Zokkomon

2.5
Zokkomon

 2011年4月22日公開の「Zokkomon」は、子供向けのスーパーヒーロー映画である。インドのスーパーヒーロー映画といえば「Krrish」(2006年)が代表だが、子供がスーパーヒーローになるタイプの映画は初めてかもしれない。ウォルト・ディズニー・インディアが製作した。

 監督はサティヤジト・バトカル。「Lagaan」(2001年/邦題:ラガーン~クリケット風雲録)に関わっていた人物で、アーミル・カーンなどと近い関係にあることが予想される。主演は、アーミル・カーン監督作「Taare Zameen Par」(2007年)の名子役ダルシール・サファーリー。また、脇役と悪役としてベテラン俳優アヌパム・ケールが一人二役で出演している。他に、マンジャリー・ファドニス、シーバー・チャッダーなどが出演している。

 舞台は架空の村ジュンジュンマカドストラーマー村。両親を亡くし、デヘラードゥーンの学校で学んでいたクナール(ダルシール・サファーリー)は、叔父デーシュラージ(アヌパム・ケール)が校長を務めるジュンジュンマカドストラーマー村の学校に転校してくる。だが、ジュンジュンマカドストラーマー村の人々は迷信に惑わされ、デーシュラージや怪しい宗教家スワーミーデーヴ・バーバーに支配されていた。デーシュラージの学校では体罰が日常的に行われていた。

 デーシュラージと妻のラージラーニー(シーバー・チャッダー)は、クナールの死んだ両親の遺産を手に入れるため、クナールの死を偽装することを計画する。デーシュラージはクナールを遠くの街に連れて行き、置いて来てしまった。迷子になったクナールは、放浪生活をするキットゥー(マンジャリー・ファドニス)と出会い、相棒になる。だが、キットゥーは警察に捕まり、クナールは故郷に向けて出発する。

 ジュンジュンマカドストラーマー村では、デーシュラージとラージラーニーがクナールの葬式を既に行っており、村人たちはてっきりクナールが死んだものと考えていた。だから突然クナールが現れたことで、お化けだと考える。行き場がなくなったクナールは、森の中にある幽霊屋敷に転がり込む。

 その幽霊屋敷では、ヴィヴェーク・ロイ(アヌパム・ケール)という科学者が実験室を作っていた。迷信を信じ、科学を信じない村人たちから避けられ、人里離れた場所で実験を繰り返していたのだった。まだ幼いながら科学の知識を持ったクナールはヴィヴェークに一気に魅入られ、デーシュラージに復讐するために、「ゾコモン」を名乗り、科学の力を使って空を飛んだりして、村人たちを恐怖のどん底に陥れる。デーシュラージも戦慄する。また、釈放されたキットゥーがジュンジュンマカドストラーマー村までやって来て、クナールと合流する。

 クナールがまだ生きていることを知っていたデーシュラージは、ゾコモンがクナールであることに勘付いていた。デーシュラージはクナールを殺そうと襲い掛かる。クナールは学校に逃げ込むが、屋根から落ちて怪我をしてしまう。だが、村の子供たちがゾコモンになってデーシュラージを取り囲む。デーシュラージは今までの自分の悪事を白状する。

 クナールはしばらく意識を取り戻さなかったが、キットゥーやヴィヴェークの必死の看病により、目を覚ます。ゾコモンのおかげで迷信から解放された村人たちは、クナールの回復を喜ぶ。

 基本的にはスーパーヒーロー映画だが、いろいろな要素を詰め込みすぎていて、焦点の定まらない映画になっていたと感じた。

 まず、一番の話題は科学vs迷信であろう。迷信の支配するジュンジュンマカドストラーマー村に、科学的な思考ができるクナールがやって来たことから、この物語は始まる。しかも、旧態依然とした学校では教師が威張り散らし、体罰が横行していた。村人たちから幽霊と考えられるようになってしまったクナールは、科学者ヴィヴェークと出会ったことで、科学の力で幽霊になりすまし、デーシュラージなど、汚職した大人たちを脅かす。しかしながら、科学が迷信を助長する道具になってしまっており、このテーマは破綻していたと感じた。一連の事件の後に、村人たちが迷信を信じなくなり、科学を信じるようになったというエンディングであったが、ストーリーがあまりその終わり方を支持していなかった。

 「Zokkomon」は、両親をなくしたクナールが、しばらく家同然に過ごしてきた学校を出て、自分の家を見つけるまでを描いた作品でもあった。その過程で、家も家族も持たないキットゥーや、お化け屋敷で科学実験に明け暮れるヴィヴェークと出会う。そして、デーシュラージを懲らしめた後は、クナールはそのまま彼らと暮らすようになり、家族を持つ。そして、迷信から解放された村人たちはクナールを受け入れ、彼は両親の死後初めて家と呼べる環境を手にする。だが、叔父から捨てられたクナールがデヘラードゥーンの学校に戻ろうとしなかったことが不思議で、やはり首を傾げたくなるような脚本だった。

 クナールは、科学の知識は人一倍持っていたが、身体能力が他の子供より格別に優れていたわけではなかった。一応、ゾコモンになるために訓練もしていたが、一朝一夕にスーパーヒーローにふさわしい身体能力が得られるとは思えない。ゾコモンになったクナールは、いくら科学の力を借りているとはいえ、あまりに超人的な動きを見せて非現実的すぎるため、あまり映画のストーリーに入り込めなかった。子供向け映画ではあるので、幾分差し引いて考えなければならないのは分かっているが、スーパーヒーロー映画としてはお粗末といわざるを得ない。

 「Taare Zameen Par」で一躍注目を浴びたダルシール・サファーリーにとっては「Zokkomon」は、「Bumm Bumm Bole」に次ぎ3作目の主演作だ。他にも複数の子役俳優が出て来た映画だったが、やはりダルシールの演技力は頭一つ飛び抜けている。とてもいい演技をしていた。ダブルロールを演じたアヌパム・ケールも、いい意味でのオーバーアクティングを楽しんで披露しており、とても良かった。

 「Zokkomon」は、21世紀に入ってヒンディー語映画界にジャンルとして確立したスーパーヒーロー映画に分類される。また、キッズ映画でもある。子供が観る分にはいいかもしれないが、大人が観ても無条件に楽しめるというレベルの完成度は残念ながら期待できない。ディズニー映画である点は特筆すべきであろう。興行的には大失敗に終わった。