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3.0
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「?」

 モキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)映画およびファウンド・フッテージ映画という特殊なジャンルを切り拓いた「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999年)の影響はインド映画界にも見られ、「Love Sex Aur Dhokha」(2010年)や「Ragini MMS」(2011年)といったヒット作を生んだ。2012年2月17日公開の「?」も、発見されたカメラに収められた映像を編集して作られたという体裁のファウンド・フッテージ型ホラー映画である。

 監督はアライソン・パテール。モキュメンタリー映画にありがちだが、無名な俳優たちが起用されている。マーンヴィー・ガグルー、アクラーク・カーン、ヤマン・チャトワール、ヴァルン・タークル、ソーナム・ムカルジー、キラン・バーティヤー、チラーグ・ジャインなどである。

 この映画の設定は、2010年11月に、卒業を間近に控えた大学生たち男女7人が、学生時代最後の思い出作りのために、森の中の別荘に泊まって遊ぶというものである。グループの中には撮影監督志望の者もおり、このバカンスを始終撮影してひとつの作品を作り上げようとしていた。ところが、この別荘には「何か」がおり、次々と異変が起こる。その様子をカメラが捉えていた。7人は全員帰らぬ人となったが、カメラが見つかり、そこに収められていた映像を編集して作られたのがこの「?」というわけだ。

 映画を最後まで見通しても、彼らが具体的に何に襲われたのかは分からない。初日の夜に彼らは、あの世に行けずにこの世を彷徨う「霊」の話をしている。また、彼らは森の中で不気味な人形を見つけ、それを地面に埋葬する。これらが、その後に起こる異変と関連していると示唆されるが、そう結論付けられていたわけでもなかった。

 彼らが持っていたカメラにはナイトモードが付いており、暗闇でもある程度撮影をすることができた。時々、画面が歪んだりするが、それは「霊」が通った印と考えていいだろう。人間が、目に見えない力で引っ張られる場面も何度かあった。そして、「霊」に取り憑かれたのか、グループの中のスィムランという女性が奇妙な行動を取り始めていた。それでも、具体的にその「何か」が映し出されることはなかった。

 敢えてその「何か」を映し出さなかったのは正解だった。下手にCGなどを使って、怪奇現象の原因をはっきりと見せてしまっていたら、単なる低予算映画になってしまっていたところだった。「?」は、低予算は低予算なのだが、その弱みを強みに変換できていた。敢えて粗い映像でもって、本当に大学生が趣味で撮ったかのような素人映像をわざとらしくないように演出することに成功していたのである。

 敢えて苦言を呈するならば、カメラのアングルがわざとらしかった。たまたまカメラを置いた位置が絶妙で、そのとき起こっている出来事をちょうどいい角度から映しているという設定になっていたが、カメラの位置や角度に人為性を極力減らし、ベストショットにこだわらずにひとつひとつの映像を作っていってもよかったのではなかろうか。

 出演していた俳優たちの中で後にもっとも出世するのは、マーンヴィーを演じたマーンヴィー・ガグルーだ。いかにもデリーっ子っぽい都会的な話し方をしており、やたら早口だが聴き取りやすい。天性のトーク力を感じる。

 「?」は、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」型のフッテージ・ファウンド・ホラーである。あまりに「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」と似ているためオリジナリティーには欠けるが、わざとらしさがあまりなく、よく作られていた。この種の映画が好きな人にはおすすめだ。