ヒンディー語映画界では時々、映画の題名を巡って訴訟沙汰が起こることがある。その理由はさまざまだ。「Ram Gopal Varma Ke Sholay」が「Ram Gopal Varma Ki Aag」(2007年)になったのは続編製作権やリメイクを巡るゴタゴタであったし、「Ram-Leela」が「Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela」(2013年/邦題:銃弾の饗宴 ラームとリーラ)になったり、「Padmavati」が「Padmaavat」(2018年/邦題:パドマーワト 女神の誕生)になったりしたのは、特定の宗教コミュニティーの宗教的感情を傷付けるのを避けるためだった。今回は、映画の題名に著作権はあるのか、という切り口でこの問題について考察する。
映画の題名は、映画の顔となるべき大切な要素であり、その作品の価値が最大限に高まるような単語やフレーズが据えられるのが一般的である。ただ、単語は無限に見えて有限であり、複数の作品が同じ題名を取り合うという状況が時々生じる。つまり、とあるプロデューサーが、とある題名の映画を作っていたら、別のプロデューサーが全く同じ題名の映画を公開しようとしたといった場合だ。
最近では、「Lootere(略奪者たち)」という題名を巡って訴訟が起こった。スニールというプロデューサーが「Lootere」という題名をプロデューサー組合に登録していたところ、ハンサル・メヘターなど別のプロデューサーが同名のウェブドラマをOTT向けに製作中ということが分かり、その配信の停止を求めて裁判所に訴え出たのである。

ヒンディー語映画界には業種ごとに組合があるのだが、映画プロデューサーの組合も存在する。そして、特定の題名を保護したい場合は、この組合にその題名を登録することで、それを占有する権利を得る。ただし、ボンベイ高等裁判所の判決によると、これはあくまで業界内の習慣に過ぎず、法的効力はない。
また、実は厄介なことにプロデューサー組合はひとつではない。元々インドの映画産業は言語ごとに分かれているし、各映画産業の中にも複数の組合が乱立しているということもありえる。よって、特定のプロデューサー組合で題名を登録しても、その同一の組合に加入している組合員にしかその拘束力は及ばない。
そんなこともあって、もし法的に題名の保護を求めるならば、題名の商標登録しか方法がないとのことである。もちろん、題名のみならず内容までそっくりであったらそれは剽窃になるが、題名自体には著作権は認められないというのがインドの司法の見解のようだ。
ちなみに、ウェブドラマの方の「Lootere」は2024年3月22日からDisney+ Hotstarにて配信開始された。スニールという人物がプロデュースしているという「Lootere」の方の公開情報は見つからない。
過去には、「Kabhi Alvida Naa Kehna」(2006年)、「Nishabd」(2007年)、「Desi Boyz」(2011年)なども題名を巡る似たような訴訟に巻き込まれたことがあった。おそらく今後も繰り返されることであろう。シングルウィンドウ方式の題名保護システムの必要性も取り沙汰されている。