Kurup

4.0
Kurup

 2021年11月4日公開の「Kurup」は、1984年から指名手配され続けている犯罪者スクマーラン・クループを取り上げた映画だ。マラヤーラム語映画だが、テルグ語、タミル語、カンナダ語、そしてヒンディー語版も公開された。鑑賞したのはヒンディー語版だが、劇中に出て来る文字まで全てヒンディー語版になっており、単なる吹替版ではなかった。また、この映画はインドで初めてNFTによって資金調達され製作された。

 監督はシュリーナート・ラージェーンドラン。主演はマンムーティの息子ドゥルカル・サルマーン。彼はヒンディー語映画「Karwaan」(2018年)や「The Zoya Factor」(2019年)にも出演しているが、基本的にはマラヤーラム語映画俳優である。

 その他のキャストは、インドラジート・スクマーラン、ソービター・ドゥリパーラー、サニー・ウェイン、シャイン・トム・チャッコー、シヴァジート・パドマナーバンなどである。

 時は2005年。ケーララ州警察のクリシュナダース警視(インドラジート・スクマーラン)は、チャーリー殺人事件の容疑者で、1984年から指名手配を受けながらも逮捕されていないゴーピークリシュナ、別名スダーカル・クループ(ドゥルカル・サルマーン)を追い続けたことで有名だった。クリシュナダース警視は定年退職を迎えたが、彼の部下は荷物の中からクループに関する手帳を見つけ、目を通す。

 ケーララ州アーラップラ出身のゴーピークリシュナはインド空軍に入隊したが、途中で逃げ出し、自殺を偽装して、スダーカル・クループを名乗るようになる。そして恋人のシャールダー(ソービター・ドゥリパーラー)と結婚してペルシアに住むようになる。そこで巨万の富を稼いだものの、突然シャールダーを残してインドに戻る。そこで従兄弟のバースカル(シャイン・トム・チャッコー)らを使って死体を用意させ、自分の死を偽造する。クループは自分に生命保険を掛けており、死を偽造することによって80万ルピーを手にしようとしていた。そのために殺されたのがチャーリーだった。

 この事件の捜査担当となったのがクリシュナダースだった。彼は遺体がクループではなくチャーリーであることを突き止め、この殺人に関わったバースカルらを逮捕する。だが、クループは姿をくらましていた。クリシュナダースはクループを追ってボーパールやムンバイーを訪れるが見つからない。だが、彼はクループが船で国外脱出しようとしているのを察知し、船の捜索をしたが、やはり取り逃してしまった。

 しかし、後に分かったところでは、クループは警察車両の運転手としてクリシュナダースと共におり、警察官と共に船に乗り込んでいた。そして「アレクサンダー」という新しいアイデンティティーを手に入れていた。こうしてクループはまんまと逃げおおせたと思ったが、実はクリシュナダースはワーリド王子と手を握っていた。クループはペルシアにいたときにワーリド王子の右腕になったが、そこで数百万ドルの大金を持ち逃げしてインドに来ていた。ワーリド王子もクループを追っており、クリシュナダースと利害が一致したのだった。

 クリシュナダースは、ワーリド王子がクループを始末したと考えていたが、彼の引退後、「アレクサンダー」の目撃情報が世界中から寄せられるようになった。まだクループは生きている可能性が高かった。

 クリシュナダース警視が書き残した手記が回想シーンを導き、時間を遡って、クループの生い立ちや彼の犯した罪が語られていく。クループは幼少時から悪知恵の働く子供で、インド空軍に入隊後も軍用の酒類や備品を横流ししたり、武器を国際的なブローカーに売り渡したりして荒稼ぎしていた。中東に逃げたクループは王子と接近して巨万の富を稼ぐが、それ以上の一獲千金を目指してインドに舞い戻る。

 ただ、中盤までの回想シーンは非常に断片的であり、話が飛ぶので分かりにくい。編集の詰めが甘いのかと思ったが、後にそれは意図的な演出であったことが分かる。終盤になると、パズルの欠けていたピースが次々にはめ込まれるかのように、もう一度始めからクループの行状がクループの視点から語り直され、分かりにくかった部分がクリアにされていく。そして、それらを観て初めて、この「Kurup」の物語が完成するのである。見事な構成であった。

 クループがどうなったかについても数回のどんでん返しがあった。まずは観客に、クループは今でも行方不明であるかのように提示される。クリシュナダース警視も、クループを必死に追いながらも逮捕できなかったとされていた。だが、終盤でクリシュナダース警視がワーリド王子と協力してクループに引導を渡したことが明らかにされる。これで一件落着と思いきや、警察署にファックスが入り、クループに似た人物の目撃情報が寄せられる。2018年になっても彼の目撃情報は入って来ており、世界のどこかで彼がまだ生きていることが示唆される終わり方であった。

 「Kurup」で描写されたクループの行動はあまりに荒唐無稽で、相当なフィクションが含まれているのだろうと思ってしまうが、実は保険金詐欺をしようとするところまではかなり事実に即した内容になっているようだ。インド空軍に入隊したが、療養のために休暇を取ったままばっくれ、自殺を偽装して別人になりすます。そしてアブダビ(映画の中では「ペルシア」と呼ばれる)に渡って巨万の富を築き、ケーララ州に戻ってくる。だが、金遣いが荒かったために金欠になり、従兄弟などを巻き込んで保険金詐欺をしようと思い付いたのだった。ただし、中東の王子の金をちょろまかしたところはどうもフィクションのようである。

 詐欺師が主人公の映画はインドに多く、その大半はコメディー映画に味付けされているが、この「Kurup」はハードボイルドなサスペンス映画に仕上げられていた。それには、クループを演じたドゥルカル・サルマーンがシリアスな演技をしていたことが大きいが、他の俳優たちも一切の妥協を許さない真剣な演技をしており、マラヤーラム語映画の生真面目さを感じてしまった。敢えて苦言を呈するならば、クループに人間味を出せていなかった。

 「Kurup」は、実在する犯罪者スダーカル・クループを題材にしたハードボイルドなサスペンス映画である。編集が複雑だが、最後まで観ると全てがつながる巧みな構成になっている。マラヤーラム語映画としては大ヒットした作品で、観る価値がある映画だ。