1921

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1921
「1921」

 2018年1月12日公開の「1921」は、ホラー映画「1920」シリーズの第4作である。「1920」(2008年)、「1920: Evil Returns」(2012年)、「1920: London」(2016年)と「1920」という年号を冠にして続いてきたのだが、ここに来て1年繰り上がって「1921」となった。ヴィクラム・バットが一貫して脚本を書いているが、監督や俳優は常に交代している。二流スターを使って低予算でサプライズヒットを狙うシリーズだと認識している。

 監督はヴィクラム・バット。彼は「1920」でも監督を務めているので、回帰となる。主演は「Hate Story 3」(2015年)のザリーン・カーンと「Horror Story」(2013年)のカラン・クンドラー。他に、ニディ・チトラカール、アラーディヤー・タイング、アンジェラ・クリスリンスキーなどが出演している。また、ヴィクラム・バット監督自身がカメオ出演している。

 1921年、ボンベイ。ピアノの才能があったアーユシュ(カラン・クンドラー)は、大富豪ワーディヤー(ヴィクラム・バット)に認められ、英国ヨークにある別荘ワーディヤー・マナーの管理人を任せられる。彼はヨーク音楽学校に通いながらワーディヤー・マナーを管理すればいいという恵まれた環境に身を置くことになる。

 アーユシュのピアノは英国でも近所の人々の話題になり、彼は度々ワーディヤー・マナーで演奏会を開いて小遣い稼ぎをするようになった。だが、あるときワーディヤーの姪メヘル(アンジェラ・クリスリンスキー)がそれを聞きつけてやって来て、彼を殺そうとする。アーユシュは反撃して彼女を殺してしまい、彼女の遺体を自動車で運ぼうとするが、途中で交通事故に遭う。目を覚ましたアーユシュはワーディヤー・マナーに逃げ帰り、以後閉じこもって暮らすようになる。

 それ以降、ワーディヤー・マナーでは異変を感じるようになる。霊の仕業だと考えたアーユシュは、魂を見ることができるというローズ(ザリーン・カーン)と会い、助けを求める。マンチェスターにて英国人の父とインド人の母の間に生まれたローズは、親友のナフィーサー(ニディ・チトラカール)と共に寮で暮らしながら大学に通っていた。ローズは元々、ワーディヤー・マナーにアーユシュのピアノを聴きに来ており、彼のことを知っていた。ローズはワーディヤー・マナーで検査をし、強力な霊の存在を感知する。

 アーユシュからメヘルのことを聞いたローズは、ワーディヤー・マナーに取り憑いているのはメヘルの霊だと考える。だが、ワーディヤー・マナーの倉庫から出て来たメヘルの写真は、アーユシュが実際に見たメヘルとは似ても似つかなかった。そこでローズは、ワーディヤー・マナーの心霊現象はアーユシュではなくローズに関係していると勘付く。

 実はローズのルームメイトとしてナフィーサーの他にヴァスダー(アラーディヤー・タイング)がいた。ヴァスダーは既婚のリチャードと不倫していたが、リチャードの妻を殺してまでして彼と結婚しようとした。ローズがリチャードに真実を伝えると、ヴァスダーは自殺するために飛び降りてしまう。ローズはヴァスダーをヨーク総合病院に連れて行くが、そこで息を引き取る。だが、そのとき同じ病室にいたのが、ディーナー・シャー(アンジェラ・クリスリンスキー)という女学生だった。アーユシュが「メヘル」と思っていた女性はディーナーだった。ディーナーはヨーク芸術学校に通っていたが、病気になり、ヨーク総合病院に入院していた。ヴァスダーの魂はディーナーの身体を乗っ取り、アーユシュを殺すために彼の前に現れたのだった。

 ナフィーサーがヴァスダーの魂に襲われ怪我をしたため、ローズは彼女をヨーク総合病院に連れて行く。そこでローズは、ベッド番号66番にアーユシュが昏睡状態で生命維持装置につながれているのを発見する。実はローズが会っていたアーユシュは魂だった。アーユシュは交通事故に遭った日から病院に入院していたのだった。ローズは、アーユシュの魂と身体をひとつにしようとするが、アーユシュの身体を乗っ取ったヴァスダーがそれを妨害する。だが、ローズは自ら首を切って死に、魂となって、ヴァスダーの魂を消滅させる。一方、ナフィーサーはアーユシュの髪の毛をアーユシュの魂に届けていた。アーユシュは目を覚ます。

