7 Din Mohabbat In (Pakistan)

3.0
7 Din Mohabbat In
「7 Din Mohabbat In」

 2018年6月16日公開のパーキスターン映画「7 Din Mohabbat In(7日以内に恋に落とす)」は、ファンタジー要素の強いコミカルなロマンス映画である。デリー出身のジン(精霊)から、7日以内に顔にホクロのある女性から告白されるという挑戦を受けた負け犬が主人公だ。舞台はカラーチー。このデリーとカラーチーの位置関係も伏線になっている。

 監督はミーヌーとファルジャード。主演はシェヘリヤール・ムナワルと「Raees」(2017年)のマーヒラー・カーン。他に、「Om Shanti Om」(2007年/邦題:恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム)のジャーヴェード・シェーク、ヒナー・ディルパズィール、アーミル・クライシー、アームナー・イリヤース、ミーラー・セーティー、リマル・アリー、アーイシャー・オマル、ベーオー・ザファル、アドナーン・シャー・ティープー、イマード・イルファーニー、ダーニシュ・マクスードなどが出演している。

 カラーチー在住のティープー(シェヘリヤール・ムナワル)は宝石屋で働く負け犬男だった。母(ヒナー・ディルパズィール)の他に、両親を亡くした孤児ニーリー(マーヒラー・カーン)も同居していた。ティープーとニーリーは幼馴染みで、特にニーリーはティープーに片思いをしていた。

 ある日、ティープーは怪しげな男から不思議な壺を手渡される。その壺からはドワールカー・プラサードという名前のジン(ジャーヴェード・シェーク)が出て来た。ドワールカーは、7日以内に顔にホクロのある女性から告白されることができれば、彼をもてもてにするが、失敗すれば彼を奴隷にすると提案した。ティープーはそれを受けてしまう。

 まずティープーはモナリザ(リマル・アリー)というダンサーにアプローチする。彼女の顔にはホクロがあった。彼女をマフィアから助けたことでティープーは惚れられる。ところがモナリザはトランスジェンダーだった。女性でなければ条件は満たせなかった。

 次にティープーはガザーラー(アームナー・イリヤース)という女性活動家にアプローチする。彼女の顔にもホクロがあった。ところがドワールカーの妨害により彼女はテロリストと間違われて逮捕されてしまう。

 ティープーは、宝石屋のお得意さんであるパルヴィーン(ベーオー・ザファル)から、ロンドンから帰国した孫娘プリンセス・ソーヌー(ミーラー・セーティー)のための首飾りを頼まれる。ソーヌーの顔にもホクロがあった。ソーヌーはサディーク・モーティー(アドナーン・シャー・ティープー)という粗暴な男と無理矢理結婚させられそうになっていた。

 その一方で、ティープーはニーリーに恋をしてしまう。ところがニーリーの顔にはホクロがなかった。ニーリーとの恋愛を進めていてはドワールカーに提示された条件を満たせなくなってしまう。ティープーはニーリーを保留状態にしておき、ソーヌーをサディークから逃がし、彼女と恋仲になる方向に舵を切る。ティープーは結婚式場からソーヌーを連れ出し、彼女をホテルまで連れて行く。ところがそこにはソーヌーの恋人ファーディー(イマード・イルファーニー)が待っていた。

 ティープーはソーヌーとファーディーの様子を見て、真の愛に勝るものはないと悟る。ドワールカーのことはそっちのけでティープーはニーリーにアプローチしようとするが、彼女はティープーがソーヌーと共にホテルへ入るところを目撃してしまっており、ティープーの母が決めた結婚相手ナスィール・カーンカッター(アーミル・クライシー)との結婚を決めてしまっていた。

 7日目、ナスィールとニーリーの結婚式が行われようとしていた。ティープーは何とかその結婚を止めようとする。そこへ、刑務所から釈放されたガザーラーが乗り込んでくる。彼女は、ティープーが別の女性と結婚しようとしていると聞き、やって来たのだった。ところがニーリーがナスィールと無理矢理結婚させられそうになっているのを見て活動家の血が騒ぎ、それを止めようとする。ティープーはニーリーを連れて逃げようとするが、ナスィールが追いかけてきて、彼と決闘することになる。ドワールカーから力を授かっていたティープーはナスィールを簡単に倒してしまった。

 ニーリーとの恋愛を成就させたティープーであったが、そこへドワールカーが現れ、彼に敗北を宣言する。だが、実はニーリーの顔にはホクロがあった。それを見たドワールカーは、次は時間切れだと言い出す。確かに期限から25分過ぎていた。だが、彼はデリー出身だったため、彼の時計はデリーの時間を指していた。カラーチーの方が30分遅く、まだ約束の期限になっていなかった。ニーリーはティープーに愛の告白をし、こうして彼は勝利する。

