束し、ダットゥーはアクシャイとプリヤーの結婚を許す。

 まずは特別出演陣があまりに豪華であり、インドの映画業界やTV業界に詳しい人にとっては、キャスティングの波状攻撃的なサプライズを楽しめる映画だった。冒頭のサンジャイ・ダットやカラン・ジョーハルからはじまり、中盤のマヘーシュ・バット、終盤のエークター・カプールなど、重量級のセレブリティーが目白押しであった。映画スターのみならず、TVドラマで活躍する俳優たちが多数出演していたこともユニークだった。また、過去のヒット映画や人気TVドラマのパロディーも随所に散りばめられていて、それらをひとつひとつ解きほぐすのも楽しい作業であろう。そもそも主役の名前がアクシャイ・クマールなのである。

 バーラージー社のTVドラマはインド人主婦層に大人気だが、そのワンパターンかつ強引な展開には批判も多い。あまりに大袈裟な演出は既にトレードマークになっているが、メインキャラクターを演じる俳優を途中で交代させてしまうという力技もやってのける。途中で俳優が変わるときには、交通事故で顔を怪我して変わってしまったとか、整形手術を受けて別人のようになってしまったとか、そんな無茶苦茶な演出をする。それすらも「C Kkompany」ではパロディーにされており、ここまで自虐が過ぎると哲学まで感じてしまう。

 トゥシャール・カプールの演技はいつも通り迫力不足だが、それ以外のメインキャストであるアヌパム・ケール、ラージパール・ヤーダヴ、ラーイマー・セーン、そしてミトゥン・チャクラボルティーの演技も良かった。特に、インテリなイメージのあるラーイマーがこのようなコテコテのコメディー映画に楽しそうに出演しているところに好感が持てた。

 インドのコメディー映画は、個々のコント劇に注力し過ぎて、全体を貫くストーリーが弱くなる傾向にあるが、「C Kkompany」はストーリーがしっかりしていた。軽い気持ちで「Cカンパニー」を名乗って脅迫を始めた負け犬三人組が、ムンバイーのアンダーワールドがひっくり返るような大騒動を引き起こすのだが、一応ロジカルな展開であり、物語に没入することができた。

 インド娯楽映画のフォーマットに則ってダンスシーンも多めだったが、大半はストーリーとの脈絡なく挿入される形だった。古き良きヒンディー語映画のスタイルではあるが、古風な印象は拭えなかった。

 「C Kkompany」は、ムンバイーのアンダーワールドを牛耳っていたダーウード・イブラーヒームとDカンパニーをパロディーしたコメディー映画である。パロディーの対象になっているのはダーウードのみならず、ヒンディー語映画やTVドラマも槍玉に挙がる。プロデューサーのエークター・カプールが作るTVドラマですら自虐的にパロディーになっている。また、映画界やTV界のセレブリティーが多数特別出演しており、非常に豪華だ。興行的には大失敗に終わったが、インドの娯楽業界に詳しい人ほど楽しめる玄人好みのコメディー映画に仕上がっている。観て損はない映画だ。