Tumsa Nahin Dekha

1.5

 2004年9月24日から3本のヒンディー語映画と1本のヒングリッシュ映画が一気に封切られたが、その中でまず、「Tumsa Nahin Dekha」をPVRグルガーオンで観た。「Tumsa Nahin Dekha」とは、「君のような人は見たことがない」という意味。監督アヌラーグ・バス、製作はムケーシュ・バット、音楽はナディーム・シュラヴァン。キャストは、イムラーン・ハーシュミー、ディヤー・ミルザー、アヌパム・ケール、シャラト・サクセーナー、プージャー・バールティー、スレーカー・スィークリーなど。

 大富豪の一人息子ダクシュ(イムラーン・ハーシュミー)は毎日酒を飲んでは放蕩生活をしていた。ある日、ダクシュは道端で見かけた女の子ジヤー(ディヤー・ミルザー)に一目惚れしてしまい、突然キスをしてしまう。ジヤーは酒場でダンサーをしており、知能障害者の兄と共に貧しい生活していた。ジヤーは最初ダクシュを避けるが、次第に二人は恋仲となり、結婚の約束までする。

 ところがダクシュは父親から無理矢理お見合い結婚をさせられる。相手は同じく大富豪の娘で幼馴染みのアナーヒター(プージャー・バールティー)だった。ダクシュはジヤーと結婚したかったが、親の言うことに逆らったら勘当されて一文無しになってしまうのを恐れて、しぶしぶアナーヒターとの結婚を受け容れる。それと同時にダクシュはジヤーに結婚できないことを伝える。突然の心変わりにジヤーは怒り悲しむ。

 ところで、ダクシュにはジョンおじさん(アヌパム・ケール)という、父親よりも親しい関係にあった人がいた。ジョンおじさんはダクシュのことをよく理解しており、ジヤーのことも知っていた。ジョンおじさんは癌に冒されており余命幾ばくなかったが、医者の制止を振り切ってジヤーを訪ね、ダクシュを手に入れるためには奪わなければならない、と励ます。

 ジヤーはダクシュとアナーヒターの婚約式に乗り込むが、二人の婚約を止めることはできなかった。その日、ジョンおじさんは他界する。以後、ダクシュは心の支えを失って自暴自棄になる。一方、借金が溜まりすぎて職を失ったジヤーは、喫茶店でウェイトレスをして生活していた。ダクシュはジヤーを探し出して、今度こそ本当にプロポーズをする。その後ダクシュは結婚式でアナーヒターに結婚できないことを伝える。結婚式は台無しとなってしまうが、ダクシュの祖母(スレーカー・スィークリー)はダクシュとジヤーの結婚を認めるのだった。

 今年上半期のヒット作「Murder」(2004年)を送り出したチームが再度送る作品とのことで、鳴り物入りで公開されたものの、前作とは比較するのもおこがましいほど独創性やユニークさに欠けた映画だった。典型的インド映画なので、感情をうまく映画の流れに乗せることができれば多少泣くことができるが、見終わった後の満足度は低い。

 映画中、いくつか印象的なシーンはあった。例えば、まだダクシュがジヤーを一生懸命口説いている時期のシーン。なかなか心を開いてくれないジヤーに対し、ダクシュは「じゃあ僕たちの運命を試そう」と言って、10ルピー札に「Daksh Loves Jia」と書いて、道端のワタアメ屋に渡す。「この10ルピー札がもし君の手元に来たら、運命が僕たちを結び付けようとしていると信じよう。」その10ルピー札は、物語の終盤、喫茶店で働いていたジヤーのところへ戻って来る。その直後、ダクシュがやって来てジヤーにプロポーズをする。あまりに出来すぎた話だが、真似するカップルが続出するような予感がした。その内「○○ Loves ○○」と書かれた紙幣があちこちで出回るかも・・・。

 ダクシュはジヤーを見た途端、突然ツカツカと歩いて行って、突然彼女にキスをする。それが二人の出会いだった。だが、二人が相思相愛になったとき、ダクシュはジヤーにキスするのを恥らってしまう。男心をうまく描写していたと思う。最後のシーンではジヤーの方からダクシュに突然キスをして映画は終わる。ちなみにイムラーン・ハーシュミーとディヤー・ミルザーは本当に口を付けてキスをしている。最近インド映画では急速に生のキスシーンが増えてきた。

 この映画の一番の欠点は、登場人物の描写が中途半端なことである。ダクシュとジヤーは主役だからいいとしても、脇役たちが本当に脇役でしかなく、キャラクターが生きていなかった。ジョンおじさんは何の前振りもなしに突然入院し、突然他界してしまうし、ダクシュの婚約者アナーヒターがなぜ彼のことをそれほど好きなのか全く説明されていないし、ダクシュの祖母のキャラも取ってつけたようだ。ジヤーの兄だけは唯一キャラが際立っていたものの、重要な役割を果たせておらず、影が薄かった。

 イムラーン・ハーシュミーはハンサムな男優とは思えないが、演技力はある。今回は大富豪の御曹司役だったが、あまり似合っていなかった。もうちょっとストーカーじみた気持ち悪い役が似合う男優である。いつもはもっとお嬢様な役を演じていたディヤー・ミルザーは、今回は場末の酒場のダンサー役というけっこう際どい役を演じていた。ほとんど裸のようなコスチュームで踊るミュージカルシーンもある。デビュー当初はアイシュワリヤー・ラーイ二世と騒がれ、未だにアイシュのイメージから抜け出せていないが、演技や踊りには以前より磨きがかかったし、何より大人っぽくなったのがよい。

 一応ムンバイーが舞台の映画だったと記憶しているが、どうやら多くのシーンはドバイで撮影されたようだ。別に海外ロケは悪くないが、ドバイでムンバイーのシーンを撮影するときに、ドバイ・ナンバーの自動車がスクリーンに堂々と映っているのはどうかと思った。

 「Tumsa Nahin Dekha」は、特に特別な理由がないのなら、無理して観るまでもない映画である。題名にもひねりがない。