Pune Highway

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Pune Highway
「Pune Highway」

 2024年11月23日にインド国際映画祭(IFFI)でプレミア上映され、2025年5月23日に劇場一般公開された「Pune Highway」は、プネー・ハイウェイ近くの湖で女性の水死体が発見されたことから始まるサスペンス映画である。

 監督はバグス・バールガヴァ・クリシュナとラーフル・ダクンハ。前者は「Barot House」(2019年)や「Nail Polish」(2021年)などの監督であり、後者は新人である。

 キャストは、アミト・サード、ジム・サルブ、マンジャリー・ファドニス、アヌヴァブ・パール、シシル・シャルマー、ケータキー・ナーラーヤン、ラジト・カプール、スディープ・モーダク、スワプニル・アジャガーオンカル、ディーパーリー・ガルグ、アビシェーク・クリシュナン、ヒマーンシュ・バールパーンデーイなどである。

 ムンバイーとプネーを結ぶプネー・ハイウェイの近くにある湖で女性の水死体が発見され、プラバーカル・ペーテー警部補(スディープ・モーダク)とゴードボーレー警部補(スワプニル・アジャガーオンカル)が捜査に当たる。水死体が身に付けていた腕輪から身元が判明する。それは、有力政治家マドゥスーダン・マーンセーカル(シシル・シャルマー)の一人娘モナ(ケータキー・ナーラーヤン)であった。しかも、法医学医のマヘーシュ(ラジト・カプール)によると、彼女は妊娠していた。

 まずはモナの許嫁アルヴィンド・サープレー(アビシェーク・クリシュナン)が容疑者として浮上する。アルヴィンドの弁護人になったのがヴィシュヌ・サイガル(ジム・サルブ)であった。

 ヴィシュヌには、プラモード・カンデールワール(アミト・サード)、その妹ナターシャ(マンジャリー・ファドニス)、ニコラス・トーマス(アヌヴァブ・パール)、バーブー・ボーンスレー(ヒマーンシュ・バールパーンデーイ)といった幼馴染みがいた。この中でバーブーは14年前の事故で寝たきりになっていた。

 プラモードはマーンセーカルの弟分であり、アルヴィンドの弁護人をプラモードが務めることに怒る。アルヴィンドは証拠不十分で釈放される。その一方で新たな容疑者に浮上したのがナターシャであった。ナターシャは元々ヴィシュヌと付き合っていたが、プロポーズを断られたことで二人は破局したという過去があった。ナターシャは、ヴィシュヌと仲の良かったモナに嫉妬し、彼女と公衆の面前でケンカをしたこともあった。ナターシャは逮捕され、ヴィシュヌは彼女の弁護をすることになる。

 また、ニコラスは幼少時からビデオ撮影が趣味のオタクであった。彼のPCからモナを惨殺する動画が発見され、ペーテー警部補は彼も逮捕する。だが、後にニコラスは彼女に演技をさせていただけであることが分かり、釈放される。ナターシャも証拠不十分で釈放される。

 ペーテー警部補は、モナに秘密の恋人がいたことを思い出し、その特定を急ぐ。そしてとうとう、それがプラモードであることが分かる。プラモードは、マーンセーカルからモナの世話を頼まれ、ムンバイーで彼女を受け入れた。プラモードにはスィーマー(ディーパーリー・ガルグ)という妻がいたが、やがて二人は恋仲になる。それをカモフラージュするため、モナはあえてヴィシュヌに接近する。モナが妊娠したことを知ったプラモードは彼女を殺し、湖に沈めた。ペーテー警部補はプラモードを逮捕しようとするが、プラモードはマーンセーカルを売って保身しようとする。

 「Pune Highway」という題名であるし、映画の冒頭では幼馴染みのグループが紹介されるため、てっきり青春ロードムービー系の映画かと思って見始めてしまった。実際には副題「Dead Body Jhooth Nahin Bolti(死体は嘘を付かない)」が示す通り、殺人事件を巡るサスペンス映画である。仲良しグループのメンバーが次々に容疑者として浮上する。結局は、仲が良さそうに見えた仲間内に裏切り、嫉妬、陰謀があったことが分かり、その中から真犯人も見つかるという、多少後味悪い結末である。

 殺人事件の捜査を担当するのがペーテー警部補とその相棒ゴードボーレー警部補であった。ペーテー警部補は真摯な警察官であったがどこか抜けている一方で、ゴードボーレー警部補は愚鈍に見えて実は頭が切れ、ペーテー警部補に的確なアドバイスをして事件を解決に導く。この凸凹コンビの存在は映画にいい味を醸し出していた。彼らは脇役扱いであるが、どちらかといえば彼らの方にもっとスポットライトを当てた方がいい映画になっただろう。彼らを主人公にした続編を作るのもありだ。

 ただ、「Pune Highway」はむしろ、ヴィシュヌ、プラモード、ナターシャなど、子供の頃から同じアパートで育った仲良しグループのメンバーたちを主人公としている。ヴィシュヌを演じたジム・サルブやプラモードを演じたアミト・サードの演技は優れたものであったが、メンバーの配置や設定が散漫であり、相互の人間関係も曖昧で、うまくストーリーに組み込めていなかった。バーブーやマーンセーカルの位置づけにも失敗している。結末もはっきりしない。果たしてプラモードは逮捕されたのだろうか、それとも助かったのだろうか。

 「Pune Highway」は、1人の女性が殺され、仲良しグループのメンバー複数が次々に容疑者として浮上する展開のサスペンス映画である。起用されているのは渋い俳優たちで、彼らの演技に全く瑕疵はないが、ストーリーがうまくまとめられておらず、監督の力量不足を感じた。無理して観る必要のない映画である。