昨日に引き続いて今日も映画を観に出掛けた。今日の映画はサルマーン・カーン主演の「Tumko Na Bhool Paayenge」。2002年2月24日から公開され始めたばかりの新作である。コンノートプレイスのプラザ・シネマで見ようかと一瞬思ったが、昨夜PVRの魅力を思い知ったばかりだったので、今日もPVRへ足を運んでしまった。しかし昨日行ったPVRナーラーイナーは遠いので、今日は比較的近いPVRアヌパムへ行った。
チケット売り場の人に「ヒンディー語映画だけどいいの?ヒンディー語分かるの?」と念を押されつつも150ルピーのチケットを購入。マクドナルドで映画が始まるまで時間を潰し、映画館の中へ入った。思っていたよりも客の入りはよくなくて、空席が目立った。
「Tumko Na Bhool Na Paayenge(君を忘れることはできない)」は長らく銀幕から遠ざかっていたサルマーン・カーンが久しぶりに主演を張る映画である。共演は期待の新人ディーヤー・ミルザーとゴージャス美女スシュミター・セーン。ディーヤー・ミルザーは日本人好みの「かわいい」系の顔で、スシュミター・セーンはインド人的な「美人」系な顔の女優である。監督はパンカジ・パラーシャル。
ヴィール(サルマーン・カーン)はラージャスターン州の田舎に住む純朴な青年で、両親と共に悠々自適に暮らしていた。ヴィールにはムスカーン(ディーヤー・ミルザー)という恋人がおり、父親の計らいで婚約が決まった。幸せいっぱいのヴィールだったが、次第に幻覚に悩まされるようになる。そして自分には幼少時代の記憶が全くないことに気付く。ヴィールとムスカーンの結婚式が行われたのだが、そのときに数人のマフィアが会場に乱入して来て、突然ヴィールを突き飛ばす。マフィアはヴィールのことを「アリー」と呼び、「弟」「ムンバイー」という言葉も口にする。ヴィールに兄弟はいないはずだし、ムンバイーにも行ったことがなかった。マフィアはヴィールを殺そうとしてきたのだが、突然ヴィールは不可思議な力を発揮してマフィアたちを一人で片付けてしまう。そのとき父親は初めてヴィールに本当のことを話す。実は両親には別の一人息子がいたのだが、戦争へ徴兵されて死んでしまった。その遺灰を川に流しているときに偶然川の中から現れたのがヴィールだった。両親はヴィールを息子の生まれ変わりであると信じ、今まで3年間育ててきたのだった。事実を知ったヴィールは、本当の自分を探すためにムンバイーへ行く決意をする。両親と新妻のムスカーンを村に残して・・・。 ムンバイーに着いたヴィールは何となくモスクに入り、アッラーに礼拝を始める。記憶を失う前のヴィール、つまりアリーはムスリムだったのだ。そのモスクでアリーを知っている人物に出会う。アリーは彼に自分の弟はどこにいるか聞いたが、その瞬間何者かに狙撃されて彼は息絶えてしまう。しかし死ぬ前に彼は自分が実の弟であることを告げる。そしてなぜかムンバイーでは警察に追われる身分となってしまっていたアリーはその後も失われた記憶を頼りにムンバイーをさまよう。そしてある建物の部屋に入った瞬間、全ての記憶が蘇る。そこはまさに自分の部屋だったところだった。 アリーは射撃の名手で、親友のインダルと共にマフィアたちを暗殺する秘密警察だった。あるとき、州知事からとんでもない依頼を受けた。なんと自分を暗殺してくれ、との依頼だった。プランはこうだった。州知事は予め防弾チョッキを来て壇上に上がり、そこで狙撃を受けるが一命を取り留める。その悲劇によって有権者の同情を集め再選を果たそうとしていたのだった。アリーは断ろうとしたが、インダルは100万ルピーという報酬金に目がくらんで引き受ける。作戦当日、狙撃はアリーが引き受けたのだが、狙撃する前に州知事は別の何者かに頭を狙撃され即死する。こうして警察から追われる身になったアリーは列車で逃げたのだった。 全ての記憶が戻ったアリーは弟の遺体が収容されていた病院を訪れて、もう一度別れを告げる。そこへインダルと、アリーの恋人だったメヘク(スシュミター・セーン)が現れる。アリーが行方不明になった後、メヘクはインダルと結婚していた。警察もやって来たので、彼らと積もる話をする間もなくアリーは逃げ出すことになった。そして列車に乗り込んだ瞬間、忘却していた最後の記憶が蘇る。州知事偽狙撃失敗の後に乗り込んだ列車の中で、自分に致命傷を負わせて川に落としたのは、パートナーだったインダルだったのだ。追いかけてきた警部にもそのことを説明し、2時間だけ時間を猶予時間をもらって自分の無実を証明しようとする。インダルの自宅へ行ったアリーは、メヘクに全てを話し、州知事の側近と密談を交わしているビデオも入手する。全ては州知事の側近とインダルが仕組んだ罠だった。側近が前州知事を殺して自分が州知事となるために計画を立て、インダルが前州知事の頭を撃って、アリーを犯人に仕立て上げたのだった。アリーが全てを知ってしまったことを知ったインダルは暴漢たちと共にアリーの待ち構えるアパートを襲撃するが、アリーは一人で超人的な力を発揮して全員返り討ちにする。しかしメヘクはドサクサに巻き込まれてインダルに殺されてしまう。アリーとインダルは一対一の殴り合いをして、とうとうアリーはインダルを殺す。そこへ駆けつけた州知事はアリーを殺そうとするが、アリーが証拠のテープをみんなの前で放映したため、逆に州知事が逮捕されてしまう。 自分の過去に決着を着けたアリーはムスカーンの待つラージャスターン州の田舎に戻り、再び田舎の青年としての生活を始めたのだった。
記憶を失った主人公、罠にはめられ追っ手から逃げながら自分の無実を証明する、かつての親友の裏切りが発覚・・・と、あらすじ的にはありふれた要素が盛り込まれていただけだったが、はっきり言って非常に楽しい映画だった。後半はちょっとストーリーに強引なところがあったが、分かりやすい、インド人の大好きなアクションシーンも多くて、全体としてヒットしそうな予感がした。音楽の評価もよい。ただ、ヒンドゥー教徒として育てられていた主人公が実はムスリムだった、という冒険的プロットは、大多数のインド人にどう受け止められるかが心配だった。
それにしてもディーヤー・ミルザーがいい。後半はほとんど出番がなかったのが残念だが、この映画の前半のディーヤー・ミルザーだけでも見る価値がある。人間離れした美しさを誇っているアイシュワリヤー・ラーイにはなかった「キュートなかわいさ」があって、日本人にも絶対に受けると思われる。逆にスシュミター・セーンはこの映画ではあまり重要な役ではなかったため、あまり目立たなかった。スシュミター・セーンはあまりに美しすぎてゴージャス過ぎて親しみが沸かない・・・。あと、相変わらずサルマーン・カーンは自慢の肉体を見せびらかしていたが、この映画のヒットで完全復活するだろう・・・か?グッド・ラック。
そういえば映画の中で、去年の12月に結婚式に参加しに行ったラージガルの名前が出て来た。ヴィールが住んでいたラージャスターン州の町の名前がラージガルだった。案外有名な町だったのだろうか。