Bhaggmati

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Bhaggmati
「Bhaggmati」

 今日はPVRアヌパム4で、2005年8月26日公開の新作ヒンディー語映画「Bhaggmati」を観た。この映画は1週間で打ち切りが決定した完全駄作映画であった。それなのになぜわざわざ観る気になったかというと、この映画が「実写とアニメを融合したインド初の映画」を銘打っていたからである。映画中にアニメが登場するインド映画は、僕の記憶では、例えば「Abhay」(2001年)、「Hum Tum」(2004年)、「Karam」(2005年)などがあった。だが、それらの映画でのアニメの使用法はオマケに過ぎなかった。「Bhaggmati」ではより本格的に実写とアニメの融合が目指されていた。

 「Bhaggmati」とは、16-17世紀にハイダラーバード周辺を支配したゴールコンダ王国の第4代スルターン、ムハンマド・クリー・クトゥブ・シャーの恋人の名前である。監督はアショーク・カウル、音楽はヴィシャール・バールドワージ。キャストは、ミリンド・ソーマン、タブー、アショーク・カウル、ヘーマー・マーリニー(特別出演)など。アミターブ・バッチャンが声のみで出演。

 歴史学の学生のシヴランジニー(タブー)は、歴史学者(アショーク・カウル)の指導の下、ムハンマド・クリー・クトゥブ・シャーとバーグマティーの恋愛を研究していた。英文学の学生アスィーム(ミリンド・ソーマン)はシヴランジニーに一目惚れするが、彼女は研究に没頭して彼に見向きもしなかった。

 シヴランジニーは次第にバーグマティーと一体化していき、ムハンマド・クリー・クトゥブ・シャーとバーグマティーの恋愛を感じることができるようになっていく。ゴールコンダ王国のムハンマド王子は、狩りの途中で美しいヒンドゥー教徒女性バーグマティーに出会い、恋に落ちる。王家簒奪を狙っていた大臣は、自分の娘を無理矢理ムハンマドと結婚させ、しかもイブラーヒーム王を暗殺する。ところが、王に即位したムハンマドはバーグマティーを宮廷に迎え入れて寵愛する。王妃はバーグマティーを毒殺しようとしたが、誤って自分が死んでしまう。大臣も悪行がばれて逮捕されてしまうが、大臣を裏で操っていた黒魔術師の魔術により、ゴールコンダ王国には疫病が広がって行った。バーグマティーは必死に人民の看病をするが、やがて自身が病に冒されてしまう。ムハンマド王は遷都を決意し、ゴールコンダの郊外に新たな都を建造する。そして、バーグマティーのためにチャール・ミーナールを建造させる。チャール・ミーナールが完成した日、バーグマティーは息を引き取る。

 実はシヴランジニーはバーグマティーの生まれ変わりだった。そしてアスィームはムハンマド・クトゥブ・シャーの生まれ変わりだった。2人はそれに気付き、愛は永遠であることを知る。

 日本では時々、インド映画全体がゲテモノ扱いされることがあるのだが、この映画はその中でもゲテモノ中のゲテモノだ。何度途中で退出しようと思ったことか。もうインド映画ファンをやめようかと思ったくらいつまらない映画。しかしひたすら自制し、何とか最後まで見通した。実写とアニメの融合、またムハンマド・クリー・クトゥブ・シャーとバーグマティーの恋愛、共に悪くないアイデアだった。しかしなぜこんなつまらない映画になってしまったのか?監督はこの映画のアニメーションにかなりの自信を持っているようだが、アニメ先進国日本で育った僕には、まだまだ幼稚園レベルに思えた。だが、この映画の足を引っ張ったのは、何と言っても実写部分である。大袈裟なセリフに、アニメのような固い演技。アニメの方が演技力があったくらいだ。アニメに実写映像が重ね合わされたりする部分も何度かあったが、それらもかなり違和感があった。

 実写とアニメが見境なく融合していたわけではなく、実写部分は現代のシーンの描写、アニメ部分は過去のシーンの描写、というように使い分けられていた。だが、タブー演じるシヴランジニーが次第にバーグマティーと一体化していくことにより、アニメの世界にタブーが入り込んでいく形になっていた。インドではアニメ産業が次第に勃興しつつあるが、まだまだ国際レベルとは言いがたい。まず突っ込みたくなったのは、バーグマティーの巨乳ぶり。日本にもなかなかこんな巨乳の女性キャラが登場するアニメはない。ルパン3世の不ニ子ちゃんといい勝負である。アニメ中に登場する女性キャラがみんな巨乳だったらまだ「そういう画風なんだろう」と納得がいくが、巨乳だったのはバーグマティーだけだった。それは、ムハンマド王子の正妻の貧乳とかなり対照的だった。これではムハンマド王子が巨乳にやられたという風にも取られてしまうのではなかろうか?しかも、かなり際どいバーグマティーの入浴シーンがあった。かなりエロかった。しかも、バーグマティーが入浴していたところにムハンマドが入ってきて一緒に風呂に入り、そのまま抱き合う。アニメだからって飛ばしすぎだ。僕はこの映画をインド初のエロアニメと位置づけたい。この映画の年齢認証は「U」、つまり「一般向け」だが、その際どすぎるアニメが少し問題になっているようだ。

 おそらくこれもインド初であろうが、インド映画によくあるような群舞ダンスシーンがアニメで再現されていた。ディズニーアニメのミュージカルとはかなり違う。面白かったのは、ヘーマー・マーリニーが実写で登場し、背景でアニメのダンサーたちが踊っていたシーン。かなりへぼかったが、これをもっと洗練させていけば何か形になるかもしれないと思った。他に、3DCGと2Dアニメの融合も試みられていたが、何だかぎこちなかった。とは言え、実写部分の稚拙さに比べたらアニメの方はかなりマシであった。いっそのことアニメだけを編集しなおして、「ムハンマド・クリー・クトゥブ・シャーとバーグマティーの愛の物語」みたいなアニメ映画にしてしまった方がよかったのではなかろうか?

 テーマがテーマなだけに、ハイダラーバード郊外にあるゴールコンダ砦や、ハイダラーバード市内にあるチャール・ミーナールなどがアニメ・実写共に何度も出てきた。アニメ部分で説明されていたように、ハイダラーバードは元々、バーグマティーの名前を取ってバーギヤナガルと呼ばれていた。バーグマティーは宮廷に入った後、「ハイダル・マハル」と呼ばれたため、その後、街はハイダラーバードと呼ばれるようになったようだ。

 下らない映画だったが、そのくせ言語だけは難解であった。いったいどの年齢層向けに作った映画なのか?ハイダラーバードではダッキニー語と呼ばれるウルドゥー語に近い言語が話されているため、それに倣ってこの映画の言語もウルドゥー語色がかなり強かった。しかしながら、サンスクリット語起源の難解な言葉も出てきたし、テルグ語らしき言語もちょっとだけ話されていた。また、会話が演劇調かつ詩的表現に満ちていたため、さらに理解が困難となっていた。いくつもくさいセリフが出てきてずっこけそうになった。「もう扉が閉まってしまうわ。行かなきゃ。」「心の扉は、一度開いたら二度と閉じないものさ」などなど・・・。

 予算1億5千万ルピー、750万フレームの手書きのアニメを使って作られたこの2時間40分に渡る実写アニメ融合映画は、残念ながらインド映画の歴史に残したくない駄作となってしまった。インドのアニメはまだまだ黎明期であり、成熟には程遠い。