Odd Couple

3.5
Odd Couple

 2022年8月9日からAmazon Prime Videoで配信開始された「Odd Couple」は、2組のカップルを巡る変わった物語である。2019年11月23日に南アジア国際映画祭でプレミア上映され、絶賛を浴びた。

 監督は新人のプラシャーント・ジョーハリー。キャストは、ディヴィエーンドゥ・シャルマー、プラナティ・ラーイ・プラカーシュ、ヴィジャイ・ラーズ、スチトラー・クリシュナムールティ、マノージ・パーワー、スミト・グラーティー、チラーグ・スィングラー、サハルシュ・クマール・シュクラー、クマール・ラージプートなどである。

 舞台はムンバイー。起業家のピーユーシュ・クマール(ディヴィエーンドゥ・シャルマー)は、裕福な家の娘ニヴェーディター・ラーオ、通称ナヴィー(プラナティ・ラーイ・プラカーシュ)のフラットに住んでいた。同じマンションには、翻訳家のニヴェーディター(スチトラー・クリシュナムールティ)が住んでいた。

 ニヴェーディターの元恋人でドイツ在住の画家ヨーゲーシュ・パント(ヴィジャイ・ラーズ)は久々にムンバイーに戻り、ニヴェーディターを訪ねる。ヨーゲーシュは、とある土地の取得をしようと働きかけをしていた。だが、既にドイツ国籍を取得していたヨーゲーシュはその土地を購入する権利を持っていなかった。そこで彼は、ニヴェーディターと結婚し、彼女の名義で土地を買おうとする。

 一方、ナヴィーは友達よりも先に結婚したいと考え、ピーユーシュに結婚を急かす。こうして、ピーユーシュとナヴィー、ヨーゲーシュとニヴェーディターが同時に家庭裁判所に結婚届を出す。だが、家に届いた結婚証明書では、名前の混同から、ピーユーシュとニヴェーディター、ヨーゲーシュとナヴィーが結婚したことになってしまっていた。

 家庭裁判所の手違いだったが、修正には時間が掛かりそうだった。そこで彼らは離婚をすることにする。しかし、離婚のための公判まで1年が掛かり、さらに半年間の猶予期間が必要だった。裁判官のチャウターラー(マノージ・パーワー)は2組に対して、半年後に裁判所に来るように指示する。

 1年の間に2組の人間関係は変わっていた。元々絵に興味があったナヴィーはヨーゲーシュに好意を抱くようになっており、元々文学に興味があったピーユーシュはニヴェーディターと気が合った。また、ヨーゲーシュが購入しようとしていた土地の所有者は、ナヴィーの父親ガンパティ・ダヌシュ・カテパッリ(クマール・ラージプート)だということも発覚する。

 ある晩、ピーユーシュはナヴィーとヨーゲーシュが一緒に寝ているところを見てしまい、フラットを出て行く。また、ニヴェーディターへの愛情に気付き、彼女に告白をする。しかしながら、ニヴェーディターはピーユーシュの愛を受け入れず、ヨーゲーシュもナヴィーとの結婚を続けるつもりはなかった。

 こうして半年の猶予期間が過ぎ、2組は裁判所に出頭する。そこでチャウターラー裁判官はピーユーシュとナヴィーが離婚にためらっていることに気付く。

 インドはいい加減なところもあるのだが、強力な文書主義の国でもあり、一度公文書になってしまうと、それを覆すのに非常に苦労するということがある。誤って死亡証明書が発行されてしまった存命中の人物が、自分の生存を立証するために奔走する「Kaagaz」(2021年)という映画があったが、それもその一例だ。「Odd Couple」は、家庭裁判所の手違いから、異なったカップル同士の結婚証明書が発行されてしまうという導入部になっている。それを修正するには、文書主義の弊害から、何年も裁判所を往き来しないといけなさそうだった。そのため、そのカップルは、結婚の取り消しを求めるのではなく、既成事実として受け入れ、離婚手続きをするという手段を採る。

 また、誤って夫婦とされてしまうのは、世代が一回り違う男女だった。20代中頃の起業家ピーユーシュは、40歳手前の翻訳家ニヴェーディターと夫婦になり、40歳の画家ヨーゲーシュは、20代のナヴィーと夫婦になる。しかし、ミスによって結びつけられた夫婦同士で惹かれ合うものがあり、どう決着が付くのか先行き不透明のまま終盤になだれ込む。ただ、結局、この2組のカップルが離婚をしたのかどうかは観客の想像に委ねられることになり、固定した結末を避けていた。

 また、物語にはこの2組以外にも、もう2組の夫婦が離婚届を出していた。ヨーゲーシュの知り合いでタクシー運転手のスディール(サハルシュ・クマール・シュクラー)と、ピーユーシュの親友サニー(チラーグ・スィングラー)である。スディールの離婚の理由は、彼が「मनहूसマンフース」とされたからという変なものだった。「मनहूसマンフース」とは、「口にした不吉な言葉を本当に起こしてしまうような縁起の悪い人」みたいな意味である。また、サニーの妻は毎晩11時にセックスを求めており、それに遅れることの多いサニーに愛想を尽かして、間男を連れ込んでいたことで、離婚するに至った。こうして、「Odd Couple」では、合計4組のカップルが同時に離婚をしようと家庭裁判所を訪れることになる。

 また、ヨーゲーシュはとある土地の購入にこだわっていた。なぜヨーゲーシュがその土地にこだわるのかについては劇中で明確に説明があったわけではないが、どうやら彼の父親が絵の学校を開こうと決めた思い出の土地であったようだ。

 時間軸は頻繁に変わる。現在のシーンから始まって、そこから2ヶ月前の回想シーンに移り、そして現在に戻った後は、1年後、その半年後と変遷していく。時間が飛び飛びである影響で、登場人物の心情や人間関係も断片的になってしまっていた欠点はあった。なぜナヴィーがヨーゲーシュに惹かれたのか、という部分がもっとも説明されていなかった。絵に興味があったといっても、彼女が実際に絵を描き始めたのはヨーゲーシュと会った後である。また、ナヴィーの行動があまりに身勝手すぎる。ヨーゲーシュに一方的にアプローチをし、一緒に寝ることまでするが、ヨーゲーシュから振られると、コロリとピーユーシュに抱きつき、彼に帰って来るように懇願する。天然ボケのキャラではあったが、その行動により、大半の観客は彼女に感情移入しにくいのではなかろうか。

 登場人物の出身地は意図的に分散してあったと感じた。ピーユーシュはビハール州出身、ナヴィーはハイダラーバード出身、スディールはラクナウー出身、そしてサニーはパンジャーブ州出身であった。台詞の中で、それぞれの地域の特産物や名店などについて話が出ていたが、特にピーユーシュは「ビハーリー」としてのアイデンティティーについて度々言及しており、目立った。例えば、ピーユーシュがニヴェーディターに、「ビハールのシェークスピア」と呼ばれる文学者ビカーリー・タークルの作品を紹介し、ビハーリーはオートリクシャー運転手と公務員以外にもいると主張する一幕があった。それもそのはず、プラシャーント・ジョーハリー監督はビハール州パトナー出身である。

 「Odd Couple」は、誤って夫婦になってしまった2組のカップルを巡る、ブラックユーモア溢れる映画である。低予算映画ではあるが、ヴィジャイ・ラーズ、マノージ・パーワー、ディヴィエーンドゥ・シャルマーなど、演技力のある俳優が出演しており、物語もユニークだ。ただ、ナヴィーが身勝手すぎる、結末をはっきりさせないなど、不満な点もあった。