
「Murder at Monkey Hill」は、「Mission Kashmir」(2000年/邦題:アルターフ 復讐の名のもとに)や「12th Fail」(2023年)を監督し、「3 Idiots」(2009年/邦題:きっと、うまくいく)のプロデューサーとしても知られるヴィドゥ・ヴィノード・チョープラーが、インド映画テレビ学校(FTII)の学生時代のディプロマ映画として作った作品である。プレミア上映は1976年3月11日とされている。
25分ほどの短編映画で、白黒である。チョープラー監督自身が主演を務めており、他にはアンジャリ・パイガンカルとディリープ・ダワンが出演している。
プロットは、アクタル(ヴィドゥ・ヴィノード・チョープラー)という名前の殺し屋が、モンキー・ヒルという場所でプラビ(アンジャリ・パイガンカル)という女性の暗殺を請け負うが、彼女に恋してしまい、きこり(ディリープ・ダワン)に殺害を依頼するというものである。
ただ、この映画の冒頭と最後では、投資家に対して映画制作への出資を呼びかけられている。資金がなく完成にこぎ着けなかったということで、尻切れトンボで終わっているし、ストーリーも断片的である。
それでも、ヌーヴェルヴァーグ風のストーリーやカメラワークにはチョープラー監督の才能の片鱗が見え隠れする。出来上がった部分の映像からは、資金難を全く感じさせない。そればかりか、とても緊張感や迫力のある映像になっている。ロケーション選びもうまい。ただ、俳優としてのヴィドゥ・ヴィノード・チョープラーは並程度だった。
「Murder at Monkey Hill」は、ヒンディー語映画界を代表する映画メーカーであるヴィドゥ・ヴィノード・チョープラーがFTIIの学生時代に作った短編映画である。資金難のために未完成という状態だが、映像化されている部分だけを観てもチョープラー監督の才能の片鱗が見える。一見に値する作品である。