Muskaan

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Muskaan
「Muskaan」

 インド対パーキスターンのクリケットマッチの影響でここ2週間、新作ヒンディー語映画が封切られない状態だったが、ODIシリーズが終わって一段落したためか、今日(2004年3月26日)から再び新作映画が公開され始めた。一気に3本のヒンディー語映画、そして1本のテルグ語映画が封切られたのだが、その中でまずは主演俳優に比較的花のある「Muskaan」を観にチャーナキャー・シネマへ行った。

 「Muskaan」とは「微笑み」という意味。ヒロインの名前である。監督はローヒト・マニーシュ。主演はアーフターブ・シヴダーサーニー、グレイシー・スィン、グルシャン・グローヴァー、ネーハー、パルヴィーン・ダバス、ヴラジェーシュ・ヒルジー、アンジャラー・ザヴェーリーなど。

 若手ファッションデザイナーのサミール(アーフターブ・シヴダーサーニー)と女子大生のムスカーン(グレイシー・スィン)は、間違い電話をきっかけに出会い、お互い未だ見ぬ相手に恋していた。二人とも名前を名乗らず、匿名で電話をして毎日話をしていた。

 ある日ムスカーンは15日の旅程でロンドンへ行くことになった。ちょうど同じに日程でサミールも仕事で仲間のシャラド(パルヴィーン・ダバス)、サティーン(ヴラジェーシュ・ヒルジー)、シカー(アンジャラー・ザヴェーリー)と共にシムラーへ行くことになり、15日後の1月1日にムスカーンとムンバイーのインド門で会うことを約束した。ところが、ムスカーンのロンドン行きは急にキャンセルになり、ムスカーンも友人と共にシムラーへ行くことになった。サミールもムスカーンも、間違い電話の相手が同じ場所にいることは知らなかった。

 たまたまバスで同席となった二人は最悪の相性で、ケンカばかりしていた。宿泊するホテルも同じだった上に、向かい合わせの部屋に泊まることになった。しかし余命幾ばくない子供に対するサミールの温かい眼差しを見て、ムスカーンはサミールを見直した。サミールもファッションショーのモデルとしてムスカーンを採用したいと思っており、ムスカーンと友達になろうと思っているところだった。二人の間のわだかまりは急に溶ける。

 その頃、同じ事務所で働くジャーンヴィー(ネーハー)もシムラーに来た。ジャーンヴィーはサミールのことを愛していたが、サミールは彼女のことをただの友達だと認識していた。サミールとムスカーンの仲がいいのを見て、ジャーンヴィーは嫉妬する。

 ところがある日、ジャーンヴィーが部屋で殺されているのが見つかった。ジャーンヴィーは死の間際に「S」というダイングメッセージを残した。犯人の名前の頭文字だと思われたが、事務所仲間の四人の名前の頭文字は全てSだった。刑事(グルシャン・グローヴァー)はサミールを犯人だと疑ったが、ジャーンヴィーが死ぬ直前に自宅に電話したときに残した留守録が見つかった。それにより、犯人はサティーンであることが分かった。サティーンは逮捕された。

 15日間のシムラーでの滞在が終わり、サミールとムスカーンはムンバイーへ帰ることになった。二人はお互いに恋していたが、間違い電話の相手と交わした約束を忘れることができなかった。二人はそのまま別れる。しかし、ふとした拍子にサミールの口ずさんだ歌がムスカーンの耳に入った。それは間違い電話の相手が書いた詩だった。サミールとムスカーンはお互いを間違い電話の相手だと気付き、抱擁を交わす。

 即ゴミ箱行きの映画。筋は悪くなかったのだが、監督の腕が悪いのか、ひどく時代遅れな映画に思えた。

 間違い電話から始まる恋、顔も知らない相手に恋する男女、そして実際に出会うことを恐れる気持ち、しかし間違い電話の相手だとは知らずに出会ってみると、ケンカばかり、序盤の筋はいささか使い古されたものではあったが、悪くなかった。ただ、音楽やミュージカルシーンに気合が入っていないことや、ストーリーテーリングのまずさから、退屈な印象を受けた。

 シムラーに到着し、ジャーンヴィーが殺害されてからは、一転してサスペンス映画となる。元々サミールは何者かに命を狙われていたが、犯人がドジなためいつも暗殺計画は失敗していた。しかしシムラーでは標的は急にジャーンヴィーとなった。一応ジャーンヴィーを密かに恋していたシャラドが一番怪しい人物という風に観客に訴えかけられていた。ただ、実際の犯人はお調子者のサティーンだった。サティーンはサミールの成功に嫉妬していたのだった。だが、この辺りのどんでん返しも十分予想可能だった。いまいちひねりが足らない。「S」というダイングメッセージというのもしょぼすぎる。

 サミールが歌った歌によって、ムスカーンが間違い電話の相手をサミールだと気付くシーンは、いかにもミュージカル重視のインド映画という感じだったが、これも特に新しい手法ではない。しかも、仕事仲間のジャーンヴィーが殺害され、サティーンが逮捕されたというのに、他の仲間たちにあまり悲しみの感情がなかったのが気になった。

 一応主人公はファッションデザイナーなのだから、映画中のファッションにくらいは凝ってもらいたかったのだが・・・全く駄目な衣装だった。これもマイナス要因。

 アーフターヴ・シヴダーサーニーはだんだんいい男優に成長しつつあるように思った。アーミル・カーンを長身にしたような雰囲気で、ふてぶてしい表情がかっこいい。一方、グレイシー・スィンはだんだん気味の悪い女優に転落しつつあるように思えてならない。「Lagaan」(2001年)の頃に比べて急に老けたように見えるし、不機嫌な表情の彼女の顔はすごい怖い。「Lagaan」でのサーリー姿が強く印象に残っているため、グレイシーの洋服姿がどうも不恰好に見えてしまう。

 もう少し丁寧に作ればいい映画になったと思うが、残念ながら鑑賞に値する映画ではない。