Dhh (Gujarati)

4.0
Dhh

 2017年11月13日にインド国際子供映画祭でプレミア上映され、2018年9月28日にインドで一般公開された「Dhh」は、小学5年生の仲良し3人組が主人公の子供向け映画である。基本的にはグジャラーティー語映画だが、ヒンディー語の台詞も若干入る。題名の意味は不明である。

 監督はマニーシュ・サイニー。キャストは、ナスィールッディーン・シャー、子役カハーン、子役カラン・パテール、子役クルディープ・ソーダー、ブリジェーンドラ・カーラー、アルチャン・トリヴェーディーなど。

 舞台はグジャラート州の田舎町。グングン(カハーン)、カピル(カラン・パテール)、バジラング(クリディープ・ソーダー)の3人はMJハイスクールに通う落ちこぼれ3人組だった。彼らは学校をさぼってアハマダーバードまで行き、魔術師スーリヤ・サムラート(ナスィールッディーン・シャー)の魔術ショーを観て感化される。3人は、魔法を使わないと進級できないと先生に脅されたため、本当に魔法で進級しようと考え始める。また、グングンの祖父シャーンティ(アルチャン・トリヴェーディー)は3人をとても可愛がっていた。

 ある日、グングンはスーリヤ・サムラートに手紙を書き、助けを求める。すると、スーリヤ・サムラートから「ビールバル」という名のフクロウの像が送られて来る。このフクロウに勉強を教えれば、テストのときに助けてもらえるという手紙が添えてあった。そこで3人は交代交代でビールバルに勉強を教え始める。おかげで、3人の成績はメキメキ上がる。

 ところが、シャーンティが心臓発作で倒れ、病院に搬送される。グングンは、スーリヤ・サムラートに再び手紙を書き、祖父を魔法で助けるようにお願いする。別のお願いをするときはビールバルを返却しなければならなかったため、彼はビールバルを送り返す。

 グングンは、アハマダーバードの病院に入院した祖父をお見舞いに行く。そこで、病室の引き出しの中にビールバルと、彼がスーリヤ・サムラートに宛てた手紙を発見してしまう。ビールバルや手紙は、祖父が送ったものだった。その事実を知って3人はショックを受けるものの、テストが近付いていたため、勉強に集中する。いつの間にかビールバルがいなくても勉強ができるようになっていた。

 テストの日がやって来た。3人は好調にテストをこなし、3人とも合格する。その日、シャーンティは家に戻ってくる。

 魔法を信じる、少年らしい純真さを持った3人が、様々な体験を通して、一歩だけ大人に近付く成長を見守ることができる物語である。

 主人公グングンはおじいちゃんっ子で、グングンの親友カピルとバジラングもグングンの祖父シャーンティに可愛がられていた。魔術師の魔術ショーを観てすっかり魔法の虜になってしまったグングンに対し、シャーンティは手品を見せる。グングンはすっかり驚いてしまう。だが、手品にはタネがあるもの。タネ明かしをされたグングンは、祖父に「騙された」と感じる。そんなグングンに対し、祖父は、「手品はタネさえ知らなければ魔法だ」と諭す。

 グングン、カピル、バジラングの3人組は全く勉強ができず、落第の危機に瀕していた。インドの学校では落第があり、学年末に行われるテストで赤点を取ると進級できない。2009年の「教育を受ける権利法」可決により、6歳~14歳の全ての子供が落第なく進級できることになったが、この映画はおそらくこの法律が可決される前の物語であり、落第があった。特にバジラングは3回も落第していた。

 そこで3人は魔法に頼って進級を目指す。魔術師スーリヤ・サムラートの直接の支援はもらえなかったが、彼からはビールバルという名のフクロウ像が送られてくる。3人は魔術師の指示通り、そのフクロウに勉強を教えることになる。

 もちろん、これはひとつのトリックだ。もっとも記憶に残る勉強法のひとつに、他人に教えるというものがある。人に何かを教えることで、教えている人も知識が整理され、記憶に定着しやすくなる。そういう効果を狙ってビールバルが送られてきたのだが、純真な3人の少年は、そんなことも知らずに必死でビールバルに勉強を教えるようになる。もちろん、すぐに効果が発揮され、彼らは授業中によく発言するようになる。

 結局、グングンたちは、ビールバルを送ったのが、魔術師スーリヤ・サムラートではなく、祖父のシャーンティであることを知ってしまう。彼らの精神が子供ならば、祖父に騙されたと短絡的に考えただろう。だが、一連の出来事を通して彼らは一歩大人に近付いていた。手品は、タネを明かされるまでは魔法と同然だ。彼らはタネを知ってしまったものの、その前に勉強の効果を実感していた。3人は自信を持ってテストを受け、見事進級する。

 小学生が主人公の映画であり、主演の3人をはじめ、多数の子役俳優たちを起用して撮られた作品だった。子供に演技をさせるのには一定のテクニックが必要であるが、彼らの演技はとても自然であり、監督は彼らの自然体な演技を引き出すことに成功していた。あまり多くの台詞を用意せず、映像で見せるシーンが多かったのも功を奏していた。また、口笛を多用したBGMが何とも牧歌的な雰囲気を加えていた。

 ヒンディー語映画界の著名な演技派俳優であるナスィールッディーン・シャーが、魔術師スーリヤ・サムラートとして、短いがインパクトの強い役を演じていた。また、教師の中ではブリジェーンドラ・カーラーがよくヒンディー語映画に出演する俳優である。

 映画の大部分が小学校を舞台にしているため、インドの教室の様子がよく分かるのも、日本人にとっては興味深い点だろう。昭和の学校風景とよく似ており、不適切な行動をした児童生徒は廊下に立たされたりする。ただ、テストは「書けば書くだけ点数が高い」というインド方式の記述式問題であり、紙が足りなくなったら試験監督から紙をもらう。これは日本の一般的なテストと大きく異なる点だ。

 「Dhh」は、3人の少年が大人への階段を上り始める様子を牧歌的な映像と音楽で追ったグジャラーティー語映画である。子供向け映画の作りながら、国家映画賞も受賞するほど高く評価された。地味ながら心温まる佳作である。