Fraud Saiyaan

2.5
Fraud Saiyaan
「Fraud Saiyaan」

 アルシャド・ワールスィーは、「Munna Bhai M.B.B.S.」(2003年)のサーキット役で一躍有名になった俳優だが、サーキットのインパクトが強すぎて、その後も似たような小悪党役ばかりを演じることになった。2019年1月18日公開の「Fraud Saiyaan(結婚詐欺師)」はアルシャド主演作だが、演じるのは、いかにもアルシャドといった感じの結婚詐欺師である。

 監督はソウラブ・シュリーヴァースタヴァ。ほとんど無名の監督である。主演は前述の通りアルシャド・ワールスィー。多数の小粒な女優が出演しており、一応サラ・ローレンがメインヒロイン扱いであるが、他にはフローラ・サイニー、ディーパリー・パンサーレー、ニヴェーディター・ティワーリー、プリーティ・スード、パールル・バンサール、バワーナー・パーニー、アナングシャー・ビシュワースなどが出演しており、さらにアマンダ・ロザリオが「Ladies Paan」、エリ・アヴラームが「Chamma Chamma」でアイテムガール出演している。また、サウラブ・シュクラー、ヴァルン・バドーラーなどが出演している。

 ボーラー・プラサード・ティワーリー(アルシャド・ワールスィー)は多数の女性と結婚しては、金をかすめ取る結婚詐欺師をしていた。ボーラーと結婚したスニーター(ディーパリー・パンサーレー)は、彼を叔父のムラーリー(サウラブ・シュクラー)と会わせようとするが、ムラーリーはボーラーの行動に異変を感じ、彼を監視するようになる。ムラーリーはボーラーの弟子になって行動を共にする。

 ムラーリーは、ボーラーが行く先々に妻を持っており、それぞれ言い訳をしながら金を巻き上げ、関係を続けているのを目の当たりにする。だが、ボーラーはパーヤル(サラ・ローレン)という女性と出会い、彼女に恋をしてしまう。パーヤルは夫のバドリー(ヴァルン・バドーラー)を事故で亡くしたばかりで、彼女の心の支えになろうと努力した。最初はボーラーを遠ざけようとしていたパーヤルだったが、最後には彼を受け入れる。こうして二人は結婚することになる。

 しかし、実はムラーリーはバドリーから雇われた探偵だった。パーヤルは6人の男性と結婚して金を巻き上げる結婚詐欺師だったのである。ムラーリーはパーヤルの尾行をしていたのだが、別の結婚詐欺師ボーラーも見つけ、この二人を結びつけて一緒に逮捕しようと画策したのだった。ボーラーは一旦、金目の物を持って式場から逃げ出すが、心が変わって帰って来る。だが、パーヤルの正体を知って、彼女に金品を渡して逃がす。ボーラーは警察に逮捕されてしまう。

 7日後・・・。ボーラーは保釈される。迎えに来たのがムラーリーだった。また、彼を雇ったのはパーヤルだった。パーヤルはボーラーに、協力して結婚詐欺師をしようと持ちかけるが、ボーラーはムラーリーと共に逃げ出す。

 主人公のボーラーが多数の女性たちと同時に結婚してやりくりする様子がおかしいコメディー映画だった。ボーラーは少年時代、好きな女性に「愛してる」と言っても無視され続けたのに、「結婚しよう」から始めたらうまく行き、しかもお金まで出してもらえるようになった経験をもとに、結婚詐欺師として生活をしていた。ボーラーはとにかく経済的に余裕のある美しい女性ばかりを狙い、まずは結婚をして、あれこれ言い訳をして彼女から金を引き出していた。妻にした女性たちが鉢合わせすることもあったのだが、ボーラーは口から出任せを言って切り抜けてしまう。アルシャド・ワールスィー演じるボーラーのずる賢い立ち回りを、内心そんなバカなと思いつつも、ついつい楽しんでしまう。

 例えば、マーラー(ニヴェーディター・ティワーリー)という女性がいた。ボーラーはマーラーと結婚したが、マーラーが妊娠したと知って、1年半前に逃げ出してしまう。だが、彼女が宝くじで2千万ルピーを当てたという新聞記事を見た途端に彼女のところへ帰る。どんな言い訳をするかと思ったら、いきなりボーラーはマーラーを平手打ちする。「なんで俺を探してくれなかったんだ」と言って、1年半前に交通事故に遭い、ずっと病院で意識不明だったとデタラメを言う。マーラーはそれを信じてしまうのである。

 また、ボーラーは常に指輪を持ち歩いていた。そして、彼に疑いを持った妻や、口説き中の女性に対し、ここぞというときに指輪を取り出し、有効活用する。だが、何だかんだ言って指輪を回収するので、ひとつの指輪で多くの女性たちの心を勝ち取ることに成功していた。

 オチも面白かった。ボーラーが真剣に恋をした女性パーヤルは、実は結婚詐欺師だったのである。だが、パーヤルの夫バドリーは彼女に疑いを持ち、探偵ムラーリーを雇って彼女の身辺調査をさせていた。そこで引っ掛かったのがボーラーだったというわけである。

 ただ、終盤、ボーラーとパーヤルの結婚式に至るまでの過程がなぜか飛ばされてしまっており、唐突に感じた。警察に逮捕されたボーラーをパーヤルが助けるのはいいのだが、二人で一緒に結婚詐欺師をすることになるという終わり方の方がうまくまとまっていたのではないかとも感じた。

 主演のアルシャド・ワールスィーと助演のサウラブ・シュクラーは素晴らしかった。彼らの演技で持っていた映画だった。女優陣はゾロゾロとたくさん出演しすぎていて顔と名前が一致しなかったが、確かにパーヤルを演じたサラ・ローレンがもっとも伸びそうだった。サラは、クウェートに移住したインド人の父親とパーキスターン人の母親から生まれており、現在はパーキスターン在住である。印パを股に掛けて女優をする貴重な存在だ。

 「Fraud Saiyaan」は、小悪党を演じさせたら右に出る者のいない個性派俳優アルシャド・ワールスィーが結婚詐欺師を演じるコメディー映画である。あまり有名どころではないが数え切れないほどの女優が出て来て場を華やかにしてくれる。だが、粗が目立ち、特に終盤が雑然としていた。未完成のまま公開してしまったような映画である。