2013年3月22日公開の「Aatma(魂)」は、6歳の女の子が、死んだ父親を恋しがるあまり、その父親の魂を呼び寄せてしまうというホラー映画である。「Raaz」(2002年)でヒンディー語映画界にホラー映画というジャンルを確立することに貢献した女優ビパーシャー・バスが主演だ。
監督は「Ek Khiladi Ek Haseena」(2005年)のスパルン・ヴァルマー。主演ビパーシャー・バスの他には、「Gangs of Wasseypur」シリーズ(Part 1・Part 2/2012年)で注目を浴びたナワーズッディーン・シッディーキー、ドエル・ダワン、シェールナーズ・パテール、ジャイディープ・アフラーワト、ティロッタマー・ショーム、ダルシャン・ジャリーワーラー、シヴクマール・スブラーマニヤム、モーハン・カプール、ギーティカー・ティヤーギーなどが出演している。
2024年10月17日に鑑賞し、このレビューを書いている。
マーヤー(ビパーシャー・バス)はアバイ(ナワーズッディーン・シッディーキー)とお見合い結婚したが、結婚からしばらくするとアバイに奇行が目立つようになり、失職し、友人も失う。二人の間にはニヤーという女児が生まれる。アバイはニヤーを溺愛するが、マーヤーには暴力を振るうようになる。
ニヤー(ドエル・ダワン)が5歳の頃、マーヤーはアバイと離婚する。ニヤーの養育権はマーヤーに渡ったが、アバイはそれを認めようとしなかった。その直後、アバイは交通事故で死ぬ。マーヤーは父親の死をニヤーに隠すことにした。ニヤーは常に父親に会いたがっていたが、マーヤーはそれを受け流し続けた。そのままニヤーは6歳の誕生日を迎える。
マーヤーは、ニヤーが一人で会話をしている姿を見る。学校でもニヤーは奇妙な行動を取るようになり、担任教師ヴァイシャーリー・スィナー(ティロッタマー・ショーム)はマーヤーにそれを伝える。ニヤーに悪戯をしていた男の子パーラスが変死し、ニヤーに罰を与えたスィナー先生も死ぬ。事件の捜査に当たったラザー警部補(ジャイディープ・アフラーワト)はマーヤーやニヤーの周辺で殺人事件が続くことに注目する。
マーヤーはニヤーを児童精神科医ディーパク・バンダレー(モーハン・カプール)のところへ連れて行くが、バンダレーもニヤーの診察をしているときに殺されてしまう。さらに、マーヤーを匿ってくれたアーカーンクシャー(ギーティカー・ティヤーギー)も殺される。とうとうマーヤーは殺人容疑で逮捕されてしまう。
マーヤーは警察に、アバイの亡霊がニヤーを連れて行こうとしていると供述するが信じてもらえない。マーヤーは精神病院の独房に入れられてしまう。マーヤーの母親イラー(シェールナーズ・パテール)は僧侶シャルマー(ダルシャン・ジャリーワーラー)に助けを求めるが、彼も取り憑かれてしまう。シャルマーにイラーは殺され、シャルマーもラザー警部補に射殺される。
ラザー警部補はニヤーをマーヤーに会わせる。ニヤーはマーヤーに、父親が連れに来ると伝える。マーヤーは自殺して亡霊になり、ニヤーを殺そうとするアバイと対峙する。マーヤーはシャルマーから受け取っていたお守りを使ってアバイの亡霊を消滅させる。
12年後。ニヤーは元気に成長し、18歳の誕生日を祝われていた。マーヤーの父親プラタープ(シヴクマール・スブラーマニヤム)がニヤーを育て、周囲にはマーヤーの同僚パンカジやラザー警部補の姿もあった。
6歳の娘が、死んだはずの父親アバイと会話を始めるという序盤では、ほぼアバイの姿を見せていないこともあって、上手に恐怖を醸成することができていた。アバイがどうなったのかも序盤では明かしておらず、それが好奇心を煽る効果もあった。
だが、アバイがはっきりと姿を現し、ニヤーの関係者を次々に殺し始めるフェーズに入ると、通常のB級ホラー映画に成り下がってしまった。アバイが引き起こす異常現象を表現するためにVFXも使われていたが、ごく原始的なものであった。そして、強大な力を持った亡霊アバイに対抗するためにマーヤーが採った手段は、なんと自殺して自分も亡霊になるという驚きのものだった。最後は、ニヤーの成長を見守るマーヤーの霊を見せて何とか美しくまとめていたが、満足感は少ない。
ニヤーを演じた子役ドエル・ダワンが年齢なりの演技しかできていなかったのには目をつむるとして、肝心の主演ビパーシャー・バスの演技や表情が固く、完全に映画に止めを刺していた。出番は少なかったが、ナワーズッディーン・シッディーキーがいくつかの場面で絶妙な演技を見せていたことが救いだったくらいだ。
「Aatma」は、ビパーシャー・バスとナワーズッディーン・シッディーキーという興味深い取り合わせのホラー映画だが、あらゆる要素が噛み合っておらず、失敗作に終わってしまっている。わざわざ観る必要はない映画だ。