X

 Filmsaagarでは、映画評をアルファベット順に並べてリスト化したページを用意している。A-Z Listingというプラグインを使って自動でリスト化しているので便利だ。現在の映画評の数も自動取得して記載している。こちらは個人的にはモチベーションアップにつながっている。現在は1,000本を目指して映画のレビューをしている最中である。

 ただ、Filmsaagarを立ち上げてから、「A」から「Z」まで全ての頭文字が揃っていないことが不満だった(「#」は数字や記号)。「X」だけ空欄になっていたのである。

 これはつまり、題名が「X」から始まるインド映画のレビューを今まで書いていないことを意味している。

 インド映画、特にヒンディー語映画の題名は、英語になっていることも多くなり、題名の頭文字に関しては、英語の特徴とそう変わらない。つまり、英語の辞書で、その文字から始まる見出し語の少ない文字は、どうしても映画の題名も少なくなるのである。

 「Q」なんかも本当は少ないはずなのだが、「Queen」(2014年)などがあってくれたおかげで、埋めることができていた。

 課題は「X」であった。

 調べてみると、「X」から題名が始まるインド映画は皆無ではない。例えば、「Xcuse Me」(2003年)という映画があった。シャルマン・ジョーシー出演の映画だが、未見であったし、わざわざ観る意欲の湧くような作品でもなさそうだった。他に、「X Ray: The Inner Image」(2019年)というサイコスリラー映画も見つかったが、監督にも俳優にも有名な人はおらず、ますます観る価値のない駄作のように見えた。ともあれ、「X」から題名が始まる映画はインドでも少ないことは確かである。

 「X」を埋めるために、駄作に見える上記の映画を観るかどうか悩んでいたときに、ひとついい映画を見つけた。「X: Past Is Present」(2015年)である。11人の監督による11のストーリーで構成されたオムニバス映画で、何人か名のある監督が参加している他、名優の誉れ高いラジャト・カプールが主演している。しかも、Netflixで配信されていた。これは期待が持てる。

 我が意を得たり、ということで、早速この映画を鑑賞し、レビューを書いた。おかげで、全ての文字が揃った。

 ちなみに、どの頭文字の映画が一番多いか調べてみたが、2021年6月19日現在では、「S」から始まる映画の数が一番多かった。「S」の映画をざっと見てみたが、特にそれが一番多い理由は思い付かなかった。ヒンディー語に当てはめて考えてみると、英語にしてしまうと「स(sa)」と「श(sha)」という2つの文字から始まる単語がこの「S」に含まれることになるため、有利であるという理由が思い付くが、それを言い出したら他にも同様のことが言える文字が存在するため、あまり有力な理由とはならないだろう。

 映画の題名と頭文字という話題のついでに思い当たるのは、カラン・ジョーハル監督がかつて「K」から題名が始まる映画にこだわっていたことだ。彼は監督デビュー作「Kuch Kuch Hota Hai」(1998年)から、「Kabhi Khushi Kabhie Gham」(2001年)、「Kal Ho Naa Ho」(2003年/プロデュース)、「Kaal」(2005年/プロデュース)、「Kabhi Alivda Naa Kehna」(2006年)まで、監督・プロデュース作を必ず「K」から始まる題名にしていた。彼がホストを務める大人気TV番組も「Koffee with Karan」と題されている。曰く、映画の題名を、彼の名前の頭文字でもある「K」から始めることで、ヒットが約束されるのだそうだ。当初、彼の作品には大ヒットが続いたため、その「K」のジンクスを信じ込んでいたようだが、「Kaal」がフロップに終わったことでやっと目が覚めたようで、その後は「K」にこだわらない題名付けをするようになった。

 ヒンディー語では、「K」から始まる単語が比較的多いのだが、カラン・ジョーハルがかつて信じていたそのジンクスの影響もあるのか、僕がレビューした映画でも「K」から題名が始まる映画の数は多めである。