Rooting for Roona (Bengali)

3.5

 2020年10月15日からNetflixで配信開始されたドキュメンタリー映画「Rooting for Roona」は、トリプラー州で発見された先天性水頭症の少女を4年間にわたって追った作品である。日本語字幕付きで、邦題は「ルーナのために」になっている。言語はベンガル語である。

 監督はパヴィトラー・チャッラムとアクシャイ・シャンカル。パヴィトラーはドキュメンタリー映画を専門にする映画監督で、過去にも数作の短編ドキュメンタリーを作っている。アクシャイは新人である。

 映画は2013年4月から始まる。トリプラー州の農村で、先天性水頭症がかなり進行した女児ルーナーが見つかる。水頭症とは、髄液が脳室に過剰に溜まる疾患で、このとき1歳4ヶ月のルーナーの頭は風船のように膨らんでいた。頭囲は94cmにもなっていた。先進国であれば、もっと早い段階で手術が行われていただろうが、トリプラー州には対応できる病院がなく、このときまで放置状態になってしまい、世界的にも珍しいほど水頭症が進行してしまっていた。

 ルーナーは、たまたま近くを取材に来たジャーナリストに取り上げられたことで世界から注目を浴び、デリーの私立病院で手術が行われることになった。おそらくこのドキュメンタリー映画の監督も、報道によってルーナーのことを知り、撮影を始めたのだろう。

 インド随一の病院のひとつ、フォーティスでルーナーは5回の手術を受けた。髄液が抜かれ、頭蓋骨の形成手術が行われたことで、彼女の頭囲は58.5cmまで縮小した。第1段階の手術は成功だった。

 その後、第2段階の手術が行われるはずだったが、トリプラー州に戻った両親は、長いことルーナーに手術を受けさせなかった。そのはっきりとした理由は不明なのだが、おそらく、直近の危険が去ったことで両親は安心してしまい、次の手術でルーナーの身にもしものことがあったらと恐れるようになったのだと思われる。とうとう2017年まで手術は行われなかった。

 また、ルーナーには弟が生まれた。正常な男の子で、順調に成長した。ルーナーは大きな頭部のおかげで身動きできない状態だったが、弟はすぐに立って歩き出すようになった。多分、弟が生まれたことで、両親の気持ちにも多少の変化があったのではないかと思われる。

 ルーナーが5歳半になったとき、ようやく両親はルーナーをデリーに連れて行き、医師の診察を受けさせた。本来ならばこのとき第2段階の手術が行われるはずだったが、ルーナーが水疱瘡に罹っていることが分かり、1ヶ月後に延期された。だが、手術を目前としてルーナーは呼吸困難に陥り、亡くなってしまった。

 ドキュメンタリー映画なので、必ずしもハッピーエンドが用意されているわけではない。ルーナーが元気に飛び回る映像で映画が終わることも期待したが、結局ルーナーは命を落としてしまった。

 この映画が伝えたかったのは、先天的な病気を持って生まれ命を落とした子供たちの多くは、適切な医療さえあれば、助かったかもしれないということだ。ルーナーも、生まれた場所さえ異なれば、助かっていた命かもしれない。

 ルーナーの容姿がショッキングなドキュメンタリー映画であるが、かなり進行してしまった先天性水頭症の病状を見せるだけの内容ではなく、世界中の人々に適切な医療を提供し、救える命を救おうという啓発を行う映画だった。SDGsの3番目の目標「すべての人に健康と福祉を」を思わせる映画である。