Mere Baap Pehle Aap

3.5

 モンスーンの足音迫る今日、本日(2008年6月13日)より公開の新作ヒンディー語映画「Mere Baap Pehle Aap」を観に出かけた。前々から今年の期待作の一本に数えられていた映画である。

監督:プリヤダルシャン
制作:ラマン・マールー
音楽:ヴィディヤサーガル、タウスィーフ・アクタル
歌詞:サミール
振付:ボスコ・マルティス、シーザー・ゴンザレス、Mプラサード、ポニー・ヴァルマー
出演:アクシャイ・カンナー、パレーシュ・ラーワル、ジェネリア、オーム・プリー、マノージ・ジョーシー、アルチャナー・プーラン・スィン、ショーバナー、ラージパール・ヤーダヴ、ナスィールッディーン・シャー(特別出演)
備考:PVRプリヤーで鑑賞。

 ショッピングモールで店を経営するガウラヴ(アクシャイ・カンナー)は、父ジャナールダン・ラーネー(パレーシュ・ラーワル)と共に暮らしていた。母はガウラヴが生まれたときに死去していた。ガウラヴの兄チラーグ(マノージ・ジョーシー)は結婚して別の家に住んでいた。ジャナールダンは、親友でトラブルメーカーのマーダヴ・マートゥル(オーム・プリー)に翻弄されて息子にこっぴどく叱られてばかりだったが、父子は強い絆で結ばれていた。

 あるときラ-ネー家にローズという名の女性から電話がかかってくるようになる。ローズは、ガウラヴの元クラスメイトで、ガウラヴと将来を誓い合った仲だと自己紹介し、ガウラヴとの間にできた子まで持ち出す。ガウラヴもジャナールダンも大慌てするが、実はローズの正体はシカー・カプール(ジェネリア)という女の子だった。シカーは昔ガウラヴにいじめられたことがきっかけで登校拒否になり、米国へ渡っていた。今回友人アンジャナーの結婚式に出席するためにインドに一時帰国するにあたって、ガウラヴに復讐しようとしたのだった。だが、シカーに悪気はなく、正体が分かってからはガウラヴとシカーは仲直りした。シカーは、大学で音楽を教えるアヌラーダー(ショーバナー)という女性の家に居候していた。

 シカーは明るく元気な女の子だった。ジャナールダンは、ガウラヴとシカーが結婚すればと考えるようになる。ある日ジャナールダンはシカーにガウラヴとの結婚を持ちかけるが、シカーはガウラヴとは友人のままがいいと言う。だが、ジャナールダンは話を急がず、気が変わったらいつでも教えて欲しいと言う。

 シカーの友人アンジャナーの結婚式が行われることになった。ガウラヴ、ジャナールダン、マートゥルも結婚式に呼ばれ、ケーララ州の村を訪れた。アヌラーダーも結婚式に出席するが、そのときジャナールダンはアヌラーダーと会い、驚く。ジャナールダンとアヌラーダーは実は同じ村の出身で、かつて二人は駆け落ちしようとしたことがあった。だが、二人は駅で捕まってしまい、ジャナールダンは家族から暴行を受け、アヌラーダーは連れ去られてしまった。それ以後、ジャナールダンは屈辱から逃げるようにムンバイー、ロンドンを転々とし、別の女性と結婚もし、現在の地位を築いたのだった。だが、アヌラーダーはジャナールダンへの愛を貫き、独身を通していた。

 結婚式以降、ジャナールダンの様子がおかしくなった。その秘密を突き止めたガウラヴとシカーは、ジャナールダンとアヌラーダーをくっつけようとする。最初はうまく行かないが、やがて2人は結婚することになる。また、その過程の中で仲を深めたガウラヴとシカーも結婚を決める。

 ところが、父子の同時結婚の前に2つの問題が立ちはだかった。ひとつは、長男チラーグの妻の家族が、ジャナールダンの再婚を認めようとしなかったこと。もうひとつは、シカーの父親(ナスィールッディーン・シャー)が、ジャナールダンがもし再婚するなら、シカーとの結婚は認めないとガウラヴに通達したことである。窮地に立たされるジャナールダンとガウラヴだったが、ジャナールダンは親戚の反対を押し切ってアヌラーダーと結婚することを決め、ガウラヴは父親の幸せのためにシカーとの結婚をも犠牲にすることを決める。

