Junooniyat

2.5
Junooniyat

 軍人と一般人の恋愛というと「Jab Tak Hai Jaan」(2012年/邦題:命ある限り)が思い出される。2016年6月24日公開の「Junooniyat(狂気)」も、軍人と一般人の間に花開いたロマンスを描いた作品である。

 監督は「Dhan Dhana Dhan Goal」(2007年)などのヴィヴェーク・アグニホートリー。主演はプルキト・サムラートとヤミー・ガウタム。他に、リシター・バット、プーナム・カウル、グルシャン・デーヴァイヤー、アニーシャー・ジョーシー、ラヴィ・ケームー、マノージ・バクシーなどが出演している。

 カシュミール地方に駐屯する軍人、ジャハーン・バクシー大尉(プルキト・サムラート)は、規制区域の湖で泳いでいたスハーニー・カプール(ヤミー・ガウタム)を保護する。そしてジャハーンとスハーニーは恋に落ちる。

 スハーニーは故郷のアムリトサルに戻ったが、ジャハーンのことが忘れられなかった。ジャハーンはたまたま仕事でアムリトサルを訪れ、ジャハーンと再会する。二人はデートを重ねるが、スハーニーの父親(ラヴィ・ケームー)にそれがばれてしまう。スハーニーの父親も軍人一家であったが、兄弟2人と息子1人を戦死で失っており、自身はトラクターのショールームを経営していた。彼は、スハーニーが軍人と結婚することを許さなかった。もしジャハーンが軍を辞めれば結婚の可能性があったが、ジャハーンはそれを拒否し、アムリトサルを去って行く。

 それでもスハーニーは諦め切れず、ジャハーンを追ってカシュミールまで行く。ところが、ジャハーンと軍人の娘カーミヤー(プーナム・カウル)の縁談が進んでいた。それを知ったスハーニーはジャハーンと会わずに引き返す。

 ジャハーンは国境地帯で、雪崩で自動車ごと埋もれた一家を助ける。ヤシュ(グルシャン・デーヴァイヤー)とその一家はカナダから結婚式のためにインドを訪れていた。ヤシュは命の恩人であるジャハーンをパティヤーラーで開催される結婚式に招待する。

 ヤシュの結婚式に行ってみると、結婚相手はスハーニーであった。ジャハーンは、別の男性との結婚を決めたスハーニーを責める。だが、スハーニーもジャハーンが別の女性と結婚しようとしていると考えていた。だが、ジャハーンとスハーニーの関係に勘付いたヤシュは、二人が愛し合っていることを公表し、二人を結婚させる。

 序盤は、カシュミール地方の美しい山景を背景に、主人公のジャハーンとスハーニーの出会いが描かれる。中盤は、アムリトサルを舞台に、スハーニーの視点からこの恋愛が描かれ、終盤にはジャハーンの視点に移り、舞台もパティヤーラーとなる。

 ロマンス映画において、愛し合う男女の前に立ちはだかる関門にはいくつかの類型が認められるが、「Junooniyat」の場合、中盤のそれは、軍人という職業にあり、ユニークだった。スハーニーの家族は軍人一家だったが、3人を戦死で亡くしており、軍人をスハーニーの結婚相手として選ぶことに拒否反応を示していた。もしスハーニーと結婚するならば、ジャハーンは軍を辞めなければならなかった。ジャハーンのとって軍役は天職であり、簡単に決断できなかった。また、スハーニーも家族を捨ててジャハーンと一緒になることは選ぼうとしなかった。なぜ、愛を実現するために、どちらかが、もしくは両方が、何かを犠牲にしなければならないのか。そんな問いかけがなされており、一定の盛り上がりを感じた。

 しかしながら、後半に入ると、ジャハーンとスハーニーが何と戦っているのか不明瞭となる。スハーニーはジャハーンがカーミヤーと結婚すると早合点し、ヤシュとの結婚を決めてしまう。今度はジャハーンが、スハーニーがヤシュと結婚すると知ってショックを受ける。二人の勘違いとすれ違いから、絶交まで至りそうになるが、ヤシュが出来た男で、二人が本当は愛し合っていることを察知し、結びつける。この辺りはヒンディー語のロマンス映画によくある流れである。

 結局、あんなに軍人との結婚に反対していたスハーニーの父親も、彼女がジャハーンと結婚することを笑顔で認める。ならばなぜあんなに反対していたのかと思ってしまう。

 映画の所々で「運命」という言葉が繰り返され、果たして人間は運命に従って生きるべきか、運命を自ら書くべきか、という命題も出される。ジャハーンは運命をコントロールする派であったが、スハーニーとの恋愛は運命に翻弄され続けたといえる。

 ジャハーンを演じたプルキト・サムラートがあまり軍人らしい雰囲気を醸し出せていなかったこともマイナス要素だった。軍人には軍人の身のこなしがあるのだが、プルキトは軍人のマンネリズムをきちんと研究しておらず、一般のロマンスヒーローのような立ち振る舞いをしていた。なぜか詩人でもあり、ますます軍人のイメージから程遠い。

 ヒロインのヤミー・ガウタムは、登場当初は溌剌とした演技をしていたが、後半になると神妙になるという、これまたヒンディー語映画のヒロインによくあるパターンを踏襲していた。

 結局、中盤で問いかけられた、恋愛のために仕事を捨てるか、家族を捨てるか、それとも仕事と家族を優先して恋愛を捨てるか、この取捨択一の部分だけが新鮮で、その前後はインド映画の定型パターンからそんなに外れるものではなかった。

 「Junooniyat」は、軍人が一般人女性と恋に落ちるというラブストーリーだが、インドの典型的なロマンス映画の流れを踏襲しており、新鮮さは少ない。無理して観るべき映画ではない。