One Day: Justice Delivered

2.5
One Day: Justice Delivered
「One Day: Justice Delivered」

 2019年6月5日からNetflixで配信開始された「One Day: Justice Delivered」は、引退した裁判官が、法律に縛られているときには実行できなかった正義を次々に行うという筋書きのクライムサスペンス映画である。2010年代にトレンドとなった汚職撲滅映画の一種ともいえる。

 監督はアショーク・ナンダー。過去にいくつかの映画を撮っているが、あまり話題になっていない。キャストは、アヌパム・ケール、クムド・ミシュラー、イーシャー・グプター、ザーキル・フサイン、ラージェーシュ・シャルマー、ムラリー・シャルマー、ディープシカー・ナーグパール、アヌスムリティ・サルカール、ザリーナー・ワハーブなど。

 舞台はジャールカンド州ラーンチー。オームプラカーシュ・ティヤーギー(アヌパム・ケール)は引退した裁判官だった。ティヤーギーの娘プージャーの結婚式が行われ、市内の著名人が多数出席した。だが、その夜から、医師のカップル、アジャイ・チョープラー(ムラリー・シャルマー)とリーナー・チョープラー(ディープシカー・ナーグパール)が行方不明となった。サティヤ・ナーラーヤン・シャルマー警部(クムド・ミシュラー)が捜査するが手掛かりは得られなかった。

 チョープラー夫妻はアブドゥルの死に関わっていた。アブドゥルは、2017年7月12日にトーラーンダー野菜市場で起こった爆弾テロ事件で重傷を負い、チョープラー夫妻の務める病院に入院したが、急に容体が悪化し、そのまま死んでしまった。アブドゥルの母親パルヴィーン・ビービー(ザリーナー・ワハーブ)は両医師を訴え、ティヤーギーが裁判官を務めたが、証拠不十分のため、チョープラー夫妻を無罪放免せざるを得なかった。

 次に行方不明になったのはホテル経営者のパンカジ・スィン(ラージェーシュ・シャルマー)だった。パンカジはコルカタへの出張の帰り、行方不明になる。パンカジのホテルではかつて、新婚夫婦の夜の営みが盗撮されて公開された事件があった。新婦は自殺をし、パンカジは訴えられるが、やはりティヤーギーの審判により無罪となった。

 行方不明者が相次いだことで、犯罪科からラーンチーに敏腕女性警察官ラクシュミー・ラーティー警視(イーシャー・グプター)が派遣されてくる。ラーティー警視が赴任してからも、ディラーワル・カーンとアフザル・アハマドという2名が行方不明になる。ラーティー警視は捜査を進める上で、次の標的が国会議員プラヴィーン・ラーワト(ザーキル・フサイン)だと特定する。

 ラーワト議員は誘拐されるが、それを実行したのはシャルマー警部だった。だが、ラーティー警視はそれもお見通しだった。そして、ティヤーギーも関わっていることにも勘付いていた。

 ティヤーギーは、トーラーンダー野菜市場の爆弾テロ事件から起こった一連の裁判で、法律に従っていたために正義を行うことができなかった事件を、引退後に再び調べ直し、犯人を誘拐して引導を渡していた。だが、彼らは殺しはしていなかった。森林の中の廃墟に今まで誘拐した人々を幽閉していた。彼らの自白を収めた動画を残し、二人は去って行く。後に残されたラーティー警視は、ティヤーギーとシャルマー警部に捉えられた犯人たちを射殺する。

 ラーンチーで人が次々に行方不明になる事件が発生し、その事件を、重大な事件を扱う犯罪捜査局犯罪科のラーティー警視が担当することになる。ラーティー警視はなぜかハリヤーンヴィー方言を話す無骨な女性警官であったが、めっぽう腕が立ち、頭も切れる。女版「Dabangg」(2010年)のような警官で、「Mardaani」(2014年)も思わせる。後半はラーティー警視の視点から捜査が進められることになる。

 だが、観客は既に行方不明事件の犯人を知っている。かなり早い時期にティヤーギーがチョープラー夫妻やパンカジを誘拐するシーンがあり、動機も十分に説明されるため、この辺りのサスペンスはない。ただ、ティヤーギー一人で実行しているのかは曖昧にされる。ラーティー警視も、正にその点を疑問に思っていた。

 結局、最後には、シャルマー警部がティヤーギーの協力者になっていたことが明かされる。これは意外な展開だったが、確かに事前に仄めかされていた点はあった。ラーティー警視に自分たちの行為が知れてしまったため、彼らは逮捕を覚悟するが、ラーティー警視は彼らの味方となり、拉致された人々を射殺して片付けてしまうというエンディングである。

 ティヤーギーとシャルマー警部に捕まった人々は、皆、何らかの汚職に関わっていた。中心となる事件は野菜市場での爆弾テロ事件だが、その裏には、恐怖を煽って票を得ようとする政治家がおり、また、証拠隠滅のために重傷を負った証人の抹殺を医師が請け負った。盗撮ビデオの漏洩事件も政治絡みだった。ティヤーギーは、現役の裁判官だった時代には、法律から外れた審判を下すことができず、汚職に関わった人々に正義の鉄槌を下せなかった。引退した今、その間違いをひとつひとつただしているのだった。

 ヒンディー語映画では長らく、腐ったシステムを正すために、システムの内側から正すのか、外側から正すのかという議論が続いてきた。「One Day: Justice Delivered」は完全に後者の立場に立つ映画であり、法律の外から汚職を撲滅しようとする元裁判官の物語になっていた。そして、それを警察官が手助けしていた。

 ヒンディー語映画界を代表するベテラン俳優アヌパム・ケールの演技は安定して素晴らしく、クムド・ミシュラー、ザーキル・フサイン、ラージェーシュ・シャルマーなど、脇を固めるのも個性的で演技力のある俳優たちばかりだ。敏腕女性警官を演じるイーシャー・グプターも好演していた。徹頭徹尾、シリアスな味付けでまとめれば良かったと思うのだが、ラーティー警視のような自己主張の強いキャラを出してバランスを失っていたり、アイテムソングを無理に入れて不必要な娯楽性を出そうとしていたりして、壮大に外していた。

 「One Day: Justice Delivered」は、元裁判官が法律の外から正義の鉄槌を下すクライムサスペンス映画だ。主演のアヌパム・ケールをはじめ、俳優たちの演技は素晴らしいのだが、ストーリーテーリングに難があり、味付けも外している。残念な点の多い映画である。