Haathi Mere Saathi

3.0
Haathi Mere Saathi

 2021年3月26日に劇場一般公開されたタミル語映画「Kaadan(森林)」は、多言語展開されており、そのテルグ語版「Aranya(森林)」も同時公開された。ただ、そのヒンディー語版「Haathi Mere Saathi(象、僕の友人)」は公開が遅れ、同年9月18日からEros NowでOTTリリースとなった。タミル語・テルグ語版とヒンディー語版では一部配役が異なっているが、ストーリーは同じはずである。ちなみに「Haathi Mere Saathi」という同名のヒンディー語映画が1971年に作られているが、この2021年のものとは全く別である。ヒンディー語版の「Haathi Mere Saathi」を鑑賞した。

 監督はプラブ・ソロモン。タミル語映画をほぼ専門とする映画監督で、過去には「Mynaa」(2010年)などで受賞歴がある。ヒンディー語映画の監督がこれが初だ。「Haathi Mere Saathi」は象が登場する映画だが、過去に彼は「Kumki」(2012年)という象使いの映画を撮っており、そのときの経験を活かして「Haathi Mere Saathi」も作られたと思われる。

 主演はラーナー・ダッグバーティ。他に、プルキト・サムラート、ゾーヤー・フサイン、シュリヤー・ピルガーオンカル、ラヴィ・カーレー、アナント・マハーデーヴァン、シーバー・チャッダー、ブヴァン・アローラーなどが出演している。

 舞台はチャッティースガル州の森林地帯。バンデーヴ(ラーナー・ダッグバーティ)は代々森林に住み、象や動物たちを守る番人だった。象の群れを率いるのはヒーラーという名の象だった。彼は10万本の木を植えたことで、アブドゥル・カラーム大統領から表彰されたこともあった。また、森林地帯にはアーラヴ(ブヴァン・アローラー)とアルヴィー(ゾーヤー・フサイン)の兄妹が率いる武装集団が活動しており、政府に立ち向かっていた。

 あるとき、バンデーヴが守る村に開発業者DRLがやって来る。彼らは森林の土地を取得したと主張し、そこに高級居住エリアを造ろうとしていた。この開発計画は、ジャガンナート・セーヴァク大臣(アナント・マハーデーヴァン)の肝いりだった。バンデーヴと象たちは開発業者を追い出すが、象使いのシャンカル(プルキト・サムラート)が呼ばれ、象を追い払おうとする。シャンカルはチョートゥーという象を引き連れており、森林の中で出会ったアルヴィーに片思いするようになっていた。また、ジャーナリストのアルンダティー(シュリヤー・ピルガーオンカル)はこの問題に興味を持ち、バンデーヴに密着取材をし出す。

 バンデーヴは逮捕され、精神病院に入れられる。バンデーヴが森林から3ヶ月間離れていた隙にDRLは開発サイトの周囲に全長7kmの壁を建ててしまった。この壁の中には象たちの水飲み場も含まれていた。また、シャンカルは工事が終わったことで立ち去ろうとするが、事故によりチョートゥーが命を落としてしまう。シャンカルは怒りの矛先をアルジュン・パーンデー警視(ラヴィ・カーレー)に向ける。そしてアーラヴとアルヴィーに合流する。

 森林に戻ったバンデーヴは壁を見て絶望する。また、象の群れの中の一匹ガリマーが警察に殺され、ヒーラーはガリマーを殺したのはバンデーヴだと勘違いする。以降、バンデーヴは象から追われる身となってしまう。また、アーラヴ、アルヴィー、シャンカルは地下トンネルを掘って住居エリアの内部に侵入しようとするが失敗し、アルヴィーが殺され、さらにはアーラヴも死んでしまう。

 住居エリアの起工式が行われようとしており、首相も出席予定だった。バンデーヴは村人と共に道を封鎖する。そこへ象も駆けつけ、バンデーヴの味方をする。この様子はアルンダティーを通してインド中にライブ配信され、首相の目にも入った。首相はバンデーヴらの願いを聞き入れ、壁の破壊を許可する。また、パーンデー警視はバンデーヴを暗殺しようとするが、シャンカルによって止められる。こうして象は再び水飲み場で水を飲むことができるようになった。

 森林の開発を巡る問題を描いたエコ意識に訴えかける映画だったが、開発業者vs森林住民という単純な対立構造ではなく、複数のプレーヤーがいて、意外に複雑な人間模様の映画だった。

 まずは主人公バンデーヴ。彼は森林に住む村人の一人ではなく、洞窟に住み、象を見守るターザンのような人物であった。村人たちからは神様のように慕われていた。大統領から表彰されたこともあり、名を知られた人物で、中央政府に陳情をしにターザンみたいな格好でデリーまで行ってしまうような機動力もあった。また、誤解によって象から追われる身になる一幕もあった。

 それに対して象使いのシャンカルが登場する。シャンカルはチョートゥーという名の象と共に悠々自適の人生を送っており、今回はDRLに雇われて、象の攻撃から開発サイトを守る仕事をしていた。しかし、工事中の事故でチョートゥーを失ったことで反DRLに寝返る。

 この二人だけでも十分ストーリーが成り立つのだが、それに加えてナクサライトのようなゲリラ集団が登場する。率いるのはアーラヴとアルヴィーの兄妹である。彼らもDRLの開発計画を妨害しようとする。

 悪役はとりあえずDRLの開発を後押しするセーヴァク大臣なのだが、途中からパーンデー警視が現れ、バンデーヴやゲリラ集団の前に立ちはだかる。彼はエリート警察官僚であり、なまじっか頭が切れたため、バンデーヴやゲリラ側から見たら手強い相手だった。パーンデー警視の死により映画は幕を閉じていたため、真の悪役は彼だったといえる。だが、なぜ彼がそんなに執拗にバンデーヴたちを追い詰めていたのかはよく分からなかった。

 インドでは動物愛護運動が先鋭化しており、映画に動物を使用することへの規制が他国に比べて異常に強い。よって、映画に動物を使おうとすると、CGで処理してしまうことが多いのだが、この「Haathi Mere Saathi」ではどうも本物の象を使っていたと思われる。象の迫力ある映像はこの映画の大きな見所であった。

 しかしながら、アクションシーンが稚拙で、複数の登場人物をうまくまとめきれておらず、全体的な完成度は高くない映画だった。主演ラーナー・ダッグバーティは、バンデーヴの仕草や身のこなしなどに特徴を出そうと努力していたが、逆に大味な演技に映った。

 「Haathi Mere Saathi」は、タミル語映画「Kaadan」のヒンディー語版であり、最近流行の兆しがあるエコ映画の一種に数えることもできる。タミル語版とキャストが若干異なるため、タミル語版の完成度は分からないが、少なくともヒンディー語版は詰めの甘さが目立っていた。なんと日本で劇場一般公開予定であり、邦題は「ハーティー 森の神」に決まった。おそらく「Baahubabli」シリーズで知名度を上げたラーナー・ダッグバーティの人気にあやかった公開であろうが、映画の出来は「Baahubali」シリーズの足元にも及ばない。