Naksha

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Naksha
「Naksha」

 今日はPVRプリヤーで、2006年9月8日公開の新作ヒンディー語映画「Naksha」を観た「Naksha」とは「地図」という意味。監督はサチン・バジャージ、音楽はプリータム。キャストは、サニー・デーオール、ヴィヴェーク・オーベローイ、サミーラー・レッディー、ジャッキー・シュロフ、トリローク・マロートラー、ナーヴィニー・パリハール、スハースィニー・ムレー、ムリドゥラー・チャンドラシェーカルなど。

 考古学者のカピル・マロートラー(トリローク・マロートラー)は、ある地図に秘められた謎を解き明かそうとしていた。その地図には、マハーバーラタ戦争において無敵の強さを誇ったカランが身にまとっていた甲冑の在り処が示されていた。その甲冑を身に着けた者は不死身の力を手に入れると言われていた。カピルが考古学的な観点からその甲冑を捜し求めていたのに対し、同じく考古学者バリ・バイヤー(ジャッキー・シュロフ)は、絶対的力に取り付かれ、地図を求めていた。カピルは、バリにその地図を渡すことを潔しとせず、地図に火を放って崖から飛び降りる。こうして、カランの甲冑の在り処を記した地図は永遠に失われることになった。

 それから20年後。カピルの息子ヴィッキー(ヴィヴェーク・オーベローイ)は、たまたまその地図を見つけ出し、父親の遺志を継ぐことを決意する。地図の謎を解き明かそうとしている内に、彼はバリの手下に捕まってしまう。だが、それを救ったのが、ヴィッキーの異母兄弟で森林局員のヴィール(サニー・デーオール)であった。ヴィッキーの危機を察した母親(ナヴィニー・パリハール)が、ヴィールの母親(スハースィニー・ムレー)に頼んで送り込んだのだった。

 ヴィールとヴィッキーは、共にカランの甲冑を探し始める。途中、リヤー(サミーラー・レッディー)という女の子も仲間に加わる。三人は小人の村で楽しい夜を過ごすが、翌朝、バリが現れて地図を奪われてしまう。ヴィールとヴィッキーは殺されそうになるが、危機を脱してバリの後を追う。

 だが、バリは遂に雪山の中の神殿においてカランの甲冑を手に入れてしまっていた。無敵の力を手に入れたバリの前に、二人は成す術がなかった。だが、その甲冑にも弱点があった。それは、光のない場所で効力を失うことだった。日没と同時に二人はバリを攻撃してやっつける。だが、そのとき神殿は崩壊し出す。ヴィールとヴィッキーは何とか脱出するが、鎧は永遠に失われてしまった。

 「Krrish」(2006年)を「インド版スーパーマン」だとしたら、この「Naksha」は「インド版インディー・ジョーンズ」である。それだけでなく、「ランボー」、「ターザン」、「スター・ウォーズ」などなど、ハリウッドのヒット作のいいとこどりをしてマサーラー風味にミックスしたかなり野心的な娯楽映画である。しかし、全体としてチープな作りであり、ストーリーも起伏に乏しく、大した映画ではない。

 インド映画は必ず「マハーバーラタ」と「ラーマーヤナ」に帰る。「Naksha」も、「マハーバーラタ」が重要な下地になっている。この冒険活劇で「お宝」扱いされていたのは、カランの甲冑。カラン(カルナ)とは、パーンダヴの五王子の兄で、アルジュンの最大のライバルだった英雄である。彼は生まれなら無敵の甲冑と耳輪を身に着けていた。この甲冑こそが物語の核となっている。ハリウッドお得意の考古学ファンタジーを、うまく「マハーバーラタ」と結び付けた点では高く評価できる。ちなみに映画中、この話を説明するのにアニメーションが挿入される。

 だが、冒険映画としてのスリルには全く欠けていた。地図はいかにも嘘っぽいし、展開に整合性がないし、中盤の最大の見せ場である小人たちの村での宴も、何だか安っぽくて僕は引いてしまった。カランの甲冑が祀られた神殿で待ち構えていた死の罠もチープ過ぎた。

 サニー・デーオールは本当に久し振りだ。いつものようにアクションシーンでは誇張され過ぎの怪力を披露して観客を喜ばしていた。こういうお馬鹿な娯楽映画なので、演技力云々を問うのは酷だが、映画中最も頑張っていたのは間違いなくサニーであろう。

 もう一人の主人公、ヴィヴェーク・オーベローイはいつにも増して酷かった。特に冒頭のシーンは胃がムカムカした。こんなヤワっぽいのに、アクションシーンになると突然強くなるのもおかしい。サニーとヴィヴェークのコンビはかなり異色の組み合わせと言っていいが、やっぱり二人とも住んでいる世界が別なので、スクリーン上で全然融和していなかった。ジャッキー・シュロフも久し振りに見た。もはや脇役か敵役しか演じられない男優になってしまっているようだ。おかしな風貌をしていたが、敵役としては合格点だろう。

 ヒロインのサミーラー・レッディーは・・・いつの間にか重量級の女優になってしまっていた。一応ヴィヴェーク演じるヴィッキーと恋仲になるという展開だったが、ロマンスは意外と深く描かれておらず、おかげでヒロインの出番も少なかった。どちらかというと、敵役バリの傍に付いていたセクシーな女性ムリドゥル・チャンドラシェーカルの方が観客の目を引いたことだろう。彼女が踊るアイテムナンバーはなかなか色っぽかった。

 ちなみに、ヴィールとヴィッキーは異母兄弟という設定になっている。つまり、死んだ考古学者カピルは再婚しており、前妻(スハースィニー・ムレー)との間にヴィールが、後妻(ナーヴィニー・パリハール)との間にヴィッキーが生まれた。前妻と後妻はお互いに口を利かない仲であったが、ヴィッキーの危機をきっかけに二人は仲直りをする。一応それが映画の結末となっていた。

 「Naksha」は、インド映画が「インディー・ジョーンズ」を作ったらどういう風になるかを、ある意味典型的な形で示してくれた作品である。だが、残念ながら原作を消化し切れていない上に、他にもいろんな要素を詰め込んでしまったため、ゲテモノ映画の域を出ない映画になってしまっている。無理して観る価値のある映画とは思えない。