半月以上前の2002年10月11日に公開され始めた映画だが、「Yeh Kya Ho Raha Hai?(これはいったいどうしたことか?)」を観に行った。場所はチャーナキャー・シネマ、モーニングショーだったため、入場料は60ルピーで済んだ。
キャストは皆新人。全く面識のない若者ばかりだった。この中から将来のスターが生まれるかもしれないので、一応全員の名前を書いておく。男優がプラシャーント・チアナーニー、ヤシュ・パンディト、アーミル・アリー・マリク、ヴァイバウ・ジャラーニー、女優がサミター・バンガルギー、プナルナヴァ・メヘター、ディープティー、パーヤル・ローハトギー。二枚目半の仲良し四人組と、彼らを巡る四人の女の子の物語。「Dil Chahta Hai」(2001年)と「Style」(2001年)を足して2で割ったような雰囲気の青春群像映画だった。監督はハンサル・メヘターである。
大学最後の年。ビーチバレー部のキャプテン、ランジート(プラシャーント・チアナーニー)、ギターの名手ジョニー(ヤシュ・パンディト)、ジョーク好きで陽気なラーフル(アーミル・アリー・マリク)、性科学研究者の父を持つお調子者ブンティー(ヴァイバウ・ジャラーニー)の仲良し四人組は共通の悩みを抱えていた。それは、ガールフレンドがいないことだった。大晦日の年越しパーティーで「Couple Only」と入場拒否されたことにより、四人は卒業までに絶対恋人を作ることを決意する。 ランジートにはアンヌー(サミター・バンガルギー)という女友達がおり、アンヌーはランジートに思いを寄せていたが、ランジートは気が付いていなかった。ランジートを敵視するキザ男サリールは、幼馴染みの悪女イーシャー(パーヤル・ローハトギー)にランジートを誘惑させる。ランジートがその気になったところで、ひどい振り方をさせて心を傷つけさせる作戦だった。ランジートは彼らの思う壺にはまり、イーシャーにメロメロになる。それを見てアンヌーは悲しい気持ちになるのだった。 ジョニーは英語クラスの美人教師ステラ(プナルナヴァ・メーヘター)に恋をしていた。29歳のステラはフィアンセを戦争で失うという悲しい過去を持っていた。ジョニーにとって、相手が年上でも恋してしまったからには突き進むしかなかった。ステラはジョニーと友達として親しく接していくが、次第に心を通わせていく。 ラーフルには実はプリーティ(ディープティー)という彼女がいた。しかし彼女の家は伝統的かつ厳格で、6時以降は外出を禁じられていた。ラーフルはプリーティと映画館でデートを重ねながら、なんとか思いを伝えようと努力する。ある日運悪く彼女の家を訪ねたときに両親とばったり出くわしてしまうが、幸い両親に気に入られ、なんとか丸く収まる。しかし、プリーティから結婚の話を持ち出され、まだ結婚のことまで考えていなかったラーフルは急に顔をこわばらせてしまう。 ブンティーは売春婦のところへ行って「エクスペリエンス」を手に入れようとしたり、惚れ薬を飲んで女の子にもてようとして失敗したり、アメリカ人の女の子を何とか物にしようとして酒を飲ませるが、自分が酔いつぶれてダウンしたりと、終始訳の分からない行動ばかりしていた。 期末テストが終わり、楽しかった大学生活も終わるときがきた。四人は最後に開かれたお別れパーティーに出席する。そこでランジートはイーシャーが自分を騙すために今まで誘惑していたことを知り、アンヌーの純粋な愛情に気が付く。ランジートは自宅で泣いていたアンヌーの元へ駆け寄り、二人はこうして結ばれる。ジョニーもステラと、ラーフルもプリーティと結ばれ、お調子者のブンティーはパーティーで踊っていたダンサーたちとなぜか戯れてオシマイとなる。
はっきり言ってしまえば、四人の若者たちの童貞喪失物語、とでも言おうか、テーマは本当にくだらないのだが、いかにも今時のインド人若者の思考様式、行動様式が如実に反映されているようで楽しい映画だった。まさに脳みそを置いて見に行くお気楽映画。だからストーリーについてあれこれ突っ込むような野暮なことはしない。
