Mumbai Delhi Mumbai

3.0
Mumbai Delhi Mumbai

 日本で首都東京と商都大阪の間でライバル関係があるように、インドでも首都デリーと商都ムンバイーの間でライバル関係がある。2014年12月5日公開の「Mumbai Delhi Mumbai」は、ムンバイー在住の女性がデリーに来てデリー在住の男性と出会うロマンス映画である。

 監督はサティーシュ・ラージワーデー。マラーティー語映画の監督で、ヒンディー語映画の監督は初となる。主演はシヴ・パンディトとピヤー・バージペーイー。ほとんどこの二人の会話で物語が進行する映画である。

 お見合い相手のスィッダールトに会いにムンバイーからデリーにやって来たピヤー(ピヤー・バージペーイー)は、家に財布を忘れ、空港で乗ったオートリクシャーの中に携帯電話を忘れてしまう。道端で出会ったゴーリー(シヴ・パンディト)のバイクに乗って、お見合い相手のいるヴァサント・クンジまで行くが、家は留守だった。何とか相手の電話番号を調べて電話をするが、いつ掛けても話し中だった。そこでピヤーはゴーリーと共に昼食を食べたりデリーを観光したりして過ごす。

 ムンバイーに帰る飛行機の時間になり、ピヤーはゴーリーに空港まで送ってもらう。そこで実はゴーリーこそがお見合い相手のスィッダールトだという事実に気付く。ゴーリーはピヤーにプロポーズをし、ピヤーも去り際に彼にイエスのメッセージを送る。

 「デリーの男」と「ムンバイーの女」のステレオタイプを引き合わせ、「デリーあるある」「ムンバイーあるある」を会話の中に散りばめて、そのやり取りを楽しむタイプの映画だった。低予算ながら、台詞だけで楽しめるように工夫された脚本で、特にデリーやムンバイーに住んでいる人、または住んでいた人には響く内容になっている。

 ゴーリーが実はピヤーのお見合い相手だったというラストのオチは十分予想されたもので意外性は低かったが、観客の多くが望む結末でもあり、後味は良くまとまっていた。

 ゴーリーを演じたシヴ・パンディトは、デリー出身ではないようだが、デリー大学に通っていたこともあり、デリーっ子ぽさを出すのに不利ではなかったはずだ。ただ、長年デリーに住んでいた外国人の視点から見ると、シヴが作り出したゴーリーのキャラクターからは、生粋のデリーっ子と比べると、多少の偽物っぽさが醸し出てしまっているのは否めなかった。

 ムンバイー・ガールのピヤー役を演じたピヤー・バージペーイーは、女優になるためにムンバイーに住み始めたものの、元々はウッタル・プラデーシュ州の出身で、デリーに住んでいたこともある。ムンバイーっ子らしさをどう定義づけるかにもよるのだが、何となく逆にデリー・ガールっぽさが感じられた。

 ただ、二人とも真摯に演技をしていたことは確かで、身振り手振りや表情をよく使って、デリーとムンバイーの激突をよく表現できていた。

 デリーが舞台の映画であり、デリー中を移動するため、デリーの実在の地名や名所旧跡がいくつも出て来るのは、デリー在住経験者にとっては楽しい点だった。南デリーの高級住宅街ヴァサント・クンジ、ピータムプラーのディッリー・ハート、INAのディッリー・ハート、トゥグラカーバード城塞、グルドワーラー・バングラー・サーヒブなどが出て来た。

 主人公のゴーリーには過去に日本人の恋人がいたという設定は日本人観客の注意を引くだろう。だが、名前は日本人とは思えなかったし、会話の中で触れられただけで、日本人が実際に登場するわけではなかった。

 「Mumbai Delhi Mumbai」は、何かとライバル関係にあるデリーとムンバイーの確執を、うまくロマンス映画のフォーマットに落とし込んだ作品である。デリー各地の実在の地名が出て来るのも個人的には響くものがあった。最初から最後までほぼずっと会話が続くので、聞き疲れるところもあるのだが、気軽に観ることのできるカジュアルな佳作である。