ここ2週間ほど忙しくてあまり映画を観に行けなかったのだが、今日は時間があったのでサッティヤム・シネプレックスで新作映画を観ることができた。観た映画は2003年9月19日から公開され始めたばかりの「Boom」。インド映画離れした過激な表現と、奇抜なファッションで注目度の高かった作品だ。
監督はカーイザード・グスタード。主演はアミターブ・バッチャン、グルシャン・グローヴァー、ジャッキー・シュロフ、ジャーヴェード・ジャーフリー、ズィーナト・アマン、スィーマー・ビシュワース、パドマー・ラクシュミー、マドゥ・サプレー、カトリーナ・カイフ。前者三人(アミターブ、グルシャン、ジャッキー)はヒンディー語映画によく出てくるお馴染みの俳優だ。ジャーヴェードもマルチタレントで、TVに映画に音楽にいろんな才能を発揮している。ズィーナトとスィーマーはけっこう名の売れた女優で、後者三人(パドマー、マドゥ、カトリーナ)は本当のモデルである。
シェーラー(パドマー・ラクシュミー)、アヌ(マドゥ・サプレー)、リーナー(カトリーナ・カイフ)はインドのトップモデルでルームメイトだった。ある日ムンバイーのインド門前で行われたファッションショーのステージの上で三人は他のモデルたちと喧嘩をする。そのときモデルの髪からいくつものダイヤモンドが散らばった。このダイヤモンドは盗品で、ドバイに住む大物マフィア、バレー・ミヤーン(アミターブ・バッチャン)へ密輸される予定のものだった。ダイヤモンドは雑踏の中で紛失してしまった。 ダイヤモンドの密輸を取り仕切っていたのは、チョーテー・ミヤーン(ジャッキー・シュロフ)というマフィアだった。彼の別名はフィフティー・フィフティー。必ず50%のマージンを取ることから名付けられた名前だった。チョーテー・ミヤーンは部下のブーム・シャンカル(ジャーヴェード・ジャーフリー)に、三人のモデルの捕獲を命ずる。シェーラーたちは女召使いのバーラティー(スィーマー・ビシュワース)と共に捕らえられる。 一方、ドバイではバレー・ミヤーンが養子のミディアム・ミヤーン(グルシャン・グローヴァー)にダイヤモンド奪回を命じていた。ミディアム・ミヤーンはムンバイーのチョーテー・ミヤーンにダイヤモンド奪回を命じ、チョーテー・ミヤーンはブーム・シャンカルと捕まえた三人のモデルにダイヤモンド奪回を命じた。 ブームはシェーラー、アヌ、リーナーに銃を渡し、銀行強盗を命じる。なぜかこの辺りから召使いのバーラティーが急に策士となって作戦に参加し始める。バーラティーの機転でバーング(大麻)を飲んだ三人はハイテンションのまま銀行へ、そこでバレー・ミヤーンの部下チョートゥーラームからダイヤモンドを奪うことに成功した。 三人は召使いのバーラティーと共にブーム・シャンカルを出し抜いてドバイへ渡り、バレー・ミヤーン、ミディアム・ミヤーンと接触する。そしてダイヤモンドの取引を餌にして、バレー・ミヤーン、ミディアム・ミヤーン、チョーテー・ミヤーンの三人を一箇所に呼び出し、三人を仲違いさせて相討ちにさせた。こうしてブーム、シェーラー、アヌ、リーナー、バーラティーは、三人のマフィアから巨額の金を手に入れた。また、ブーム・シャンカルも最後には裏切られて海に放り出された。 この出来事の後、バーラティー、シェーラー、アヌ、リーナーは手に入れた金で悠々自適の生活を送ったという。
まず全体的な感想から書くと、はっきり言って期待外れの映画だった。ハリウッド映画っぽいヒンディー語映画を作ろうとしているのは分かるのだが、ストーリーがよく分かりにくかった。また、インド映画のレベルを超えたエロチックなシーン、大胆なファッション、そして残酷シーンがあって、これはインド人の観客には受け入れられないだろうと思った。
極度にエロチックなシーンが目立った。モデルたちの着ている服は胸元が大胆にはだけていて胸が丸出しだったし、チョーテー・ミヤーンの机の下で働いている女性(何をするためかはここでは書くまい)などは際どすぎる表現だった。暴力シーン、残酷シーンも多かった。特に小指をミシンで切断するシーンが出てくるのだが、この血生臭いシーンには会場から嫌悪の声が挙がった。僕も思わず顔をしかめてしまった。
アミターブ・バッチャン演じるバレー・ミヤーンのバカ殿的キャラクターや、ジャーヴェード・ジャーフリー演じるブームの口癖「アイヤイヤイヤイヤ~」などはおかしくてよかった。その他ニヒルなコメディーが随所に散りばめられていた。
マフィアの業界用語が頻出し、マフィア口調のしゃべり方だったので、映画をほぼ全て理解することはできなかったのが悔やまれる。中盤でストーリーを見失ってしまった。もし全部理解できたら、もう少し評価は上がったかもしれないが、帰り際にインド人も「金の無駄遣いだ」と口々に言っていたので、やはり大衆受けはしないと思われる。
あと、どうも三人のモデルが誰が誰だかよく分からなかった。僕が人の顔を覚えるのが苦手なだけかもしれないが、もう少し顔に個性のある三人をキャスティングしてくれたらもう少し理解度が上がったかもしれない。(この後、カトリーナ・カイフは大スターに成長する。)グルシャン・グローヴァーとジャーヴェード・ジャーフリーの顔もなんとなく似ていて混乱した。
実はこの映画のサントラは、タルヴィン・スィンやサンディープ・チャウターなどの有名なアーティストが参加しており、現在インドのヒットチャートのナンバー1である。しかし「Boom」は2時間の映画で、ミュージカルシーンはほとんどなく、それらの音楽が生かされることはなかった。
細かいところで面白い部分があった映画だったが、エロシーン、グロシーンがいくつかあることと、脚本の整合性のなさのせいで、僕はあまりオススメできない映画である。題名通りのブームにはならないだろう。