Baankey ki Crazy Baraat

2.5
Baankey ki Crazy Baraat
「Baankey ki Crazy Baraat」

 「Hum Aapke Hain Koun..!」(1994年)はインド式結婚式の一部始終を追った映画で、インド映画史に残る大ヒット作になった。結婚式は映画の強力なコンテンツとなり、その後も結婚式を様々な角度から捉えた映画が多く作られた。最近は「Humpty Sharma Ki Dulhania」(2014年)というコメディー映画がありヒットしたが、この題名は「ハンプティー・シャルマーの花嫁」という意味で、「固有名詞+結婚関連用語」という題名もトレンドになった。2015年8月28日公開の「Baankey ki Crazy Baraat」も、「バーンケーの狂った花婿行列」という意味で、その題名が示す通り、結婚式を中心に展開する物語である。「バーラート」とは、花婿側の参列客や、彼らによる行列のことを指す。

 監督は「The White Elephant」(2009年)のアイジャーズ・カーン。前作はどちらかというと非メインストリーム映画であったが、今回はコテコテの娯楽映画を送り出してきた。キャストは、サンジャイ・ミシュラー、ラージパール・ヤーダヴ、ヴィジャイ・ラーズ、ラーケーシュ・ベーディー、サティヤジート・ドゥベー、ティア・バージペーイー、パンカジ・ジャー、アニル・マーンゲー、アヌシャー・サンパトなどが出演している。また、アイジャーズ・カーン監督自身もカメオ出演している。

 舞台はヒマーチャル・プラデーシュ州。35歳の独身男バーンケー(ラージパール・ヤーダヴ)は結婚を切望していた。父親のナンドラール(ラーケーシュ・ベーディー)がパンディトジー(僧侶)に彼のホロスコープを見せたところ、金運はあったが結婚運が最悪で、誰とも結婚できない運命だった。バーンケーの叔父カナイヤーラール(サンジャイ・ミシュラー)とゴロツキのラッラン(ヴィジャイ・ラーズ)がパンディトジーを脅すと、その解決法として、替え玉を用意して花嫁と結婚させる方法を提案する。彼らは10万ルピーの報酬を約束し、ラージェーシュ(サティヤジート・ドゥベー)という替え玉を用意する。ラージェーシュをバーンケーに仕立てあげたことで、バーンケーの縁談は、ナーラーヤン(アイジャーズ・カーン)の娘アンジャリ(ティア・バージペーイー)とまとまる。バーンケーはアンジャリの写真を見て一目惚れだった。

 ナンドラール、カナイヤーラール、ラッランなど、花婿側の参列客はバスに乗って花嫁側の用意した式場へ向かう。ところがラージェーシュが姿をくらます。困ったナンドラールは、たまたまバスを運転していたヴィラート(サティヤジート・ドゥベー)を替え玉にする。ヴィラートの父親はカナイヤーラールに多額の借金をしておりヴィラートは断れなかったが、これを機会に父親の借金を帳消しにさせようとする。

 式場に到着したバーラートは花嫁側から歓待を受ける。アンジャリは、見知らぬ男性と結婚させられそうになり、逃げ出そうとするが、親友のプージャー(アヌシャー・サンパト)の助言に従い、花婿がどんな人か確認する。ヴィラートを見たアンジャリは彼を気に入り、一転して結婚を受け入れる。ヴィラートとアンジャリは恋に落ちる。

 結婚式中、度々横槍が入ってヴィラートの正体がばれそうになるが、ラッランがうまく対応し、何とか式は無事に終わる。バーラートはアンジャリを連れて家に戻り、ヴィラートはお役御免になる。アンジャリは、結婚相手がヴィラートではなくバーンケーだと知って驚くが、彼をうまく出し抜いて、ヴィラートと共に逃げ出すことに成功する。

 替え玉受験ならぬ替え玉結婚を扱ったコメディー映画であり、サンジャイ・ミシュラー、ラージパール・ヤーダヴ、ヴィジャイ・ラーズといった一流のコメディアン俳優たちが大暴れしていることもあって、面白い時間帯は度々訪れる。だが、結婚式が始まると途端に冗長になり、テンポが悪くなる。しかもクライマックスとなる最後の逃亡シーンに迫力がなかった。前半は悪くなかったのだが、後半が弱い映画になっていた。また、娯楽映画には娯楽映画の文法があるのだが、アイジャーズ・カーン監督はどうも見よう見まねで娯楽映画を作ったような印象で、ヤシュラージ・フィルムスやダルマ・プロダクションズのような大手プロダクションが作った娯楽映画に比べると洗練されていない。

 インドでは結婚相手を決める際に新郎新婦のホロスコープが合わせられ、相性チェックが行われる。だが、結婚に向かない星の下に生まれた人というのもおり、代表的なのはマーングリクである。「Baankey ki Crazy Baraat」では花婿側に大凶の要素が見つかった。ただ、その解決法が用意されているのも面白い。マーングリクの場合は、木や動物との結婚をして悪影響を他所に流す儀式が行われることがあるが、今回は別の花婿を替え玉として立てて婚姻の儀式をし、式が終わったら本物の花婿と夫婦になるという手段が採られた。

 花嫁側が全て了承した上での替え玉結婚であれば大きな問題はないだろうが、替え玉であることを一切明かさずに縁談を進めており、モラル的に非常に引っ掛かるストーリーだ。花嫁のアンジャリが、バーンケーの替え玉ヴィラートと恋仲になってしまうというのは容易に予想できる展開だったが、ヴィラートがバーンケーの替え玉だったと分かったときの反応には現実味がなかった。アンジャリはほぼ一瞬で騙されたことを理解し、しかも状況を打開するため迅速に次の行動に出る。普通の女性だったらこんなスマートな対応はできないだろう。

 ヴィラート、アンジャリ、ラッランなど、登場人物の人柄や行動原理をもっと時間を割いて説明しておいていたら、その後の展開がより説得力のあるものになっていたことだろう。それがなかったため、ほぼ現在起こっている出来事から彼らのことを徐々に理解していくしかなかった。

 ラッランは、結婚式の障害になり得る3人の人物を次々に拉致して、花婿側の宿舎として利用されていた学校の一室に閉じ込める。彼らは忘れ去られた存在になり、結婚式が終わると全く登場しなくなる。彼らはいつか解放されるときが来るはずで、そうなるとバーンケーの正体はヴィラートであるということが分かってしまう。そうなったときにどうなるか、という点も気になるものだ。たとえコメディー映画であったとしても、こういう細部を大事にしないと、観客に後味の悪さを残してしまう。

 演技面ではラージパール・ヤーダヴのちょこまかとした動きと、ヴィジャイ・ラーズの兄貴系役作りが良かった。サティヤジート・ドゥベーは一人二役を好演していたが、映画向きの容姿ではないと感じた。ヒロインのティア・バージペーイーは「Haunted 3D」(2011年)でデビューした女優だ。悪くはないが、今のところブレイクスルーらしきものはない。

 「Baankey ki Crazy Baraat」は、替え玉結婚を巡るドタバタ劇であるが、娯楽映画を作り慣れていない監督が無理して娯楽映画を作ったような作品になっており、いろいろな部分が中途半端だ。無理して観る必要はない。


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