2015年5月8日公開の「Kuch Kuch Locha Hai」は、元AV女優サニー・リオーネ主演のちょっとエッチなコメディー映画である。題名は「何かがおかしい」という意味である。大ヒット映画「Kuch Kuch Hota Hai」(1998年)のパロディーであることは一目瞭然だ。
監督はデーヴァーング・ドーラキヤー。サニー・リオーネの他に、ラーム・カプール、エヴェリン・シャルマー、ナヴディープ・チャブラー、スチター・トリヴェーディー、メフル・ブチ、クルシュ・デーブーなどが出演している。
プラヴィーン・パテール、通称PP(ラーム・カプール)はマレーシアの首都クアラルンプール在住のグジャラート系インド人で、店舗を経営していた。妻のコーキラー(スチター・トリヴェーディー)、息子のジガル(ナヴディープ・チャブラー)と共に住んでいた。ジガルは最近、ナイナー(エヴェリン・シャルマー)という女性と付き合っていたが、コーキラーは彼女のことを気に入っていなかった。 PPはボリウッド女優シャナーヤー(サニー・リオーネ)の大ファンだった。あるとき、シャナーヤーがマレーシアに来て、コンテストの勝者とデートをすることになり、PPは張り切る。そしてPPはシャナーヤーとのデートを勝ち取る。シャナーヤーは役作りのためにグジャラート系の一家としばらく過ごしたいと思っており、PPの家に滞在したいと言い出す。 シャナーヤーには独身だと嘘を付いていたPPは、理由をこじつけてコーキラーを実家に帰し、ジガルとナイナーを自分の両親に仕立てあげる。こうして、シャナーヤーがPPの家に住み始める。PPの親友ヴェールジー(メフル・ブチ)もPPの父親として家に転がりこんできたり、PPがシャナーヤーと共演する俳優に嫉妬したりと、様々な騒動を経る。そしてシャナーヤーにプロポーズをされたPPはジレンマに陥ってしまう。しかし、途中からシャナーヤーは突然帰ってきたコーキラーと会っており、ジガルやナイナーを巻き込んで演技をしていた。PPは反省し、せっかくなのでジガルとナイナーの結婚式を行う。
ヒンディー語映画界では過去に、「Masti」(2004年)や「No Entry」(2005年)などの浮気を題材にしたコメディー映画がいくつか作られてきた。「Kuch Kuch Locha Hai」もそのカテゴリーに入る映画だが、少し変わっていたのは、憧れのボリウッド女優がひょんなことから家に住み始めるというシチュエーションである。
それだけならまだ笑いの要素は少ないが、「Kuch Kuch Locha Hai」をコメディー映画たらしめていたのは、主人公PPがシャナーヤーに嘘を付いてしまったことである。PPは独身を装った上に、同居家族は父親だけだと言ってしまっていた。いざシャナーヤーが家に住み始めることになったとき、彼は急いで現状を嘘に合わせなければならなくなる。まずは妻のコーキラーをインドに帰し、次に息子のジガルを父親に変装させた。しかもジガルの恋人ナイナーも母親を演じることになる。
当然、何度も嘘がばれそうになるのだが、シャナーヤーはかなり鈍感で気付かない。しかし、シャナーヤーがコーキラーに会ってしまったことで、状況が急変する。最後は元の鞘に収まる、安定のハッピーエンディングである。
ボリウッド女優のシャナーヤー役を演じたのがサニー・リオーネで、彼女の起用はこの映画の最大の見所である。それ以外のキャストにスターパワーはない。シャナーヤー役はどうとでも演出可能だったと思うのだが、サニーが演じるということで、どうしてもお色気要素が多めになっていた。
パテール一家はグジャラート人という設定であった。この設定は、監督自身がグジャラート人であるからだと想われる。グジャラートといえばガルバー&ダンディヤーである。劇中にはガルバーを踊るシーンがいくつかあった。グジャラートが出て来てガルバーが出て来ない映画は皆無といっていい。
「Kuch Kuch Locha Hai」は、傑作「Kuch Kuch Hota Hai」と題名が似ているが、題名をパロディーしただけで、内容は全く異なる。サニー・リオーネ主演の影響でお色気要素のあるコメディー映画になっている。面白いシーンはあるが、サニー以外のスターパワーに欠け、全体的な完成度は低い。無理して観る必要はない映画である。