Bollywood Hollywood (Canada)

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Bollywood Hollywood
「Bollywood Hollywood」

 今注目のヒングリッシュ映画に分類される「Bollywood Hollywood」を観に、ラージパトナガルに新しく完成した高級映画館3C’sへ行った。インドでは2003年1月3日公開だが、カナダでは2002年10月25日に公開されている。

 3C’sのチケットはフロントシートが100ルピー、リアシートが150ルピー。座席数は325席で、中規模映画館といった感じだ。座席の色はPVRの青色に対抗してか赤で統一されている。映画館の天井が星空のようになっており、とりあえず高級感はある。音響設備は申し分なく、低音がズンズンと響いてきて気持ちいい。このインドの高級映画館の高音質大音響に慣れてしまうと、日本の映画館の音が物足りなくなるくらいだ。今回客層は若者が多かった。

 「Bollywood Hollywood」はインド人監督、インド人俳優主体、アメリカロケの英語映画である。監督はカナダ在住のインド系女性監督ディーパー・メヘター、主演はラーフル・カンナー(アクシャイ・カンナーの弟)、リサ・レイ、ジェシカ・ペレ、モーシュミー・チャタルジー、ディーナー・パータクなど。ちなみにアクシャイ・カンナーが本人役で特別出演する。

 ラーフル(ラーフル・カンナー)はアメリカ在住のインド人で大富豪。彼は白人のガールフレンドで人気アイドルのキンバレー(ジェシカ・ペレ)と結婚しようとしたが家族に反対される。何の因縁か、キンバレーは撮影中の事故で急死してしまう。悲しむラーフルを尻目に、母親(モーシュミー・チャタルジー)はラーフルの花嫁探しを開始する。どうしてもラーフルの姉の結婚式までに、ラーフルの婚約者を決めておきたかったのだ。しかし母親はラーフルの花嫁に絶対的な条件を勝手に決めていた。相手はインド人でなくてはならない、という条件である。

 そんな中、ラーフルはクラブで一人の女の子と出会う。彼女の名前はスー(リサ・レイ)。最初ラーフルは彼女をスペイン人と勘違いするが、実際は彼女はインド人だった。ラーフルは彼女を一時しのぎの婚約者に仕立て上げ、なんとか急場を凌ごうとする。ラーフルは彼女に大金を渡してうまく口裏を合わせてもらう。

 ラーフルはスーを家族に紹介する。とにかくインド人の婚約者が決まってラーフルの家族は大喜びする。スーは家族に溶け込み、次第にラーフルも彼女に惹かれていく。そして遂にラーフルはスーに愛の告白をする。

 ところがスーは売春婦だった。それが発覚するとラーフルは彼女との結婚を取りやめる。家族にもそれを説明する。しかしラーフルは彼女を忘れることができなかった。ラーフルはスーの家へ行きプロポーズをする。

 デリーでは割とヒットしているみたいだが、イマイチの映画に思えた。ストーリーに起伏がなくて、盛り上がりに欠ける。基本的にラブコメだったのだが、ギャグが稚拙でまるで日本のTVのコント劇のようなシーンもあった。僕は予め「Bollywood Hollywood」のCDを買っており、けっこういい曲が多いと思っていたのだが、それらの音楽の使われ方が納得できなかった。もっと映画の中で使って欲しいと思うようないい曲が、お情け程度に挿入されるだけだった。音楽監督サンディープ・チャウターもこれでは納得いってないだろう。最後のクレジットシーンで流れる「Chin Chin Choo」だけが光っていたが、なにしろ最後なので、そのシーンを見ずに席を立ってしまうインド人観客も多く、なんか非常に中途半端に思えた。監督はもっとインド映画のあのド派手なストーリーの起伏とミュージカルシーンを勉強すべきだ。

 途中でアクシャイ・カンナーが突然登場するが、彼の登場にしてもストーリー上何の脈絡もない。確かに主演のラーフル・カンナーとアクシャイ・カンナーは兄弟だが、だからと言って何の前振りもなしに登場されたのでは頭が混乱する。普通特別出演する俳優というのは、ある程度名声が確立した人であることが普通だ。しかしアクシャイ・カンナーはそんな特別出演できるまで人気のある俳優ではないと思う。ただ弟が出演しているからというだけで特別出演できたのだろう。だが、そんなしょうもない理由でやすやすと特別出演してしまったのでは、逆に格が下がってしまう。さらに不幸なことに、この映画でアクシャイは気味の悪い踊りを踊っており、この映画で彼の格は2ランクぐらい下がったと思う。おいおい・・・。

 「Bollywood Hollywood」という題名なので、もっとハリウッド的要素もあるのかと思ったが、はっきり言ってボリウッドがハリウッドに出会うようなシーンは全くなかった。ただ冒頭のシーンで主人公のラーフルが白人の人気アイドルと恋仲なだけである。かと言ってボリウッド的要素がふんだんに盛り込まれているわけでもない。やっぱり中途半端な映画である。

 アクシャイ・カンナーの弟、ラーフル・カンナーは、はっきり言って兄よりもハンサムだと思う。アクシャイはかなり前髪の生え際が際どくなっていた。ラーフルは前髪もまだ大丈夫そうである。ただ顔がなんかお面みたいで気持ち悪い。この兄弟の顔は極端過ぎてあまりファンがつかないと思うのだが・・・。一方、主演女優リサ・レイはカナダ生まれのインド人で、ムンバイーでスーパーモデルとして活躍しているらしい。しかしモデルにしてはあまり突出した美人というわけでもなかった。演技ももっと磨きが必要。

 ヒングリッシュ映画というのは外れがないと思っていたのだが、その神話もこの映画のせいで崩れ去ってしまった。英語で映画を作っても、作り方が悪ければ映画は面白くなるはずもない。その現実を見せ付けられてしまった。