Gadhedo

3.5
Gadhedo
「Ghadhedo」

 2020年1月21日からYouTubeで配信開始された短編映画「Gadhedo(ロバ)」は、民話を翻案したブラックコメディーである。

 監督はジャイ・シャルマー。「Zindagi Na Milegi Dobara」(2011年/邦題:人生は二度とない)や「Dil Dhadakne Do」(2015年/邦題:鼓動を高鳴らせ)などで助監督を務めた人物だ。キャストは、ヴィクラーント・マシー、チャンダン・ロイ・サーンニャール、アーカーシュ・ダーバーデー、クリシュヌー・ベーニーワール、トゥルプティ・カームカルなど。

 舞台はラージャスターン州の村ジャーラーマンド。架空の村ではなく、ジョードプル近くにある実在の村だと思われる。マート・サー(チャンダン・ロイ・サーンニャール)は地元の公立高校で英語を教える教師であった。同じ村で洗濯屋をするゴールー(ヴィクラーント・マシー)は、マート・サーが人々から慕われているのを見てうらやましくなり、あるとき彼にその理由を聞く。マート・サーは「オレは奴らを人間にしているからだ」と豪語する。それを聞いたゴールーは自分の飼っているロバを人間にしてほしいとマート・サーに大金を渡す。マート・サーはその金を受け取り、ロバを売り払って忘れていた。だが、その後、ゴールーはマート・サーにしつこく「ロバは人間になったか」と聞いてくるようになった。とうとう我慢しきれなくなったマート・サーは「ロバは町で徴税官になった」とでまかせを言う。だが、それを信じたゴールーは町まで行き、徴税官に会いに行く。そして徴税官の首に縄を掛けて村まで連れ帰ろうとする。怒った徴税官はゴールーを蹴飛ばすが、ゴールーは「徴税官になっても行儀の悪さは変わらない」と嘆く。

 この映画の面白いところは、ゴールーがずっとマート・サーにだまされ続けていることだ。そもそもロバを教育によって人間にできると思い込んでしまう時点でゴールーの知能に問題があったと見なすべきだが、笑い話系の民話によくある設定なので、そこから突っ込むのは野暮であろう。幾ばくかの知能がある者なら、徴税官に蹴飛ばされた時点でだまされたことに気付くはずだが、それでもゴールーの目は覚めず、蹴飛ばされたのはロバの頃の行儀の悪さが残っているからだと考える。

 ゴールーの話すラージャスターン訛りのヒンディー語も素晴らしい。イントネーションの付け方が村のヒンディー語そのものだ。

 また、村の公立高校でまともに教育が行われていない様子も風刺されている。英語の先生が「Week(週)」を「Weak(弱い)」とつづっていたりしてその教育レベルが計り知れるが、そもそも高校で各曜日の英語を教えている時点でどれだけレベルが低い学校なのであろうか。しかもマート・サーは自宅で私塾のようなこともしていたが、先生も生徒も寝ころんで授業をしていた。もちろん、極端な風刺であろうが、村の公立学校でまともな教育が行われていないという指摘はよくされている。

 「Gadhedo」は、ヴィクラーント・マシーやチャンダン・ロイ・サーンニャールといった曲者俳優たちが織り成す16分ほどのエキセントリックな短編ブラックコメディー映画である。民話の笑い話を映像化したような作品で、最後に笑いのネタが集約されているが、ヴィクラーントやチャンダンの名演があったからこそ、そこまで持って行くことができていることも認めなければならない。佳作の短編映画である。


Gadhedo | Vikrant Massey & Aakash Dabhade Short Film | Royal Stag Barrel Select Large Short Films