全員新人ということで、この中から将来有望な人材を個人的にピックアップしてみる。まず注目は、ビーチバレー部キャプテンのランジートを演じ、筋肉ムキムキの体を存分に披露していたプラシャーント。顔はブルース・リー似のシャープなライン(「少林サッカー」の主人公にも似てるかも)。「Yeh Kya Ho Raha Hai」では、バレーやボディビルデンィングのシーンでしかその筋肉の使いどころがなかったが、カンフーアクションをさせれば絶対に「インドのブルース・リー」の異名をゲットできると思われる。
次に注目は、「Dil Chahta Hai」のアクシャイ・カンナーよろしく年上の女性に恋するジョニーを演じたヤシュ・パンディト。彼に似た顔のアイドルが日本にいたような気がするのだが、思い出せない。ジャニーズ系のキュートな顔をしており、そちら系が好きな女性に人気が出そうだ。だが、インドではいかにも男らしい男がもてる傾向にあるので、そんなに人気が出ないかもしれない。東アジア向けのハンサム顔と言っていいだろう。あと10年したら、インドでもこの手の顔の男がもてるようになるかも。
女優の中ではアンヌーを演じたサミター・バンガルギーがよかった。特にこれといって強烈な個性があるわけでもないが、この映画中でもっともバランスのいい顔立ち、体型、演技力だった。この映画中からスターになっていく女優がいるとしたら、この娘ぐらいしかいないと思う。ラーニー・ムカルジー的な女優が似合っていそう。
音楽はシャンカル=エヘサーン=ロイ。「Dil Chahta Hai」の音楽も担当した、三人組のグループだ。彼らの音楽はいつも斬新で、個人的にもっとも注目している。「Yeh Kya Ho Raha Hai」の音楽も、映画館を出た後まで脳内に残る印象的なメロディーが多かった。残念ながらこの映画のサントラはあまり市場に出回っておらず、僕は持っていない。
映画中、四人組がディスコに入ろうとして「Couple Only」と断られるシーンがあった。「Couple」とはつまり男女のカップルのことだ。これは僕にも思い当たる節がある。インドのディスコはなぜか男女のカップルでないと入場できないことがほとんどである。つまり、インドのディスコは、男女のカップルが純粋に2人で踊りに来る場所ということになっている。なぜこういう制度があるのか知らないが、一説によるとこういう制度を設けないと、ディスコに男ばかりが来てしまってむさ苦しくなってしまうかららしい。
インド映画界で、「年上の大人の女性に恋する若者」というモチーフが最近増えてきたのが気になる。ハリウッド映画で有名なところでは、ダスティン・ホフマン主演の1967年の映画「卒業」で、それ以後その種の筋は別に珍しくも何ともなくなっている。しかしインド映画では2001年の「Dil Chahta Hai」で初めて(多分)採り上げられた。「Dil Chahta Hai」自体が特異な雰囲気の映画だったし、三人いる主人公の内の一人の恋だったので、割と何の物議も醸さず自然に受け入れられたように思える。しかしこの前見たヒングリッシュ映画「Leela」(2002年)では、まさに「大人の女性(しかも人妻)に恋する少年」の構図が映画の中心的テーマに据えられていた。この映画はインテリ層を中心にけっこう高評価を得ているみたいだ。マニーシャー・コーイラーラー主演の「Ek Chhotisi Love Story」(2002年)もその流れだろう。「Yeh Kya Ho Raha Hai」では、ステラに恋してしまったジョニーを友達が「おいおい、それじゃあ『Dil Chahta Hai』のストーリー・ラインじゃないか」とからかうシーンがあるが、もしかしてだんだんとこういう恋愛の形もあるということが認められて行くのかもしれない。ちなみに、年上の女性と結婚したインド人というのは、とりあえず今のところ知らない。