 壺からジン(精霊)が出て来て持ち主に挑戦するという、「アラジンと魔法のランプ」的な導入から始まるストーリーである。面白いのは、そのジンがドワールカー・プラサードというヒンドゥー教徒の名前をしており、しかもデリー出身であることだ。通常、ジンはイスラーム世界の空想物であるため、ジンに信仰している宗教があるとしたらイスラーム教になると思うのだが、「7 Din Mohabbat In」のジンは珍しいことにヒンドゥー教徒であった。

 さらに、ドワールカーの出身地がデリーである点は、クライマックスのどんでん返しのための重要な伏線になっていた。インドとパーキスターンの時差は30分ある。また、映画の舞台になっていたカラーチーは、印パ分離独立時にデリーから多くの難民を受け入れた都市である。よって、カラーチーにはデリー出身者が多く住んでいる。主人公ティープーの母親もデリー出身であった。

 いつの時代の物語なのかについては、明示がないため、想像するしかない。携帯電話などが出て来ないので、現代ではないのかと一瞬思われる。ドワールカーが入っていた壺には1935年という年号が刻まれており、ドワールカーは自分で「30年前に死んだ」と発言していることから、1965年前後の物語だと考えてもいいのかもしれない。一方で、現代のヒンディー語映画スターであるサルマーン・カーンやカトリーナ・カイフについて言及があるため、やはり現代の物語なのかもしれない。だが、そうするとティープーの母親がデリー出身という設定に無理が出て来る。単に詰めが甘いだけかもしれない。

 ドワールカーがティープーに対して出した挑戦は、7日以内に女性から「I love you」という愛の告白を受けることである。それを達成できればティープーは超人的な力を得ることができ、達成できなければドワールカーの奴隷になってしまう。おそらくドワールカーは自分の奴隷を増やしたくて、全くもてそうにないティープーに対してそんな挑戦をしたのだろう。人生のどん底にいたティープーは、モテ男になりたくてその挑戦を受け入れてしまう。

 だが、その瞬間からティープーはガラリと変わる。まず、視力が回復した。気弱なメガネっ子だったティープーは、メガネがなくても見えるようになり、ファッションを変えたらだいぶモテ要素が出て来た。はっきりいって、その程度でこれだけ変身できるのならば、ドワールカーの挑戦を受けなくてもコンタクトレンズを装着したりスタイリストにオシャレ化してもらうだけでよかったのではなかろうか。ただし、終盤でナスィールをいとも簡単に倒してしまう場面があるが、これはドワールカーからもたらされた力がなければ実現できなかっただろう。

 ティープーは、もてないという設定の割には、女性に恵まれている。まず、ニーリーという同年代の女性が同居しているという点だけで勝ち組だ。しかも彼女は彼に片思いをしている。こんな贅沢な環境にいて負け犬はありえない。その後、モナリザ、ガザーラー、ソーヌーといった女性たちと出会い、いい関係を築いていく。この時点でモテ男に入門している。

 コミカルで楽しい映画ではあったのだが、細かい設定が雑だった。ティープーとニーリーの関係はもう少し丁寧に描写すべきであったし、なぜガザーラーがそんなにニーリーのことを突然好きになったのかも分からなかった。いつの時代の物語なのか分からないという点については前述の通りである。

 ニーリーを演じたマーヒラー・カーンは撮影時33歳くらいだったと思われる。相手役のシェヘリヤール・ムナワルは年下であり、29歳くらいだっただろう。女優とはいえ、マーヒラーの年齢が上であることは覆い隠せず、この二人の相性は良くなかった。ニーリーという役柄も、マーヒラーのような経験ある女優が演じるレベルのものではなかったように感じた。この映画で一番楽しんで演技をしていたのは、ドワールカーを演じたジャーヴェード・シェークであろう。

 ちなみに、トランスジェンダーのダンサー、モナリザ役を演じたリマル・アリーは、実際にトランスジェンダーの俳優である。この映画でデビューした。

 「7 Din Mohabbat In」は、もてない主人公がジンの挑戦を受け入れたことでモテ男に変身するが、最終的には傍にあった真の愛情に回帰するという筋書きのラブコメである。ギャグが冴えており、面白かった。パーキスターン本国ではヒットしたようである。だが、雑な面も目立ち、手放しで賞賛できる映画ではない。


7 Din Mohabbat In Full Movie | Mahira Khan, Sheheryar Munawar | B4U Movies