今日はPVRアヌパム4で、2005年9月2日公開の新作ヒンディー語映画「Aashiq Banaya Aapne」を観た。「Aashiq Banaya Aapne」とは、「君が(僕を)恋の虜にした」という意味。監督はアーディティヤ・ダット(新人)、音楽はヒメーシュ・レーシャミヤー。キャストは、イムラーン・ハーシュミー、ソーヌー・スード、タヌシュリー・ダッター(新人)など。
カラン(ソーヌー・スード)とスネーハー(タヌシュリー・ダッター)はムンバイーの芸術大学に通っていた。母親を亡くし、仕事でほとんど家に帰って来ない父親を持つスネーハーは、カランを非常に頼りにしていた。また、カランはスネーハーに恋していたものの、その気持ちを伝えられずにいた。あるとき、大学にカランの幼馴染みのヴィッキー(イムラーン・ハーシュミー)が転校して来る。 ヴィッキーはカランよりも遥かに社交的な性格で、すぐにスネーハーを口説き出す。スネーハーもヴィッキーに惹かれるようになる。二人が接近することを面白く思っていなかったカランだが、ヴィッキーがスネーハーを絶対に裏切らないと誓ったため、二人の仲を認める。ヴィッキーとスネーハーは付き合うようになり、やがてスネーハーはヴィッキーと一夜を共にする。 ところが、あるときスネーハーはヴィッキーがカランの友人のチャーンドニーとソファーの上に抱き合っているのを見てしまう。スネーハーは絶望し、ヴィッキーと絶交する。それ以来、ヴィッキーから嫌がらせの電話やSMS(携帯メール)が頻繁に来るようになる。また、そのときヴィッキーの家からは麻薬が見つかり、逮捕されてしまう。 カランは落ち込むスネーハーに結婚を申し込む。スネーハーもそれを受け容れる。結婚式の日、その場には拘置所を出所したヴィッキーがやって来ていた。ヴィッキーはチャーンドニーも連れて来ており、カランとスネーハーに対し「全てをばらす」と脅す。するとカランは、自分がチャーンドニーに頼んでヴィッキーを罠にかけたことや、警察に電話をしてヴィッキーを逮捕させたことを暴露する。カランは拳銃で自殺しようとするが、もつれ合っている内にチャーンドニーを撃ち殺してしまい、カラン、ヴィッキー、スネーハーも高所から落ちて大怪我を負う。 病院では三人が入院していた。警察は事件の捜査を進め、ヴィッキーが犯人だと結論付けるが、意識を取り戻したカランは自供する。こうしてヴィッキーとスネーハーは結ばれることになった。
現在、「Aashiq Banaya Aapne」のサントラCD・カセットは大ヒット中である。タイトルソングの「Aashiq Banaya Aapne」や「Aap Ki Kashish」などが名曲と言えるだろう。映画と音楽が密接な関係を持ったインド映画界では、やはり音楽が流行すると映画もヒットするという法則がある。映画自体がよければそのまま大ヒットとなるわけだが、映画が駄作でも音楽がよければある程度興行収入を見込むことが可能だ。はっきり言って「Aashiq Banaya Aapne」は、音楽のみに支えられた映画だと言える。
ストーリーの中核は男女の三角関係。世界中で使い古された題材である。それでもこの映画のエンディングは、あまり他に例を見ないものであった。普通だったらその例のなさを「工夫」として賞賛するところだが、「Aashiq Banaya Aapne」の終わり方は残念ながら観客を突き放すような唐突なエンディングだったため、評価は低い。
主人公は、カラン、スネーハー、ヴィッキーの3人。カランは内向的な性格でスネーハーを密かに愛していた。一方、ヴィッキーは女ったらしな性格で、早速スネーハーを口説き落とす。ヴィッキーの浮気発覚により、スネーハーは彼から離れ、カランと婚約する。また、ヴィッキーは麻薬所持で警察に逮捕され、やっぱりひどい男だったことが発覚する。ここまでは王道と言っていいだろう。ところがクライマックスで何が起こるかというと、実はヴィッキーの浮気も逮捕もカランの仕組んだことだったことが分かり、カランは逮捕され、ヴィッキーとスネーハーが結ばれて終わるというエンディングだった。明らかに観客の同情はカランに向いているのに、それを突き放すような終わり方はインド映画に適合しない。奇をてらおうとする気持ちは分かるが、映画的にもインド映画的にも受け容れることができない筋だった。
イムラーン・ハーシュミーは不思議な男優だ。演技力はあるが、見た目は全然いけてない。なのに彼が出る映画は何かと話題になる。まず注目なのは、イムラーン主演の映画のサントラはヒットする確率が非常に高いことだ。「Murder」(2004年)、「Zeher」(2005年)のサントラはその年の音楽シーンを代表する曲となり、この「Aashiq Banaya Aapne」もそれに続いた。次に彼が主演する「Chocolate」(2005年)のサントラも売れ行きがよい。そして何よりうらやましいのが、なぜかイムラーンは共演する女優とキスシーンやベッドシーンを必ず演じていることだ。「Murder」ではマッリカー・シェーラーワトと、「Tumsa Nahin Dekha」(2004年)ではディーヤー・ミルザーと、「Zeher」ではウディター・ゴースワーミーと濡れ場を演じ、「Aashiq Banaya Aapne」でもしっかりタヌシュリー・ダッターの唇を奪い、かなり濃厚なベッドシーンを演じている。
ヒロインのタヌシュリー・ダッターは、2004年度のミス・インディア・ユニバースで、これがデビュー作。アイシュワリヤー・ラーイにちょっと似ており、演技も自然にこなせていた。これから成長して行く可能性は十分ある。カランを演じたソーヌー・スードは、声が低すぎて時々何を言っているかよく分からないが、脇役男優としてなら開花しそうだ。彼はタミル人のようで、タミル語映画とヒンディー語映画の両方に出ている。
この映画の見所は何と言っても音楽。と言うか、音楽のみ。ミュージカルがそれほど素晴らしい訳でもないので、サントラCDを買うだけで十分かもしれない。