Company

4.5
Company
「Company」

 家に一度帰って荷物を置いた後、PVRアヌパム4へ向かった。2002年4月12日公開のヒンディー語映画「Company」を見るためだ。4時15分からの回を狙っていて、サーケートに着いたのは3時45分頃だったので、もしかしてもうチケットはないかと思ったが、何とか手に入れることができた。何とかというのは、僕が確保した席はかなり隅の方だったため、売り切れ間近であることが分かったのだ。インドの映画館は全指定席制で、いい席から売っていくので、隅の方の席になるということは売り切れ寸前に買ったということである。平日にも関わらず僕が見た回は満席状態になっていた。ラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督の「Company」は批評家の評価も高く、興行的にも成功している。

 「Company」はアジャイ・デーヴガン、ヴィヴェーク・オーベローイ、マニーシャー・コーイラーラー、モーハンラール、アンタラー・マーリー、スィーマー・ビシュワースなどが出演しており、イーシャー・コッピカルとウルミラー・マートーンドカルがゲスト出演をしている。

 ムンバイーのスラム街をたむろするチンピラだったチャンドゥー(ヴィヴェーク・オーベローイ)は、マフィアのボス、マリク(アジャイ・デーヴガン)に見出されてパートナーとなった。敵を殺せば殺すほどマリクたちの組織は強大となっていき、やがてムンバイー一のマフィアとなる。チャンドゥーは唯一の家族である母(スィーマー・ビシュワース)のことをとても大事にしており、それまでスラム街に住んでいたのだが、マフィアの仲間となってからは高級マンションに引っ越したりして母に楽をさせてあげたりした。チャンドゥーは昔からの知り合いだったカンヌー(アンタラー・マーリー)と結婚し、絶頂期を迎える。マリクにもサロージャー(マニーシャー・コーイラーラー)という恋人がおり、心の支えとなっていた。

 しかしマリクたちにも天敵がいた。ムンバイー警察のシュリーニヴァーサン(モーハンラール)である。シュリーニヴァーサンはマリクの動向に常に目を光らせており、遂にチャンドゥー逮捕に踏み切るが一足遅く、マリクとチャンドゥーは家族や仲間を連れて香港に高飛びした後だった。

 香港から電話を使ってムンバイーの地下組織を牛耳るマリクとチャンドゥーのグループはいつしか「カンパニー」と呼ばれ恐れられるようになった。マリクとチャンドゥーは些細な行き違いから仲違いをしてしまう。チャンドゥーはカンヌーを連れてナイロビに身を隠し、そこからマリクと全面対決の姿勢をとる。ムンバイーはマリク、チャンドゥーの殺し合いの場となり、多くの死人が出る。ところが遂にマリクはチャンドゥーの居所を突き止め、刺客をナイロビに送る。チャンドゥーは銃弾を受けつつも逃げ切り、ナイロビの警察に保護されて入院することになった。マリクもさすがに手を出せない状況となった。

 ナイロビの病院に入院していたチャンドゥーを訪れたのは意外にもシュリーニヴァーサンだった。シュリーニヴァーサンはチャンドゥーにひとつの提案を持ちかける。それは、インドに戻って警察に協力し、地下組織に関する情報を提供することだった。

 一方、ムンバイーに帰っていたカンヌーは、チャンドゥー負傷の訪を聞き、単身香港に渡ってマリクに会う。そしてチャンドゥーはもう何もしないから許してやってくれと頼む。しかしマリクは口を開こうとしない。遂に彼の口から出た言葉は「できないことを口にすることはできない」だった。ヒステリー状態に陥ったカンヌーは銃を取り出し、近寄ってきたサロージャーに発砲すると同時に撃たれ、死んでしまう。カンヌー死亡の報を聞いたチャンドゥーは、シュリーニヴァーサンの提案を受け入れることを決意する。サロージャーは幸い命に別状はなかった。

 チャンドゥーのムンバイー帰還に驚いたのは他でもないムンバイー知事だった。彼はカンパニーを使って前任者を殺させ、現在の職を手に入れたのだった。もしチャンドゥーが全てをしゃべってしまったら自分の立場は絶体絶命の危機に陥る。そこで、表向きは警察に協力することを決めたお礼を言いにチャンドゥーのもとを訪れ、口止めを計る。ところがチャンドゥーはその態度に腹を立て、知事を殺してしまう。こうしてチャンドゥーは現行犯逮捕となってしまう。

 シュリーニヴァーサンの助けでチャンドゥーは獄中からマリクと電話で話すことができ、仲直りのきっかけを掴めそうになった。ところが香港にてマリクはチャンドゥーの仲間に殺されてしまう。マリク死亡の報を聞いたチャンドゥーは、牢獄の中でうなだれる・・・。

 「Company」は大衆娯楽映画と社会派映画の間に位置する意欲的な作品だった。最近こういう質の高い娯楽映画がインドでもよく作られるようになってきて嬉しい。しかし逆にいえば、質の高い映画になればなるほど、ヒンディー語を聞き取って理解しなければいけなくなるため、語学力が必要になる。ただの娯楽映画だったら、はっきりいってヒンディー語が分からなくても大体内容は理解できるのだが・・・。

 主役だったアジャイ・デーヴガンがはまり役で、ニヒルでクールなマフィアのドンをかっこよく演じていた。もう一人の主演、ヴィヴェーク・オーベローイはこの作品がデビュー作らしいのだが、堂々たる演技をしていた。マニーシャー・コーイラーラーは、マフィアのボスの愛人というすれた女の役柄がこれまたはまり役だった。確か「Bombay」(1995年/邦題:ボンベイ)とかに出ていた頃のマニーシャーは清純派女優という感じだったのだが、「Abhay」(2001年)あたりから悪女が似合うようになってきてしまった。

 全体として非常によくできた映画だった。下手なハリウッド映画よりもよっぽど面白い。インド映画の変革の波を十分感じさせてくれる傑作だった。海外ロケ地も香港、ナイロビというインド映画が今まであまりロケ地に選ばなかった場所が使われており、目新しかった。3時間映画なのにも関わらず展開が早過ぎたようにも思えたが。