Bank Chor

2.5
Bank Chor

 2017年6月16日公開の「Bank Chor(銀行強盗)」は、その題名の通り、銀行強盗を題材にした映画だ。銀行強盗といっても様々だが、この「Bank Chor」はスリラー×コメディーの味付けがしてあり、意外性のある脚本が売りである。

 監督は「Luv Ka The End」(2011年)のバンピー。主演はリテーシュ・デーシュムクとヴィヴェーク・オーベローイ。ヒロインはリヤー・チャクラボルティー。他に、ヴィクラム・ターパー、ブヴァン・アローラー、サーヒル・ヴァイドなどが出演している。また、ウペーンドラ・リマエー、ヴィクラム・ゴーカレーが特別出演している他、ラッパーのバーバー・サイガルが本人役で出演している。

 舞台はムンバイーの銀行、バンク・オブ・インディアンス。ある日、この銀行に三人組の強盗が押し入った。チャンパク(リテーシュ・デーシュムク)、ゲーンダー(ヴィクラム・ターパー)、グラーブ(ブヴァン・アローラー)である。強盗は銀行員や客を人質に取って立て籠もる。ところが、どうも三人は素人のようで、ドジを繰り返す。自分で警報ボタンを押してしまい、警察に取り囲まれてしまった。また、中央捜査局(CBI)のアムジャド・カーン(ヴィヴェーク・オーベローイ)も現れ、指揮権を警察から奪う。アムジャドは過去2回、銀行強盗をして逃亡中の犯人を追っており、今回も同一犯による犯行だと考えて駆けつけたのだった。銀行にはTVレポーターのガーヤトリー(リヤー・チャクラボルティー)もやって来て実況生中継する。

 リーダーのチャンパクは人質を傷付けないように気を付ける優しい強盗だった。金を盗んで銀行から出ようとしたところ、人質の中から本物の銀行強盗であるジュグヌー(サーヒル・ヴァイド)とその一味が現れ、三人を人質にして乗っ取ってしまう。ジュグヌーは汚職まみれの内務大臣ドーンガルディーヴェー(ウペーンドラ・リマエー)に雇われており、彼の汚職を暴こうとした記者シャシャーンク・タークル(ヴィクラム・ゴーカレー)が銀行に預けた、取材記事が入ったハードディスクを奪おうとしていた。

 人質となったチャンパクは、密かにアムジャドと連絡を取り合い、別の強盗が現れたことを伝える。アムジャドはチャンパクに指示を出し、有利に進めようとする。チャンパクは隙を突いて人質を逃がす。そこへアムジャドが突入し、ジュグヌーと銃撃戦を繰り広げる。その間にチャンパクたちも逃げ出す。ところが、アムジャドはジュグヌーが捕縛されているのを発見する。実はチャンパクたちは本物の銀行強盗で、ジュグヌーをも利用して銀行から金を盗み、堂々と逃げおおせたのだった。

 チャンパクは泥棒だったが、シャシャーンクの下で働いていた。彼が取材の途上でドーンガルディーヴェー内務大臣に殺されたことで、その復讐のために全てを計画したのだった。アムジャドもチャンパクに一杯食わされたのだった。

 主人公のチャンパクが銀行に強盗しに入ると、その場に本物の銀行強盗がおり、自分が人質にされてしまうという導入であった。それだけでもツイストがあるが、真のツイストは、実はチャンパクがさらに凄腕の銀行強盗だったことだ。まるで素人の振りをして銀行に押し入り、本物の銀行強盗を利用して金を盗み出し、堂々と脱出に成功する。しかも、TVリポーターのガーヤトリーまでグルだった。この2度のどんでん返しによるサプライズが売りの映画である。

 よくひねってある脚本だったが、あまりにひねりすぎで現実感がなかった。緻密に計画を立てたとしても、銃を持った銀行強盗をいいように操るのは不可能のように感じる。意外性のある脚本を考えるのはいいのだが、意外な展開でも観客が納得できるように下準備をしておかなければならない。それが不足していた映画だった。

 映画の本筋とほとんど関係ないところでは小ネタが満載だった。たとえばチャンパクはムンバイーっ子だったが、その相棒のゲーンダーとグラーブはデリー周辺部出身だった。デリーとムンバイーはライバル関係にある都市であり、両都市の住民たちはお互いにお互いを否定し合う傾向にある。それを反映するように、三人は事あるごとにデリーとムンバイーの比較をし、小競り合いを繰り返す。

 漫画ネタも目立った。リテーシュ・デーシュムクが演じるのはチャンパクだが、インドには「チャンパク(Champak)」という有名な子供向け漫画がある。また、台詞の中には、これまた有名な漫画のキャラクター「チャーチャー・チャウダリー(Chacha Chaudhary)」の言及がある。映画のラストでは、風刺漫画家RKラクシュマンの主人公「一般人(The Common Man)」の像が出て来るが、これはムンバイーのワルリー(Worli)にある。

 リテーシュ・デーシュムクとヴィヴェーク・オーベローイの共演は過去に「Masti」(2004年)などがある。伸び悩んでいる俳優である点が共通しており、彼らの運勢はこの「Bank Chor」でも上向かなそうだ。ヒロインのリヤー・チャクラボルティーはキンキンうるさいだけでほとんど存在価値はなかった。ゲーンダーとグラーブを演じたヴィクラム・ターパーとブヴァン・アローラーは今後作品に恵まれればコメディアン俳優として伸びそうである。

 「Bank Chor」は、意外性のある脚本が最大の売りの銀行強盗映画である。スリラーとコメディーの要素がうまくミックスされていたが、どんでん返しに無理があり、すんなりと納得できる筋書きになっていなかった。無理に観る必要はない映画である。