 ジャナールダンとシカーの結婚が行われた。それを聞いたシカーの父親は、ガウラヴを呼び出す。ガウラヴは、父親を後回しにして結婚することはできないこと、そしてたとえシカーとの結婚を認めてもらえなくても、一生シカーを待ち続けることを伝える。その見事な心意気を見たシカーの父親は、安心して娘をガウラヴに与える。シカーの父親はガウラヴを試したのであった。

 プリヤダルシャン監督と言えば、ヒンディー語映画界で「コメディーの帝王」の異名を持つヒットメーカーで、その名を聞くと自然に、徹底的に笑いにこだわった抱腹絶倒の名作コメディー映画の数々が思い浮かぶのだが、「Kyon Ki…」(2005年)や「Bhool Bhulaiyaa」(2007年)など、コメディーだけではない総合的娯楽映画も送り出している。この「Mere Baap Pehle Aap」も、予告編などではコメディー映画として売り出されていたが、実際に見てみると、コメディーシーンは前半に集中しており、残りの部分は父子の絆を核にした感涙映画に仕上がっていた。

 前半で面白いのは、50過ぎになってもしつこく結婚相手を探すマーダヴ・マートゥルがラ-ネー家を巻き込んで引き起こす騒動と、「ガウラヴと将来を誓い合った仲」と自己紹介して突然現れるシカーが引き起こす騒動の2つである。ガウラヴが父ジャナールダンを叱りつけるシーンも受ける。なぜなら、普通は父親が息子に言うような叱り文句を、息子が父親に叩きつけているからである。だが、それらが落ち着いた後は、ガウラヴとジャナールダンの父子の絆が強調される。ガウラヴは父親の再婚のために奔走し、ジャナールダンは息子の結婚を夢見る。ジャナールダンが再婚するとガウラヴの結婚が破談となるという難しいシチュエーションに置かれるが、父子の愛でそれを乗り切り、二人はめでたく揃って結婚を果たすという流れになっている。

 途中、突然舞台がケーララ州に移るが、プリヤダルシャン監督が元々ケーララ州のマラヤーラム語映画の出身であることを考えれば納得が行く。ケーララ式結婚式、バックウォーターの風景、ボートレースなど、ケーララ州の魅力が凝縮されていた。

 前述の通り、予想に反してコメディーシーンは少ないものの、ヒンディー語のコメディー映画には欠かせないパレーシュ・ラーワルやラージパール・ヤーダヴが出演し、笑いを盛り上げている。だが、今回彼ら以上に笑いの渦にいたのは名優オーム・プリーであった。最近とても使いやすい男優に成長して来たアクシャイ・カンナーは、コメディーと感動の入り交じったこの映画の中で自分の仕事をそつなくこなし、評価を着実に上げていた。特別出演のナスィールッディーン・シャーも、インド映画お得意の逆転ハッピーエンドの立役者というおいしい役で出演。出番は少なかったが、ねちっこい演技を見せていた。

 しかし、白眉だったのはヒロインのジェネリアである。ジェネリアは16歳のときの2003年にヒンディー語映画「Tujhe Meri Kasam」でデビューしたが、同年公開され大ヒットとなったタミル語映画「Boys」に出演したことをきっかけに、南インド映画界で活躍していた女優である。だが、「Mere Baap Pehle Aap」でヒンディー語映画界にカムバックした。今後、アーミル・カーンの甥イムラーン・カーンと共演する話題作「Jaane Tu… Ya Jaane Na」(2008年)が控えており、これからはヒンディー語映画界でも注目を浴びる若手女優になりそうだ。はつらつとした若々しい演技が魅力で、表情に表現力のある女優だと感じた。うまくヒット作に乗っていけば、ディーピカー・パードゥコーンに匹敵する人気女優になれるだろう。

 「Mere Baap Pehle Aap」は、コメディー映画のように見えてコメディーだけでは終わらない映画である。純粋な大爆笑を求めて見ると期待外れになるかもしれないが、様々なラサ(情感)が詰め込まれたマサーラ―映画を味わいたかったら、オススメの映画と言えるだろう。おそらく「Jaane Tu… Ya Jaane Na」で人気爆発するであろう若手女優ジェネリアをチェックしておく目的で観るのもよい。


https://www.youtube.com/watch?v=9-DRF3Azf-I