Coolie No.1 (1995)

3.0
Coolie No.1
「Coolie No.1」

 1995年6月30日公開の「Coolie No.1」は、コメディー映画を得意とするデーヴィッド・ダワン監督の代表作のひとつだ。「Coolie」とは日本語では「苦力」、つまりポーターのことである。ポーターを主人公にしたコメディー映画だ。ダワン監督は「~No.1」という題名の映画を連発するが、その第一弾でもある。ただし、タミル語映画「Sinna Mapplai」(1993年)のリメイクである。

 主演はゴーヴィンダー。ダワン監督がゴーヴィンダーと組むのはこれで5本目である。ヒロインはカリシュマー・カプール。ダワン監督はゴーヴィンダーとカリシュマーの組み合わせを「Raja Babu」(1994年)でも試している。他に、ハリーシュ・クマール、カーンチャン、カーダル・カーン、シャクティ・カプール、サダーシヴ・アムラープルカル、クルブーシャン・カルバンダー、ティークー・タルサーニヤーなどが出演している。

 プロデューサーはヴァーシュ・バグナーニー。音楽監督はアーナンド・ミリンド、作詞はサミール。2024年7月11日に鑑賞しこのレビューを書いている。

 ムンバイーのダーダル・バスターミナスでポーターとして働くラージュー(ゴーヴィンダー)は、結婚仲介人のシャーディーラーム・ガルジョーレー(サダーシヴ・アムラープルカル)からマールティー(カリシュマー・カプール)という女性を結婚相手として紹介される。シャーディーラームは、マールティーの父親ホーシヤールチャンド(カーダル・カーン)から侮辱を受けており、彼に復讐するため、マールティーをとんでもない男性と結婚させようと企んだ。その白羽の矢が立てられたのがラージューであった。

 ラージューは、シンガポールの大富豪マヘーンドラ・プラタープ・スィン・メヘターを名乗り、友人のメカニック、ディーパク(ハリーシュ・クマール)を運転手に仕立て、彼が預かっていたメルセデスベンツを勝手に持ち出して、ホーシヤールチャンドに会いに行く。ホーシヤールチャンドはまんまと罠にはまり、ラージューを大富豪の御曹司だと勘違いする。同時に、マールティーはラージューに一目惚れする。ホーシヤールチャンドは、ラージューの邸宅を見たいと申し出る。そこでシャーディーラームは、映画の撮影のために貸し出されていたガジェーンドラ・プラタープ・スィン・メヘター(クルブーシャン・カルバンダー)の邸宅を借りてホーシヤールチャンドに見せる。縁談はトントン拍子に進み、ラージューとマールティーは結婚する。また、マールティーの妹シャーリニー(カーンチャン)とディーパクも恋に落ちる。

 結婚後、ラージューはマールティーを自宅に連れ帰ることになる。だが、ラージューは、マールティーと勝手に結婚したために父親から勘当されたことにし、彼女を本当に自宅に連れて行く。マールティーは何の疑問も抱かずラージューと過ごすようになる。一方、娘の様子を見にムンバイーまでやって来たホーシヤールチャンドは、バス停でポーターとして働くラージューを目撃する。ラージューは、マヘーンドラの双子の弟ということにし、何とか切り抜ける。ホーシヤールチャンドはすっかり信じ込み、シャーリニーをラージューと結婚させようと考え始める。

 ラージューは、マールティーといるときにはマヘーンドラ、シャーリニーといるときにはラージューを演じなくてはならなくなる。しばらくはうまくこなすが、ガジェーンドラの本当の息子マヘーシュの策略にはまり、ガジェーンドラ殺しの濡れ衣を着せられてしまう。だが、ガジェーンドラはまだ生きていた。ラージューは逃げ出してディーパクに助けを求めると同時に、病院に入院したガジェーンドラをマヘーシュの魔の手から救い出す。意識を取り戻したガジェーンドラはラージューを息子同然だと宣言する。

 一連の騒動の中でホーシヤールチャンド、マールティー、シャーリニーはラージューが貧しいポーターであることを知ってしまうが、マールティーはラージューを許す。シャーリニーもディーパクの子供を身籠もっており、彼と結婚することになる。こうしてホーシヤールチャンドの2人の娘マールティーとシャーリニーはそれぞれポーターおよびメカニックと結婚することになった。

 主人公はポーターであるが、ポーターの仕事に焦点が当てられた映画ではなかった。主人公のラージューが、シンガポールの大富豪マヘーンドラと、ポーターをするラージューの二役を演じ分けて、妻のマールティーやその父親ホーシヤールチャンドを騙すところが面白おかしい中盤が笑いのメインになるコメディー映画であった。ポーターは社会的に地位の低い職業の代表として取り上げられていただけであった。タクシー運転手よりもポーターの方が下とされていたのは、インド社会の職業観をよく表している。

 ゴーヴィンダーのコメディアンとしての才能が遺憾なく発揮された映画だ。特に一人二役を演じなくてはならなくなった中盤以降、彼の変幻自在の表現力が炸裂する。双子という設定であり、特に外見で変化を付けることはなかったが、その代わりにしゃべり方や仕草で演じ分けをする必要があり、それをゴーヴィンダーは完璧にこなしていた。マヘーンドラに扮しているときは大富豪の御曹司然とした雰囲気を醸し出し、ポーターのラージューを強調しないといけないときは不良っぽい言動をする。素のラージューを含めれば三役を演じていたことになる。

 また、この時代の他のヒンディー語映画と同様に、歌と踊りのシーンが多く、しかも半ば強引にダンスシーンに移行する。踊りの名手であるゴーヴィンダーの踊りを堪能できる作品でもあるが、ダンスの質については現在の視点から見ると物足りなさも感じる。

 ヒロインのカリシュマー・カプールは単なる添え物に過ぎなかった。はっきりいって添え物である以上に、彼女が演じたマールティーはかわいいだけでオツムの弱い女性役で、全く共感できないキャラクターだった。「Coolie No.1」の中でもっとも弱いキャラだといっても過言ではない。御曹司だと思ってラージューと結婚し、ラージューが単なるポーターだと発覚した後も彼をすんなり受け入れてしまう。もっとも、カリシュマーは名門カプール家に生まれながら、軽めのコメディー映画に好んで出演していた。今回の彼女も通常運転である。また、ゴーヴィンダーとの相性はとても良い。

 「Coolie No.1」は、「コメディー映画の帝王」と呼ばれるデーヴィッド・ダワン監督の代表的な作品のひとつであり、「~No.1」シリーズの第1作だ。ストーリーにご都合主義が見出されるものの、主演ゴーヴィンダーとカリシュマー・カプールの相性が良く、コメディー映画としては十分に成立している。後にダワン監督は息子ヴァルン・ダワンを主演にしてリメイクもしている。見比べてみるのもいいだろう。