Wall

3.5
Wall
「Wall」

 2017年3月7日にYouTubeで配信開始された短編映画「Wall」は、20分ほどの上映時間の中でほとんど一人の俳優しか登場しないスリラー映画である。監督はプラティーク・マートゥル、主演はスジート・クマールである。

 破産し、恋人からも捨てられ絶望していた主人公(スジート・クマール)は、壁の向こうから聞こえてくる会話に耳を傾ける。その会話の中では大金が言及されていた。主人公が屋上へ出てみると、血を流して倒れている2人の男とひとつのバッグがあった。そのバッグを開けてみると多額の現金と一丁の拳銃が入っていた。その現金を自宅に持ち帰った主人公は、引き続き壁の向こうで何が起こっているかを探り続ける。隣には女性が住んでいたが殺されており、その妹がやって来て遺体を発見した。警察がやって来て捜査をするが、彼の部屋についても調べようとする。主人公は居留守を使ってやり過ごそうとする。壁の向こうにいる女性から話しかけられるが主人公は無視し続ける。だが、姉を殺した犯人扱いされ、彼女が壁を叩き始めたため、主人公は拳銃で壁を撃ってしまう。壁の向こうにいた女性は死ぬ。すぐに警察がやって来て、彼の部屋に踏み込んでこようとする。銃を構えて待ち構えた主人公は撃たれて死んでしまう。

 主演を務めたスジート・クマールは全く無名の俳優である。過去の出演作もない。だが、たった一人で20分間、観客の注意を引き付けることに成功していた。それほど迫真の演技だった。

 壁の向こうから聞こえてくる会話は聞き取りづらい。字幕もないため、音量を最大にして聞かないといけなかったが、それでも全容は理解できなかった。どうも隣に住んでいた女性が男性に殺され、その男性も誰かと相撃ちになって、金と拳銃だけが残されたようだった。それを、聞き耳を立てていた主人公が漁夫の利で手に入れたのである。ちょうど破産して退去命令を出されていた主人公にとって、その金は天の恵みであった。

 ただ、「悪銭身に付かず」の諺通り、主人公はそれを使う前に死んでしまう。大金を手に入れた後も壁の向こうに気を取られ、正常な判断ができなかった。遂には、壁の向こうにいた女性を殺してしまい、警察に踏み込まれてしまう。

 「Wall」は相当な低予算で撮られた映画であることは想像に難くないが、優れた脚本と演技によって、スリルある映画に仕上がっていた。


https://www.youtube.com/watch?v=ndKkSZhWeVo