2011年5月6日公開の「Luv Ka The End(ラヴの終わり)」は、米国映画「John Tucker Must Die」(2006年)や「Wild Cherry」(2009年)を翻案したとされるコメディー映画である。3人の女性がプレイボーイを痛い目に遭わせるというガールズ映画だ。
監督は新人のバンピー。主演は「Teen Patti」(2010年)でデビューしたシュラッダー・カプール。曲者俳優シャクティ・カプールの娘である。他に、新人ターハー・シャー、プシュティー・シャクティ、シュリージター・デー、メヘルザーン・マズダー、リヤー・バムニヤール、ラーフル・パールダーサーニー、シェーナーズ・トレジャリー、アルチャナー・プーラン・スィン、ジャンナト・ズバイル・レヘマーニーなどが出演している。また、バンピー監督自身が特別出演している他、パーキスターン人歌手アリー・ザファルが最後に登場する。
ムンバイー。高校卒業の日、リヤー(シュラッダー・カプール)は夕方に恋人のラヴ・ナンダー(ターハー・シャー)とパーティーに行き、人気歌手フレディー・カプール(アリー・ザファル)のコンサートを鑑賞する予定だった。翌日はリヤーの18歳の誕生日であった。リヤーはその夜、ラヴに処女を捧げるつもりだった。 ところが、両親が急用でプネーに行かなければならなくなり、留守番を頼まれてしまう。家には認知症の祖母と生意気な妹ミンティー(ジャンナト・ズバイル・レヘマーニー)がいた。リヤーはラヴに、会えなくなったことを伝える。リヤーの親友ジャグス(プシュティー・シャクティ)とソニア(シュリージター・デー)は何とかリヤーが夕方外出できるように作戦を立てようとするが、偶然ラヴがナターシャ(リヤー・バムニヤール)をデートに誘っていることを知ってしまう。 クラスメイトのカールティケーヤン(ラーフル・パールダーサーニー)から三人は、ラヴが参加しているゲームについて知らされる。裕福な実業家の息子ラヴは、「ビリオネア・ボーイズ・クラブ(BBC)」のメンバーであった。BBCでは、女の子との破廉恥なシーンの動画をアップロードすることでポイントが得られた。ラヴはトップを走っており、リヤーの処女を奪う動画を投稿することで勝負を決めようとしていたのである。 ショックを受けたリヤーは、ラヴに復讐するため、ジャグスとソニアと共に、彼から4つの「C」を奪うことを誓う。「Car(自動車)」、「Cash(現金)」、「Charm(魅力)」、「Chamcha(取り巻き)」である。 ラヴが大事にしていた外車はレッカー移動され、三人はそれを破壊する。そしてナターシャとデートするラヴに恥をかかせ、ナターシャの自動車を奪って逃走する。また、ラヴの親友ティミー(メヘルザーン・マズダー)に求愛のメッセージを送り、ゲイであるとカミングアウトすると同時に、ラヴの財布からクレジットカードを抜き取り、買い物をしまくる。三人は酔っ払ったラヴを拉致し、女物の服を着せてダンスバーで踊らせる。 一応復讐は完了したつもりだったが、リヤーのところにラヴから電話が掛かってくる。リヤーは仕上げをするためにラヴをパーティーに呼ぶが、実はラヴも全てはリヤーの仕業であることに気付いていた。リヤーは寝室でラヴに縛られピンチを迎える。だが、カールティケーヤンの活躍のおかげでその様子はパーティー会場に流されていた。リヤーはラヴに反撃し、彼を後にする。パーティーにはフレディー・カプールが現れ、歌を歌う。リヤーとナターシャは共に踊る。そこには祖母やミンティーもやって来る。 翌朝、フレディーの自動車に送ってもらったリヤー、ジャグス、ソニア、ミンティー、そして祖母は、両親が帰ってくる前に家に帰り着き、何事もなかったかのように振る舞う。
女性視点で物事が進み、若い観客向けの味付けで、筋はストレートで分かりにくいところがない。女性同士の友情と対立、母娘や姉妹の関係など、人間関係も徹底的に女性を中心に構築していた。ゲイに関する下りが出て来たのも女性観客を念頭に置いたサービスであろう。総じて、「Aisha」(2010年)などの流れを汲む、都市在住の若い女性受けを狙った作品といえる。
主人公のリヤーはもっともニュートラルな女性像を体現している。いわば清純派である。そして18歳の誕生日を機に恋人に処女を捧げようとしていた。リヤーの親友ジャグスは、身長が低く横に広い外見をしていたが耳年増で、リヤーに次々と賢明なアドバイスを繰り出す。もう一人の親友ソニアは天然ボケだ。さらに、三人は富豪の娘ナターシャとその取り巻きと火花を散らす関係にあった。リヤーと妹ミンティーとの関係も面白い。ミンティーはまだ小学生くらいだがやたらと大人びており、リヤーの弱みにつけ込んで、衣服などの所有物をどんどん巻き上げていく。
一方で、男性キャラは添え物でしかない。ゲームのためにリヤーを利用しようとし、リヤーたちから復讐のターゲットにされたラヴは悪役だから別格として、その取り巻きの二人はどちらもパッとしないし、リヤーたちに協力することになったカールティケーヤンもほとんど利用されるだけの弱々しい存在だった。
復讐の内容はけっこうえげつない。自動車を破壊するのもどうかと思うが、薬物を使ったりして、下手すると死んでしまうような内容のものがあった。それでも、ラヴの行為は分かりやすい「女性の敵」であり、観客の同情はリヤーに集まるため、復讐の過程は楽しんで見守ることができた。
リヤーを演じたシュラッダー・カプールは初めて主演を務めた。手を伸ばしたら届きそうな、庶民的なかわいさのある女優であり、演技力にも不安はない。脇役を務めたプシュティー・シャクティとシュリージター・デーも適役であり、この三人のトリオのハチャメチャなやり取りは映画の笑いの中心を成していた。
最後にアリー・ザファルが登場して「F.U.N. Fun Fanaa」を歌うのは心地よいサプライズだ。しかも単に歌のみに出演だけでなく、少しだけストーリーにも絡む。
「Luv Ka The End」は、女性視点で描かれた若い女性向けの映画である。プレイボーイへの復讐劇をコメディータッチで描いた。期待の新人シュラッダー・カプールの初主演作としても注目すべきである。