Hijack

1.5

 最近のヒンディー語映画界は猫も杓子もテロ映画で食傷気味だ。テロを題材にした優れた作品も何本か出て来てはいるが、それでもこう多すぎると飽きてしまう。2008年9月5日公開の「Hijack」も、テロリストによるハイジャックを題材にしたシンプルなアクション映画である。

監督:クナール・シヴダーサーニー
制作:ディネーシュ・ヴィジャーン、クナール・シヴダーサーニー
音楽:ジャスティン・ウダイ
歌詞:クマール
衣装:パーヤル・サールージャー
出演:シャイニー・アーフージャー、イーシャー・デーオール、モナ・アンベーガーオンカル、KKラーイナー、スニール・ゴードセーなど
備考:PVRセレクト・シティーウォークで鑑賞。

 ヴィクラム・マダーン(シャイニー・アーフージャー)は、チャンディーガル空港の整備工長だった。だが、実は彼は昔パイロットをしていたことがあった。彼の運転する飛行機はハイジャックされ、同乗していた妻が殺されてしまった。このときの行動が原因でヴィクラムはパイロット免許を剥奪され、そのときから整備工をして生計を立てていたのだった。死んだ妻との間には1人娘のプリヤーがおり、デリーの学校で勉強していた。

 ある日、プリヤーが学校の行事のため、飛行機でアムリトサルへ行くことになった。しかし運悪くその飛行機は6人のテロリストにハイジャックされてしまう。テロリストは飛行機をドバイに向かわそうとするが、燃料が足らないため、チャンディーガル空港に立ち寄ることになる。

 内相(スニール・ゴードセー)と対テロ本部長クマールを中心に、ハイジャック犯に対する対抗策が話し合われる。内相はチャンディーガル空港への着陸許可と給油許可を出し、まずは時間を稼ぐことにする。テロリストは、拘束中のテロリスト、ラシード(KKラーイナー)の釈放を要求する。乗客が人質に取られているため、内相は要求を呑む。

 ところが、プリヤーの乗る飛行機がハイジャックされたことを知ったヴィクラムは、給油の際に飛行機に単身乗り込み、情報収集を始める。そして、客室乗務員サイラー(イーシャー・デーオール)の助けを得ながら、二人のテロリストを殺害する。ところが、テロリストに、娘が乗客の中にいることが知れてしまい、ヴィクラムは投降を余儀なくされる。

 同時に、釈放されたラシードが飛行機の中に乗り込んで来た。ラシードは、対テロ本部長のクマールも人質に連れて来たが、内務省のサイモン次官(モナ・アンベーガーオンカル)は、クマールこそがテロリストの黒幕アブドゥッラーであることを突き止める。だが、時は既に遅かった。ラシードとアブドゥッラーはハイジャック犯たちと合流し、飛行機はドバイに向けて飛び立とうとしていた。また、ヴィクラムは、プリヤーを人質に取られたまま、飛行機の外に放り出される。

 しかしヴィクラムは諦めなかった。親友で警備部長のラージーヴの助けを得ながら、ヴィクラムはヘリコプターから飛行機の翼に飛び降り、離陸前の飛行機のジェットエンジンに物を投げ込んで故障させる。そしてラシードを乱闘の末に倒し、プリヤーを助け出す。また、アブドゥッラーは警察に逮捕される。

 ハリウッド映画「ダイハード」シリーズ型のアクション映画。クライマックスの飛行機離陸直前シーンは迫力があったものの、それ以外は冗漫な展開が続き、特筆すべきところはない。

 ハイジャックによって妻を失ったトラウマを持つ元パイロット、現整備工の主人公が、娘が乗り、ハイジャック犯に乗っ取られた飛行機に単身乗り込んで娘と乗客を救い出すという、シンプルな筋のアクション映画である。昔パイロットをしていただけなのに主人公のヴィクラムはなぜかテロリストに対する手際がよかった。元コマンドーというのならまだ納得できるのだが、非常に予定調和的なB級アクション映画だと感じた。

 テロリストの描かれ方もステレオタイプで、イスラーム教徒に対する偏見を助長する内容であった。乗客も次から次へ無慈悲に殺されて行き、不毛である。まるで子供が書いたような脚本であった。

 主演のシャイニー・アーフージャーは、ヒンディー語映画界の中で渋い位置にいる男優であるが、今回は単純なアクションヒーローを演じただけであった。イーシャー・デーオールも、ほとんど見せ場なしの、名ばかりのヒロインであった。

 かと言って、徹底的な娯楽映画的な作り方がしてあるかというとそうでもなく、上映時間は2時間ほどで、ダンスシーンがお情け程度に入っている程度。それもストーリーとはほとんど関係ない入り方で、安易な理由から挿入されたことが見え見えである。

 総じて、「Hijack」は何のために作られたのか全く分からない映画になっていた。残念ながら観るだけ無駄の映画であるので、ここで忠告しておきたい。