Deadline: Sirf 24 Ghante

3.0
Deadline: Sirf 24 Ghante

 2006年11月10日公開の「Deadline: Sirf 24 Ghante(デッドライン:わずか24時間)」は、米国のベストセラー小説家グレッグ・アイルズ著の「24時間」(2000年)を原作にした映画である。ケヴィン・ベーコンとシャーリーズ・セロン主演の米国映画「コール」(2002年)もアイルズの「24時間」を原作にしている。公開当時は鑑賞をパスしており、2022年8月25日に映画を観て、このレビューを書いている。

 監督は「Madhoshi」(2004年)のタンヴィール・カーン。キャストは、イルファーン・カーン、コーンコナー・セーンシャルマー、ラジト・カプール、サンディヤー・ムリドゥル、ジャナク・シュクラー、ザーキル・フサインなどである。

 ムンバイー在住の著名な心臓外科医ヴィーレーン・ゴーエーンカー(ラジト・カプール)は、インド医学協会からの授賞式に出席するためデリーを訪れた。自宅では、妻のサンジャナー(コーンコナー・セーンシャルマー)と一人娘のアニシュカー(ジャナク・シュクラー)が留守番していた。

 デリーで授賞式が行われている頃、ヴィーレーンの自宅にはクリシュ・ヴァイディヤー(イルファーン・カーン)とカビール(ザーキル・フサイン)が押し入り、アニシュカーを誘拐していった。また、ヴィーレーンがデリーで宿泊していた部屋にはルーヒー(サンディヤー・ムリドゥル)が押し入り、ヴィーレーンに銃を突き付けていた。彼らはヴィーレーンに1千万ルピーの身代金を要求した。デッドラインは24時間後だった。

 ヴィーレーンが何とか1千万ルピーを工面すると、今度は身代金の額が2千万ルピーに跳ね上がった。あちこち借金をして2千万ルピーをかき集めると、ヴィーレーンは今度は3千万ルピーを要求した。そして、3千万ルピーを持ってルーヒーは姿を消す。一方、ムンバイーの自宅でもクリシュはいなくなる。

 クリシュは実は息子を心臓の病で亡くしており、その担当医がヴィーレーンだった。ヴィーレーンは手術代が支払われないと手術はしないと言い張り、クリシュが金策に走っている間に息子は死んでしまった。また、ルーヒーは彼の妻であった。彼らはヴィーレーンに復讐するためにアニシュカーの誘拐を計画したのだった。ヴィーレーンは自分が傲慢になっていたことを反省し、TVを使ってクリシュに謝罪する。アニシュカーは生還しないかもしれないと諦めかけていたが、クリシュはその謝罪を受け入れ、アニシュカーと身代金を返す。

 著名な医師の家族を狙った身代金目当ての誘拐犯罪劇であるが、犯人には実は深い動機があり、それがラストに明かされるという流れであった。この種の映画が好きな人ならば、冒頭部分を観ただけで大まかな流れは予想できる展開であり、そういう意味ではサスペンス性は低かった。それでも、後にヒンディー語映画界で演技派俳優としての名を恣にするイルファーン・カーンを筆頭に、コーンコナー・セーンシャルマーやザーキル・フサインなどの好演が光り、彼らの演技をじっくり楽しむことのできる作品になっていた。

 題名に「24時間のデッドライン」が掲げられている割には、刻一刻とデッドラインが近付いてくるスリルを効果的に描けていなかった。仲間内で30分ごとに電話をし、それが通じないと人質が殺されるという設定は存在したものの、もっと時計を映し出して、あとどれくらい時間が残っているのかを観客に逐一示すべきであっただろう。

 人質になったアニシュカーが重度の喘息を患っていることで、誘拐犯グループの中では動揺が走る。そして、ヴィーレーンがサンジャナーを連れてアニシュカーのところまで薬を届けに行くというシーンがある。わざわざ父と母と子を別々にして身代金を要求するという手法はよく考えられていたが、サンジャナーとアニシュカーを引き合わせるというところは素人臭い。後に彼らはプロの誘拐犯ではなかったことが分かるので、それはそれでいいのだが、そうなると、一般市民のはずのルーヒーがやたら銃の扱いに長けていたりして、矛盾する部分も出て来る。

 最初はクリシュが息子の手術代のために金を工面することになり、次にヴィーレーンが娘の身代金として金をかき集める。金額の桁は異なるが、それぞれの生活レベルにおいて大金であった。彼らは資産を売ると同時に、職場や知人友人に支援を求める。意外に多くの人々が簡単にお金を貸してくれていたが、実際にはインド人はそんな軽率ではない。現実を知っていると非現実的に思えた。

 「Deadline: Sirf 24 Ghante」は、大方予想通りの展開をしてサスペンス性に欠け、デッドラインが刻一刻と迫るようなスリルの醸成にも失敗している誘拐犯罪映画ではあるが、高い演技力で知られるイルファーン・カーンとコーンコナー・セーンシャルマーなどが共演しており、演技を楽しめる映画である。