
「Virgin?」はベンガル語の短編映画である。上映時間は30分ほどだ。2023年12月25日にYouTubeで配信されているが、2021年から22年にかけてさまざまな映画祭で上映されており、実際のプレミア上映はそれよりも先であろう。ただ、ネット上に公式な記録があまり見つからないので、YouTubeにアップロードされた年月日を記載している。
監督は新人のアルガディープ・バナルジー。彼がプロデューサーや脚本なども務めている。
キャストは、デーボプリヤー・バンドーパディヤーイ、ルーパン・サム、ディーパーンウィター・ラーイ、アヌシャー・ラーイ、ローシャン・サルカール、サイカト・ダース、アビループ・ダース、アハーナー・モンダル、アルチャナー・クマーリー・ダース、モウミター・パトラ・バナルジー。
英語字幕付きだったので、字幕を頼りに内容を理解した。
5-6歳の頃に家庭教師の男性(ローハン・サルカール)から強姦されたトラウマを持つマイティリー(デーボプリヤー・バンドーパディヤーイ)には、長年付き合ってきたバースカル(アビループ・ダース)というボーイフレンドがおり、結婚することになった。マイティリーは結婚前に過去のトラウマを全て将来の夫に打ち明けるべきだと考え、幼少時の出来事を話すが、それを聞いたアグニはマイティリーとの婚約を破棄する。次に、母親(ディーパーンウィター・ラーイ)の紹介でお見合いをしたシャヤン(サイカト・ダース)という男性も、マイティリーの過去を知り、彼女に「処女ではないのか?」と聞く。その質問をされたマイティリーは自らシャヤンとの結婚を拒絶する。 親友のデービー(アヌシャー・ラーイ)はマイティリーに、過去のトラウマなどわざわざ男性に明かすなと助言する。また、処女膜は運動によっても破れるもので、適当にごまかしておけばいいと言う。実際、デービー自身も大学時代に何人かの男性と肉体関係になったが、現在の夫にはそのことは明かしておらず、夫は今でも自分が彼女にとって最初の男性だったと信じていると言う。それでもマイティリーは人生の伴侶に隠し事をするのをためらっていた。そこでデービーは彼女のスマートフォンにデートアプリをインストールする。 デートアプリで出会ったアグニ(ルーパム・サム)は売れない舞台芸術家であった。だが、彼はマイティリーの過去を聞いても何とも思わず、彼女に寄り添ってくれた。マイティリーは彼との結婚を決める。
インド社会では結婚の際に女性に処女性が強く求められる傾向にあり、それゆえに他国に比べて婚前交渉が今でもタブー視される傾向にある。主人公のマイティリーは、処女でないことで結婚相手が見つからないというトラブルを抱えていた。
「Virgin?」はもちろんそのようなインド社会の後進性に疑問を投げ掛ける作品だ。マイティリーの親友デービーは、自身の経験から、わざわざ口にしないか、もしくは適当にごまかしておけばいいというようなことを助言する。それもひとつの対処法であろう。
ただ、マイティリーの場合は事情が少し異なる。彼女は幼少時に家庭教師に強姦され処女を失っていたのであり、決して自ら進んで好きな男性と肉体関係になったわけではなかった。そして、そのトラウマを共有してくれる人を人生の伴侶にしたいと強く願っていた。それが裏目に出て、彼女は長年付き合ってきたボーイフレンドから婚約を破棄され、お見合いした男性とも破談になったのである。
また、男性たちは彼女が幼い頃に強姦された話をすると、そのときの服装など、必ず彼女に何か落ち度はなかったかを確かめようとしてきた。それも彼女を失望させることになった。まだ5-6歳の少女に何か分かるだろうか。
マイティリーが次に男性と出会った手段は、いかにも現代的だが、デービーから勧められたデートアプリだった。デートアプリでマッチングしたアグニは、マイティリーの過去を聞いても全く問題にせず、むしろ、誰にでも起こりえる不幸だと言って、彼女に共感してくれた。アグニの存在は、このような社会においても、どこかに理解力のある男性がいるという希望を湧かせてくれる。
短編映画なので、監督が訴えたいメッセージは直球で発せられており、そのまま分かりやすい終わり方になっている。マイティリー役を演じたデーボプリヤー・バンドーパディヤーイは初見であったが、困難に直面しながらも芯のある女性を体現しており、いい女優だと感じた。
「Virgin?」は、インド人男性に根強い処女信仰に一石を投じながら、児童性虐待の被害者にまで処女性を求める冷酷さを告発する短編映画である。単純かつ理想主義的だが無駄がない構成で、主演デーボプリヤー・バンドーパディヤーイの演技も見ものである。
