Khuda Haafiz

3.0

 2020年8月14日からDisney+ Hotstarで配信開始された「Khuda Haafiz(さようなら)」は、架空の中東の国ノーマン首長国を舞台としたアクション映画である。ヴィデュト・ジャームワール主演映画、といえば、ヒンディー語映画に詳しい人なら大体内容の想像が付く。

 監督は「377 Ab Normal」(2019年)のファールク・カビール。ヴィデュト・ジャームワール以外には、シヴァーレーカー・オーベローイ、アンヌー・カプール、シヴ・パンディト、アーハーナー・クムラー、ヴィピン・シャルマー、ナワーブ・シャー、イクラーク・カーンなどが出演している。

 2007年。ラクナウー在住のサミール(ヴィデュト・ジャームワール)はソフトウェア会社に勤めるITエンジニアで、ナルギス(シヴァーレーカー・オーベローイ)と結婚した。だが、世界的な景気後退の影響で二人とも会社をレイオフされてしまう。二人は、ノーマン首長国で就職することになる。2008年1月、ナルギスの方が先に就職が決まったため、先に渡航する。

 ところが、しばらく音信不通となった後、ナルギスから助けを求める電話が掛かってきた。サミールは観光ヴィザでノーマン首長国のヌールッサバーに渡る。親切なタクシー運転手ウスマーン(アンヌー・カプール)に助けられ、わずかな手掛かりから、バイトゥッサイフの売春宿でナルギスが働かされていることが分かる。サミールはナルギスを助け出そうとするが、多勢に無勢で一旦逃げることになり、事故に遭って捕まってしまう。

 インド大使館のIKミシュラー(イクラーク・カーン)や、国内治安局のファイズ(シヴ・パンディト)やタミーナー(アーハーナー・クムラー)がナルギス捜索に協力することになる。イズターク(ナワーブ・シャー)という男が黒幕であることが分かるが、そのときナルギスの焼死体が見つかり、失意の内にサミールは国を去ることになる。

 検視の結果、その焼死体はナルギスのものではないことが分かる。タミーナーは空港にいたサミールに連絡を取ろうとするが、サミールは既に空港を抜け出してイズタークを追っていた。サミールはシャルムルシェークにあるイズタークの家に突入して、彼からナルギスが生きていることを知る。サミールは、ナルギスが入れられたコンテナを運ぶトラックを乗っ取って暴走する。また、実はファイズはイズタークと内通していた。駆けつけたファイズは、タミーナーを殺し、サミールを追う。

 サミールはヌールッサバーに戻り、投降する。ファイズはサミールを殺そうとするが、上官に阻止される。サミールはナルギスと再会し、タミーナーの葬儀の後、ウスマーンに別れを告げてインドへ発つ。

 OTT(ネット配信)リリースとなった作品だが、ウズベキスタンでロケが行われた、大作の雰囲気のあるアクション映画で、劇場公開映画と比べても遜色ない出来だった。今回、主演のヴィデュト・ジャームワールは、格闘家ではなくITエンジニアという設定だったため、得意の身のこなしを十二分に発揮して戦うシーンは少なかった。それでも、ウズベキスタンの旧市街を舞台にしたチェイスシーンなど、異国情緒溢れる映像が魅力を増していた。

 映画の舞台となっているノーマン首長国は架空の国だが、地図上ではイエメン東部に位置していた。実際にはウズベキスタンでロケが行われているので、厳密に検証していくと変な点もあるのだが、登場人物がアラビア語を話したり、街の看板などにアラビア文字が使われたりと、中東の雰囲気を出そうと努力していた。ちなみに、主人公はイスラーム教徒という設定である。ヒロインのナルギスは、恋愛結婚したヒンドゥー教徒とイスラーム教徒の両親の間に生まれたという設定であった。

 また、サミールとナルギスがノーマン首長国で働こうとしたそもそもの原因は、世界で起こった景気後退であった。一見すると2008年9月のリーマンショックと思われるのだが、映画内で示されたところでは、2007年から2008年の出来事ということになっているので、微妙にタイミングがずらされている。

 主演のヴィデュト・ジャームワールは、行方不明になった妻を必死に探すITエンジニアを堅実に演じていた。とにかく焦りと怒りが終始にじみ出ていて、感情表現が単純だった印象もあるのだが、アクションスターから、様々な演技のできる俳優への脱皮を試みているのが感じられる。ヒロインのナルギスを演じたシヴァーレーカー・オーベローイはあまり出番がなかった。

 意外に主演よりも目立っていたのは、ノーマン首長国の国内治安局に勤める2人のオフィサー、ファイズとタミーナーを演じた、シヴ・パンディトとアーハーナー・クムラーであった。ファイズは味方から悪役に転落する一方、タミーナーは最後までサミールのために献身的に捜査をする有能な女性警官であった。影の主役はこの2人だといえる。

 「Khuda Haafiz」は、OTTリリースとなったとはいえ、意外にも完成度の高いアクション映画である。ヴィデュト・ジャームワールがアクションを抑え気味にして主人公を演じている他、大半をウズベキスタンで撮影した異国情緒溢れる映像も魅力である。