
2026年6月5日公開の「Hai Jawani Toh Ishq Hona Hai」は、ヒンディー語映画界の「コメディーの帝王」の筆頭デーヴィッド・ダワン監督とスター男優ヴァルン・ダワン父子によるラブコメ映画である。題名は、ダワン監督の過去作「Biwi No.1」(1999年)の挿入歌「Ishq Sona Hai」から取られている。「若ければ恋に落ちるのは当然だ」といった意味である。
ダワン父子の人脈の広さを誇示するかのごとく、キャストは非常に豪華である。まず、マルチヒロイン型の映画であり、ムルナール・タークルとプージャー・ヘーグデーという中堅のスター女優2人が起用されている。さらに、今やトップ女優と呼んでもいいクリティ・サノンが特別出演している。
他に、ジミー・シェールギル、マニーシュ・ポール、チャンキー・パーンデーイ、モウニー・ロイ、アリー・アスガル、ラージェーシュ・クマール、ラーケーシュ・ベーディー、クブラー・サイト、ラージパール・ヤーダヴ、ジョニー・リーヴァル、マノージ・パーワー、アーイシャー・ラザー・ミシュラー、ヴァルン・スードなどが出演している。
プロデューサーはラメーシュ・タウラーニーなど、セリフは「Housefull 4」(2019年)や「Kisi Ka Bhai Kisi Ki Jaan」(2023年)などを監督したファルハド・サームジーが書いている。
ジャスウィンダル・アフージャー、通称ジャッスィー(ヴァルン・ダワン)は相棒のクンヌー(マニーシュ・ポール)と共にフォトグラファーをしていた。ゴアで行われた結婚式でジャッスィーはバーニー(ムルナール・タークル)という美女と出会う。二人は意気投合し、酔っ払った勢いで結婚する。
それから5年後、ジャッスィーとバーニーは離婚の危機にあった。ジャッスィーは子供が欲しくて毎日バーニーに身体を求めていたが、会社のCEOを務める彼女はまだ子供が欲しくなくて避妊なしのセックスを拒否していた。バーニーはとうとうジャッスィーの要求に耐えかねて離婚を突き付ける。家庭裁判所は彼らに半年間の猶予期間を与えた。ジャッスィーとバーニーは別居することになる。
ロンドンに渡ったジャッスィーは、プリート(プージャー・ヘーグデー)という美女と出会い、恋に落ちる。1ヶ月前、インドのリシケーシュを訪れていたプリートはラフティング中に溺れかけたが、たまたまその場に居合わせたジャッスィーに命を救われていた。ロンドンで再会した二人は付き合うようになる。だが、プリートの兄ジョーギー・ランダーワー(ジミー・シェールギル)はマフィアであった。ジャッスィーとプリートの仲を認めながらも、裏切りは許さないと念を押す。ジャッスィーはプリートには既婚であることを明かしていなかった。
バーニーがジャッスィーを訪ねてやって来る。バーニーは妊娠していた。別居する直前に二人は避妊なしでセックスをしていた。妊娠した途端にバーニーには母性が生じ、ジャッスィーとの結婚を維持したいと考えるようになる。プリートと結婚しようと考えていたジャッスィーは焦る。しかも、プリートまで妊娠したことが発覚する。ジャッスィーはカンヌーの力を借りながら、バーニーとプリートを引き合わせないように努めるが、二人は同じ病院で診察を受けており、自然に知り合ってしまう。インドから母親(アーイシャー・ラザー・ミシュラー)までやって来て、話が複雑になる。ジョーギーとプリートには、ラスマラーイー(モウニー・ロイ)というアイテムガールを母親と紹介してやり過ごす。ラスマラーイーはなぜかジョーギーと恋仲になってしまう。
数ヵ月間、ジャッスィーは血のにじむような努力をしてバーニーとプリートをだまし続けた。だが、二人とも同じタイミングで産気づいてしまい、同じ日に同じ病院で出産する。とうとう隠しきれなくなり、ジョーギーから殺されそうになったジャッスィーは屋上に逃げ、自殺をほのめかしてうやむやにしようとするが、バーニーとプリートはジャッスィーと別れることを決める。
その後、ムンバイーに戻ったジャッスィーは、小学生の頃の初恋の相手ディシャー(クリティ・サノン)と再会し、またも火遊びが始まる。
妻バーニーと離婚協議中の主人公ジャッスィーが、新天地で別の女性プリートと出会い恋に落ちる。妊娠に気付いたバーニーはジャッスィーとの離婚を取り止めるが、プリートも妊娠し、ジャッスィーは板挟みになる。しかもプリートの兄ジョーギーはマフィアであり、下手に動くと殺される恐れがあった。そんなハチャメチャな状況を楽しむラブコメ映画である。
主演ヴァルン・ダワンはプレイボーイのイメージで売っている男優である。天性のものであろうか、彼の浮気には嫌味なところがなく、何となく受け入れられるところがある。そのおかげで「Hai Jawani Toh Ishq Hona Hai」にはシリアスな影が全くない、お気楽なコメディー映画として成立していた。
さらに、セリフ作家のファルハド・サームジーによるセリフが秀逸だ。ストーリーを先に進めるセリフの合間に細かい小ネタを挟み込んでいて、それらがいちいち笑える。チャンキー・パーンデーイ、ラーケーシュ・ベーディー、ラージパール・ヤーダヴ、ジョニー・リーヴァルなど、人気コメディアン俳優たちも起用されていてそれぞれ個性的な笑いを提供している。コメディー映画としては合格点に達している。
ただ、ストーリーはメチャクチャだ。数ヵ月の間、ジャッスィーがロンドンでバーニーとプリートをだまし続けたことになっていたが、ミッション・インポッシブルだ。そこを指摘するのは野暮だが、さすがに非現実的すぎて付いて行けなくなる。最初から求めていないものの、メッセージ性も皆無である。
もちろん、最後には隠し通してきたこと全てがばれてしまう。それがどのようにばれるのかも映画の質を決める大事なポイントであったが、割とあっけない形でばれてしまっていて、残念だった。「コメディーの帝王」デーヴィッド・ダワン監督の作品といえども、うまくまとめられていた作品とは評価できなかった。
ムルナール・タークルとプージャー・ヘーグデーの共演は面白い取り合わせだった。ちょうど同じぐらいの位置にいる女優たちであり、彼女たちがヴァルン・ダワンを取り合うことになる。結局、二人ともヴァルンを放出する形で終わっているが、今度はこの二人をしのぐ存在感を放つクリティ・サノンがサプライズで顔を出す。さらに、勢いのあるモウニー・ロイまで「若すぎる母親」という強引な役柄で出演する。この辺りの女優の使い方はさすがである。
歌と踊りにも力が入っていたが、中でも「Chunnari Chunnari – Let’s Go」が話題だ。やはりデーヴィッド・ダワン監督の「Biwi No.1」の挿入歌であり、世代を越えて愛され続けている可愛らしい曲である。そのリミックスが「Chunnari Chunnari – Let’s Go」になる。
「Hai Jawani Toh Ishq Hona Hai」は、デーヴィッド・ダワン監督が息子のヴァルン・ダワンと組んで送り出した下世話なラブコメ映画である。ストーリーはしようもないが、笑いは保証されている。ヒロインも豪華であるし、歌や踊りも悪くない。何も残らないが、一時の息抜きとしては絶好の映画だ。
