Tavvai

2.0
Tavvai
「Tavvai」

 2026年6月29日からJioHotstarで配信開始された「Tavvai」は、富の女神ラクシュミーの姉で疫病神のアラクシュミーにまつわる民話を題材にしたホラー映画である。ほとんど無名のキャストとスタッフで作られており、突然降って湧いたように登場した。OTTリリース作品であるため、その質は推して知るべしである。

 監督はニルバイ・ジャリーワーラーとジャエーシュ・ヴルシラージ。キャストは、マノージ・ジョーシー、ブーシャン・プラダーン、アルピト・ラーンカー、トリプティ・サーフー、スパンダナー・パリー、キールティカー・グプターなど。この中で知名度があるのはマノージ・ジョーシーぐらいである。

 スィッドプルでは何世代にも渡ってあらゆる不幸が続いていたが、地主のアワデーシュ(マノージ・ジョーシー)が村人たちによく施しをしており、何とか生活が成り立っていた。アワデーシュには2人の息子がいた。長男のプラメーンドラ(ブーシャン・プラダーン)は信心深く責任感のある人物だった。次男のヤテーンドラ(アルピト・ラーンカー)は父親の寛大さに不満を持っており、財産の分け前をもらってビジネスを始めたいと考えていた。

 スィッドプルの郊外には一本の菩提樹の木があり、村人たちはそれを呪いの木と考え恐れていた。アワデーシュは悪夢にうなされるようになり、パンディト(僧侶)に相談して、木の周りにハヴェーリーを建て、木の礼拝を始める。また、村に病院を建て、村人たちに無料の医療を提供する。だが、あるときアワデーシュは心臓発作を起こして死んでしまう。

 今やスィッドプルを治める重責はプラメーンドラの肩にのしかかった。プラメーンドラは父の遺志を継ぎ、菩提樹の礼拝を続ける。彼には、木の精霊のような少女が見えるようになった。村人たちにもその信仰が伝わり、菩提樹はすっかり信仰の対象となる。だが、ヤテーンドラは悪魔に取り憑かれたようになり、旧邸宅に隠された財宝を見つけ出して、ますます強欲になる。ヤテーンドラは病院を有料にして、医療費の払えない村人たちを追い出す。

 プラメーンドラは、僧侶からこの村で過去に何が起こったのかを聞く。プラメーンドラとヤテーンドラの曾祖父ヴィール・ナーラーヤン・スィンは圧政を敷き、貧しい村人たちから借金のかたに土地を取り上げたり、村の女性たちを手込めにしたりして、恐れられていた。彼には、乳海撹拌のときに発生した猛毒ハラーハラが地上に落ち生まれた悪魔カリが宿るようになった。カリのいるところには、疫病神のアラクシュミー女神も呼び寄せられる。スィッドプルに住む農民プーランラールと妻プールティの間に生まれたダクシュターがアラクシュミー女神の化身であり、プーランラールの家では不幸が続いた。だが、アラクシュミー女神が生まれた後は、その妹で富の女神であるラクシュミーも生まれることになっていた。プールティはラクシュミー女神の化身であるアクシュターを生んだ。プーランラールは田んぼの地中から財宝の入った宝箱を見つけ、裕福になった。だが、ヴィール・ナーラーヤン・スィンに目を付けられ、プーランラールとプールティは家ごと燃やされてしまう。また、アクシュターは菩提樹の下に埋められ、ダクシュターは菩提樹の枝に首を吊られて殺された。

 日に日に乱暴になっていったヤテーンドラは、とうとう菩提樹を切り倒す。その瞬間、臨月を迎えていた妻は呪いの子を生む。病院には謎の感染症が蔓延する。プラメーンドラは、村に掛けられた呪いを解くため、菩提樹の地中からアクシュターの遺骨を掘り出し、それをアゴーリー(死体崇拝者)たちのアーシュラム(修験場)に持っていって燃やす。そこへカリの化身と化したヤテーンドラが現れ、アゴーリーたちを蹴散らす。プラメーンドラがアクシュターの遺灰をシヴァリンガに振りかけると、シヴァ神が現れ、ヤテーンドラを成敗する。

 ヒンディー語映画界では、「Stree」(2018年/邦題:ストゥリー 女に呪われた町)辺りから、民話系のホラー映画が流行しており、この「Tavvai」もその潮流の一端と考えることができるだろう。ヴィシュヌ神の妃ラクシュミー女神は現金を神格化した富の女神として知られるが、彼女に姉がいることを知っている人は少ないだろう。ラクシュミーの姉はアラクシュミーと呼ばれ、一転して貧乏神・疫病神とされている。貧困と富裕は表裏一体であること、また、貧困の後に富裕があるという教訓を具体化していると思われる。「Tavvai」は、アラクシュミーに呪われた村が舞台のホラー映画だ。

 着想は非常に良かった。だが、それをストーリーに落とし込む過程で問題があった。導入部からは「隠れた名作」のような雰囲気も漂っていたのだが、次第に粗が目立ってきて、何が何だか分からない時間帯が長く続くようになる。物語のキーとなるのは村の郊外に立つ一本の菩提樹の木で、この木に何かが取り憑いているのは分かるのだが、それがラクシュミー側の霊なのかアラクシュミー側の霊なのか、いまいちよく分からない。悪魔であるカリと、疫病神であるアラクシュミーがストーリーの中でうまく混ざっていないようにも感じた。題名になっている「Tavvai」なるものが何なのかすら分からなかった。駄作であることを完全に決定付けてしまったのはラストのプラメーンドラとヤテーンドラが戦うシーンだ。重厚なBGMが流れているが、バトル映像は悲しくなるほどチープで、大いに盛り下がった。バイラヴァ(憤怒)相のシヴァ神まで登場するが、冗談かと思った。

 総じて「Tavvai」はホラー映画ながら、浮気心から加えられたようなアクションシーンに迫力がなかった。どうしてもアクションに気合が入った他の映画と比較されてしまうので、うまく撮らないと映画全体を台無しにしてしまう。かえってアクションシーンに下手に頼らず、限られた予算内でできることを工夫して撮っていた方がいい作品になったことだろう。序盤の雰囲気のまま終盤まで突っ走ることができたら、「Tumbbad」(2018年)のようなカルト作品化も夢ではなかっただろう。

 「Tavvai」は、近年ヒンディー語映画界で流行している民話系ホラー映画に分類されるが、未熟な監督と無名の俳優たちによるチグハグな出来の作品になっており、誰にも勧められない。序盤だけは良かったのだが、それだけだった。