 1927年。有名なピアニストになったアーユシュは、ローズへの愛にもだえ苦しみながらもピアノを演奏していた。

 Mナイト・シャーマーラン監督の「シックス・センス」(1999年)を思わせるホラー映画だ。物語の導入部では、カラン・クンドラー演じるアーユシュがいかにも主人公のような顔をしているが、実際にはザリーン・カーン演じるローズが主体の物語である。そしてローズが魂を見ることができるという特殊能力を持っていることがポイントとなる。物語の大半では、アーユシュは実は魂の状態なのだが、それはローズの視点で顕在化しているだけである。それが分かるのは終盤になってからで、「1921」の脚本の肝になっている。

 だが、何だか回りくどいストーリーだった。アーユシュが管理を任されたワーディヤー・マナーで心霊現象が起こるというのが起点になっている。それを解決するためにはその原因を突き止めなければならない。当初は、アーユシュが誤って殺してしまったメヘルの亡霊ではないかと思われるのだが、メヘルは実は別人であった。それではアーユシュの前に「メヘル」を名乗って現れた女性は誰かということを突き止めるのだが、それはディーナー・シャーという女学生で、アーユシュと接点はなかった。ディーナーは病気になって死んでしまうが、彼女が死んだときにすぐそばで命を落としたのがヴァスダーだった。ヴァスダーはローズとナフィーサーの友人だったが、不倫と殺人の末に飛び降り自殺していた。ヴァスダーはローズに恨みを持っており、彼女に自分が味わったのと同じ苦しみを味わわせるため、ローズの恋人となったアーユシュを殺そうとしていたのである。

 だが、終盤にはアーユシュは魂の状態になっていたことが分かる。交通事故に遭ったアーユシュは瀕死の状態であり、魂だけが抜け出て現世に留まっていた。その魂とローズは出会い、恋に落ちていたのである。そうなってくると、ヴァスダーの復讐とは一体何だろうかという話になる。既にアーユシュは死の一歩手前にあり、ローズは彼の魂としか出会えていなかった。もうこれ以上の復讐はあまり意味がないのではないか。ヴァスダーがローズやナフィーサーに余計なちょっかいを出していたがために、病院でアーユシュが昏睡状態に陥っているということがローズに知られてしまう。ローズはアーユシュの魂と身体をひとつにしようとするがヴァスダーの妨害に遭う。ヴァスダーはアーユシュの身体に乗り移って彼の身体を傷付けるが、ローズは自ら首を切って死に、魂になってヴァスダーの魂と格闘する。だんだん訳が分からなくなってくる。

 ローズとヴァスダーの魂は差し違える形で消滅する。残されたナフィーサーは生前のローズの依頼を遂行し、アーユシュの魂にアーユシュの髪の毛を届け、魂と身体をひとつにする。アーユシュは復活し、ピアニストとして大成するが、常にローズのことを想い続けていた。どうやらナフィーサーは彼のマネージャーになったようである。

 筋書きがこんがらがっていてすんなりと入り込めない上に、相変わらずホラーのレベルが低く、ただ単にショッキングな映像と効果音で観客を驚かそうとするだけである。ホラー映画としては全く駄目だ。

 ザリーン・カーンは、カトリーナ・カイフのそっくりさんとしてサルマーン・カーンに拾われ、「Veer」(2010年)にて鳴り物入りでデビューしたが、物真似芸人がオリジナルを決して超えられない宿命であるのと同様に、彼女も女優として成功できずにいる。「1921」も彼女のキャリアを上向かせる役割は果たせなかった。むしろ、こういうピンボケの役しか回ってこないような立ち位置にいるということだ。

 映画の大半は英国で撮影が行われた。1921年というとまだインドが英国の植民地だった時代だが、物語の中にインド人を3等市民として差別するような描写はなく、インド人も大英帝国の一員として認められているような設定だった。ホラーの描写も、インドというよりはキリスト教文化圏の価値観に従っていた。

 「1921」は、ヴィクラム・バットが脚本家を務めるホラー映画「1920」シリーズの第4作だ。元々このシリーズは低予算でヒットを狙うコンセプトのようで、キャストやセットなどにあまりお金が掛かっていない。そのため脚本勝負となるのだが、その脚本も何だか行き当たりばったりに感じられてならない。「1921」は決してヒットとはいえないが、低予算だったために製作費は回収できたようである。ホラー映画として期待して観ると裏切られるだろう。


1921 - Full Hindi Horror Movie 4K - Zareen Khan, Karan Kundra, Vikram Bhatt