今日は、本日(2007年4月20日)より公開の新作ヒンディー語映画「Kya Love Story Hai」を観に行った。
監督:ラブリー・スィン(新人)
制作:NRパチスィヤー
音楽:プリータム
作詞:シャッビール・アハマド
振付:ラージーヴ・スールティー
出演:トゥシャール・カプール、アーイシャー・ターキヤー、カラン・フックー(新人)、カリーナー・カプール(特別出演)
備考:PVRプリヤーで鑑賞。
舞台は南アフリカ共和国。アルジュン(トゥシャール・カプール)は死んだ両親の財産のおかげで悠々自適の生活を送っていた。建築学を納めたものの、何の仕事もしていなかった。あるときアルジュンは、カージャル(アーイシャー・ターキヤー)と出会い、一目惚れする。しかし、カージャルの好みは自立した男性であった。アルジュンは、カージャルにふさわしい男になるためにムンバイーへ渡る。 一方、カージャルは若き実業家ランヴィール・オーベローイ(カラン・フックー)と出会う。ランヴィールは完璧にカージャルの夢の男性であった。ランヴィールの母親もカージャルのことを気に入り、二人の縁談を持ち出す。ランヴィールとカージャルは、とりあえずお互いを知るために交際を始め、やがて婚約する。 アルジュンはムンバイーで仕事を受注し、自信を持って南アフリカ共和国に帰って来る。だが、カージャルがランヴィールと婚約したことを知り、ショックを受ける。アルジュンはそれでも、愛する女性が幸せになるならと、自分の気持ちを隠し、二人の結婚を応援することに決める。しかしながら、次第にカージャルは、仕事のことしか頭にないランヴィールとの結婚に疑問を感じ始める。そんなとき、思い浮かぶのはアルジュンであった。 ランヴィールもアルジュンがカージャルのことを好きであることに気付いていた。ランヴィールはアルジュンに、カージャルに想いを打ち明けるべきだと言う。それを聞いていたカージャルはアルジュンに愛の告白をし、二人は結婚することになる。
駄作。完全な駄作。何から何まで駄作。何とか褒めるべき点を見つけてあげたいが、非常に難しい。こんなつまらない映画が天下のPVR系列マルチプレックスで公開されていることが驚きである。おそらくそれは、音楽のヒットに依るのであろう。映画自体は正真正銘の駄作である。
この映画の最大の見所は、アリーシャー・チノイが歌い、カリーナー・カプールがアイテムガールとしてダンスを踊る、冒頭と最後のダンスシーン「It’s Rocking」である。この部分だけはヒット作の貫禄がある。実際、TVで流されているトレーラーもほとんどがこのダンスシーンだ。おかげでてっきり僕は、「Kya Love Story Hai」はカリーナー・カプール主演の映画だと思っていた。多くの人が同じ勘違いをしているのではないかと思う。それにしてもカリーナー・カプールをスクリーン上で見るのは久し振りだ。最近ちょっと演技派ぶっていたが、「It’s Rocking」中のカリーナーはデビュー当初のイケイケギャル風オーラを漂わしており、嬉し懐かしい気がした。早期のカムバックを望む(別に一時引退したわけではないが・・・)。
見所はこれだけ、と言いたいところだが、「Kya Love Story Hai」には、日本人にとって驚くべき見所がもうひとつ存在する。なんと、スタジオジブリの代表作のひとつ「もののけ姫」(1997年)の、米良美一が歌うあのテーマソングが映画中5、6回使用されるのだ。そう、あの「張り詰めた~弓の~震える弦よ~」という有名な曲である。それが後半で何度も何度も何の脈絡もなしに繰り返し流されからぶっ飛ばざるをえない。十中八九、無断使用であろう。日本の楽曲がヒンディー語映画に使用されたのは、僕が確認している中ではこれが2例目だ。1例目は「Koi… Mil Gaya」(2003年)のタイトル曲のイントロに使用されている、喜太郎の「夜明け」である。と言う訳で、日本人ならではの楽しみ方ができる映画ではあるが、その生き証人になるために映画館に足を運ぶ価値は皆無と言っていい。
映画の良さを論じるのは意味のあることだが、映画のつまらなさを論じるのはつまらない映画を観るよりもつまらないことだ。だからとにかくこの映画はつまらないとだけ書いて終わりにしたいのだが、僕が最も不満だった点をひとつだけ挙げておく。それはやっぱりエンディングである。主人公のアルジュンはカージャルのことが好きだった。カージャルのフィアンセのランヴィールもアルジュンの気持ちを察し、カージャルに打ち明けるべきだと説得する。とうとうカージャルにまでも本心がばれてしまう。だが、それでもアルジュンはカージャルに告白しようとしない。最終的にカージャルの方がアルジュンに「I Love You」と言って、二人は結婚することになる。こんな展開でいいのか?こんなもどかしい終わり方のインド映画は前代未聞である。
ヒーローはトゥシャール・カプールであったが、彼はまだ勘違いを続けているようだ。トゥシャールよ、お前は「のび太君俳優」としての地位を何とか確保したはず。弱虫男を演じたら右に出る者はないということが分かったはず。それなのにこの期に及んでなぜヒーローを演じるのだ?確かにうじうじした男の役だったが、うじうじしきれていないところがあって、あわよくばヒーローを目指していたのではないか?しかもイムラーン・ハーシュミーの真似まで始めたように思える。映画自体つまらなかったが、トゥシャールのおかげでつまらなさが2乗になってしまっていた。
ヒロインのアーイシャー・ターキヤーは熱演をしていた。どんどん太ってフグみたいな顔になって来ているが、チャーミングな笑顔は健在。今や中堅女優と言っても差し支えないのではないかと思う。「第3の男」ランヴィール・オーベローイを演じたカラン・フックーは、カシュミーリー・ブラーフマンの家柄のモデルであり、本作が俳優デビュー作となる。はっきり言ってトゥシャールよりも彼の方がヒーローのオーラを持っていた。きっとすぐにヒーロー男優になれるだろう。
舞台は南アフリカ共和国で、全編同国ロケ。特にビーチの風景が美しかった。黒人キャラや黒人エキストラが多く登場する点は、インド映画ではユニークである。
「Kya Love Story Hai」は駄作中の駄作であるため、観る価値はゼロに等しい。ただ、「It’s Rocking」などのヒットによりサントラは成功しているし、カリーナー・カプールのアイテムガール出演は映画の最大の見所となっている。また、インド映画の中で突然米良美一の「張り詰めた~弓の~」という声が流れて来るというシュールさは、日本人には堪らない。映画自体は何の魅力もない作品である。