Hate Story 4

2.5

 2018年3月9日公開の「Hate Story 4」は、エロティックなサスペンス映画「Hate Story」シリーズの最新作である。「Hate Story」シリーズは、必ずしも上質の映画ではないのだが、濡れ場を多めにしているためか、一定の興行的な成績を収めている。第1作の監督はヴィヴェーク・アグニホートリーだったが、第2作以降はヴィシャール・パンディヤーが続けて監督を務めており、4作目となる「Hate Story 4」の監督も彼である。

 「Hate Story」シリーズは、有名どころを使わずに、まだギャラが安そうな俳優を多用して作られる傾向にある。「Hate Story 4」のメインキャストは、ウルヴァシー・ラウテーラー、ヴィヴァーン・バテーナー、カラン・ワーヒー、イハーナー・ディッローンである。脇役で出演のグルシャン・グローヴァーがもっとも知名度がある。他に、ティヤー・バージペーイーとシャード・ランダーワーが特別出演している。

 舞台はロンドン。実業家で次期ロンドン市長候補のヴィクラム・クラーナー(グルシャン・グローヴァー)には2人の息子がいた。会社は長男のアーリヤン(ヴィヴァーン・バテーナー)が取り仕切っていた。アーリヤンにはレーシュマー(イハーナー・ディッローン)という妻がいた。また、次男のラージヴィール(カラン・ワーヒー)は女好きでトラブルメーカーだったため、父親は要注意と考えていた。

 アーリヤンは自社製品の広告塔として新しいモデルを探していた。ラージヴィールは、ダンスバーで見つけた美女ターシャー(ウルヴァシー・ラウテーラー)をスカウトする。アーリヤンもターシャーを気に入り、すぐに契約する。ターシャーは瞬く間にトップモデルの仲間入りをした。ラージヴィールはターシャーに惚れ込んでおり、彼女のローンチパーティーでプロポーズをする。だが、実はアーリヤンもターシャーを狙っていた。アーリヤンはラージヴィールとレーシュマーを出張に行かせ、自身はターシャーを酔わせて犯そうとする。

 翌朝、ターシャーはアーリヤンと一夜を過ごしてしまったことを悔やむ。だが、アーリヤンから秘密にすると言われ、それに従う。一方、何者かがレーシュマーに、アーリヤンとターシャーが身体関係を持ったことを密告する。レーシュマーに銃を突き付けられたアーリヤンは、誤って彼女を殺してしまう。アーリヤンとター者は遺体を川に捨てる。また、ターシャーはラージヴィールとの婚約を破棄する。ショックを受けたラージヴィールは、ターシャーの新しい恋人を殺すと宣言する。

 一方、ヴィクラムのところに、アーリヤンとターシャーが寝たことやレーシュマーを殺したことなどが知らされる。脅迫者の要求は、アーリヤンとラージヴィールが2年前にインドで犯した罪を自白することだった。2年前、二人はバーヴナー(ティヤー・バージペーイー)という女性をレイプしようとし、たまたま通りかかった青年アシュウィン(シャード・ランダーワー)を殺してしまった。二人は英国に逃げ、事件はもみ消された。実は、ターシャーはアシュウィンの妹ナタ――シャーだった。ナタ――シャーはアーリヤンとラージヴィールに復讐するためにロンドンに渡り、わざと接近したのだった。

 それを知らないアーリヤンとラージヴィールはお互いを敵視するようになり、遂にラージヴィールは死んでしまう。アーリヤンはラージヴィールの遺体を地中に埋める。だが、ナタ――シャーはそれを警察に通報する。アーリヤンは逮捕され、ヴィクラムの市長選出馬は見送られた。こうしてナタ――シャーの復讐は実現した。しかも、実はレーシュマーもこの復讐劇に関わっており、生きていた。

 ヴィシャール・パンディヤー監督は、取って付けたような安易などんでん返しが連発されるエロティックなサスペンス映画を得意とする。彼の作品からは脚本の緻密さが感じられず、高く評価していないのだが、この「Hate Story 4」については、今までで一番まともな筋書きの映画だった。

 もちろん、理屈っぽくこの映画のストーリーを追っていくと穴は見つかる。それでも、「Love Story」ではなく「Hate Story」であるという原点に立ち返った上で、復讐の動機をサスペンス要素にして物語を引っ張る構造の構成は、かなり熟練してきたと評することができる。

 サスペンス映画にはよくある展開なのだが、物事を自由自在に操っていると自負していた者が実は操られていたという筋書きだった。また、映画の冒頭でレーシュマーが死ぬ「現在」がまず語られ、その後、そこに至るまでの過程が回想シーンとして映し出され、その次に「現在」以降のストーリーが展開する構成になっており、この点もサスペンス映画の王道であった。そこに斬新さはなかったが、完成されたフォーマットであるため、全体的なまとまりはよかった。

 ラージヴィールを演じたカラン・ワーヒーの演技とレーシュマーを演じたイハーナー・ディッローンの存在感は弱かったのだが、それ以外の2人の俳優の演技はパワフルだった。メインキャストの中でもウルヴァシー・ラウテーラーはもっとも重要な役を演じており、しかもかなりの集中力でターシャー/ナターシャー役を演じきっていた。アーリヤン役を演じたヴィヴァーン・バテーナーは、声が重厚で渋く、体格もいいため、今後も活躍できそうだ。普段は奇抜な役を演じることの多いグルシャン・グローヴァーは、今回はシリアスな演技をしていた。

 ヴィシャール・パンディヤー監督は過去のヒット曲をリミックスして映画に使うのが好きのようだ。「Hate Story 4」では、「Aashiq Banaya Aapne」(2005年)のタイトル曲がリミックスされていた。

 ちなみに、グルシャン・グローヴァー演じるヴィクラム・クラーナーはロンドン市長に立候補し、インド系として初めて市長に就任する見込みが強いとされていたが、これは2016年からロンドン市長を務めるパーキスターン系英国人サーディク・カーンの存在を意識した設定であろう。結局、ラージヴィールの死やアーリヤンの逮捕により、ヴィクラムは立候補を取り止めることになった。

 「Hate Story 4」は、復讐を主題にしたエロティック・サスペンス映画のシリーズ最新作である。前作に引き続きヴィシャール・パンディヤーが監督を務めている。彼の作品はどうも稚拙なのだが、腕を上げたようで、彼のキャリアの中ではベストの出来になっている。しかし、不思議なことにあまりヒットしなかったようだ。