Mahansar: The Royal Sip

 「Mahansar: The Royal Sip」は、ラージャスターン州に伝わるヘリテージリカーを主題にした19分の短編ドキュメンタリー映画である。2022年9月19日にYoutubeにアップロードされた。ナレーションは英語であり、インタビューの中でヒンディー語も使われるが、英語字幕が付いているので、理解は容易だ。監督はドキュメンタリー映画監督のアーディティヤ・サングワーン。過去に「Loharu Fort: The Great Story Never Told」(2017年)という短編ドキュメンタリー映画を撮っている。

 この映画に興味を引かれたのは、題名になっているマハンサル(メヘンサル)に2度行ったことがあるからである。マハンサルはラージャスターン州北部、チュールー近くに位置する小さな村だ。ハヴェーリー(邸宅)壁画で有名なシェーカーワーティー地方に属する。

 かつてラージャスターン州の王家では、代々伝わる秘伝酒が造られていた。レシピは秘伝とされ、王家の者のみしか楽しめなかった。その伝統は、独立インドにおいて王制が廃止されたことで、ほとんどの王家で失われてしまったが、マハンサルの王家には残っていた。ラージャスターン州政府がヘリテージリカーの振興に舵を切ったことで再び秘伝酒は日の目を見るようになり、一般の愛好家向けに販売されるようになった。現在では「Maharani Mahansar」のブランド名で数種類の酒が販売されている。

 もちろん、マハンサルを訪れたのは、このヘリテージリカーを味わうためであった。新聞でラージャスターン州に伝わる秘伝酒について知り、それを求めてシェーカーワーティー地方をバイクで彷徨った。記事にはどこで手に入るか具体的に書かれていなかったため、地元の人に聞き込みをして、ようやくマハンサルの名前を聞き出し、当地に辿り着いたのだった。最初に行ったのは2005年12月、次に行ったのは2006年10月であった。その旅行の様子は「これでインディア」で書いている。

 僕が泊まったのはナーラーヤン・ニワース・キャッスル(Narayan Niwas Castle)というホテルだったが、「Mahansar: The Royal Sip」に登場したのは、それと同じ敷地内にあるマハンサル・フォート・ヘリテージ・ホテル(Mahansar Fort Heritage Hotel)の方だった。どちらもマハンサル・フォートの中にあるのだが、兄弟間で遺産の分割があったようで、当時から2つに分かれていた。

 ナーラーヤン・ニワース・キャッスルでは、ウイキョウ、カルダモン、オレンジのフレーバーの酒を飲ませてもらった。けっこう探し回ってやっとありつけた酒であったし、当時はネット上にも情報は皆無だったので、日本人でマハンサルの酒を入手できたのは僕が初めてくらいではなかろうか。その後、「これでインディア」を読んで興味を持った日本人旅行者がマハンサルを訪れるようになったと伝え聞いている。

 ドキュメンタリー映画を観ていて驚いたのは、原材料として、きび糖、ドライフルーツ、アニシード、ナツメの根、ヤギ肉、イエスズメ肉に加えて、「時々アヘンや毒が使われる」とあったことだ。一杯でやたら酔っ払った記憶があるが、もしかしたらアヘンのような薬物が入っていたのかもしれない。

 マハンサルで本場の秘伝酒を飲んだことはあるのだが、マハンサルの蒸留所で造られ市販されているという「Maharani Mahansar」にはお目に掛かったことがない。このドキュメンタリー映画によると、様々なフレーバーのものが売られているようで、しかもかなりリーズナブルな値段のようだ。

 「Mahansar: The Royal Sip」は短いドキュメンタリー映画であり、ラージャスターン州の王家に伝わる秘伝酒について深く掘り下げたものではなかった。一時的に昔の再現映像も差し挟まれるのだが、全く洗練されていなかった。内容はどちらかというと、「Maharani Mahansar」の広告のようだった。それでも、ラージャスターン州のヘリテージリカーの入門編として一定の価値があるドキュメンタリー映画ではなかろうか。


Mahansar-The Royal Sip. A Documentary film on 250 years old heritage liquor of Rajasthan #rajasthan