The India Story

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The India Story
「The India Story」

 2026年7月24日公開の「The India Story」は、農薬の過度な使用によって汚染された野菜などが原因で、インドにおいて癌患者が急増していることを告発する法廷ドラマである。

 監督は新人のチェータンDK。音楽はマンゲーシュ・ダークレー。主演はカージャル・アガルワールとシュレーヤス・タールパデー。他に、ムラリー・シャルマー、マニーシュ・ワードワーなどが出演している。

 プネー在住のヨーゲーシュ・パーティル(シュレーヤス・タールパデー)は娘パリーを癌で亡くし、その原因が農薬にあると知ると、国、農薬製造会社、農家を相手取って訴訟を起こす。彼の弁護人を務めたのがアルチャナー(カージャル・アガルワール)であった。アルチャナーは農民を「無責任」と呼んだことで国中の農民たちから反発を受ける。訴状が受理されると、被告側の弁護人としてヴァルダー・アグニホートリー(マニーシュ・ワードワー)が立てられる。

 アルチャナーは実直さで評判の警察官僚ヴィジャイ・ラートール警視監(ムラリー・シャルマー)を調査官に推挙し、パンジャーブ州やケーララ州の村々を一緒に視察する。これらの地域では農薬のせいで多数の癌患者が出ていた。

 また、アルチャナーはラートール警視監に、ヨーゲーシュの身の上話を聞かせる。ヨーゲーシュはインド陸軍の軍人であり、デリーでテロを計画していたテロリストを壊滅させたことで勲章も受けていた。しかし、パリーが癌になったことで軍を辞め、彼女の治療に専念する。家や土地を売って作った金で彼女の骨髄移植手術をするが完治しなかった。ヨーゲーシュはパリーをムンバイーの公営病院に連れていくが、劣悪な環境の中で彼女は息を引き取る。

 さらに、実はアルチャナーはヨーゲーシュの妻であることも明かされる。アルチャナーはまだ弁護士資格を取ったばかりだったが、娘のような犠牲を出さないために国などを相手取って裁判に打って出たのだった。

 ラートール警視監は裁判長に報告書を提出し、農薬が引き起こしている災厄を知らしめる。裁判長はヨーゲーシュの訴えを全面的に聞き入れ、政府に対して緊急に対応することを命じる。

 我々が日常的に口にする食品が健康に害を及ぼす可能性があることをインド社会に告発しようという純粋な問題意識から作られた映画だと感じた。農薬の問題が主だったが、偽牛乳の問題にも触れられており、近い将来、汚染された食品のせいでインドはさらに多くの癌患者を抱える恐れがあることが訴えられていた。

 ただ、問題意識だけでは映画は成立せず、観客がそれを楽しみながら受け止められる形で提示する必要がある。「The India Story」はそれに失敗していた。法廷ドラマでありながら法廷でのバトルが致命的に単調であり、また回想シーンに必要以上に時間を割き蛇足なアクションシーンなども混ぜ込まれていたことで主題がぶれていた。カージャル・アガルワールやシュレーヤス・タールパデーのようないい俳優をキャスティングしていながら、彼らの実力を十分に引き出せていなかった。

 さらに気になるのが、映画の冒頭と最後に表示された注意書きである。「映画メーカーはこの問題についてきちんとリサーチしたわけではない」といったことがアナウンスされていた。ニュース報道や先行研究などは参照されたようだが、監督自身が現場に行って調査をしたわけではない。つまり、この映画は真に迫ることを目的としてない。そうなると、この映画の意義は何であろうか。

 ただし、映画の中ではパンジャーブ州のバティンダーとケーララ州のカーサラゴードで癌の罹患者数が異常に高い現状について触れられており、これはれっきとした事実である。バティンダーでは「緑の革命」以来、大量の農薬や殺虫剤を使った農業が行われており、これが農業従事者や作物の摂取者に癌をもたらしているとされる。バティンダーの癌患者は、ラージャスターン州のビーカーネールに列車で移動して治療を受けており、この列車は「キャンサー・トレイン」の異名を持っている。カーサラゴードでは長年にわたってカシューナッツ農園で殺虫剤エンドスルファンを空中散布していたことが原因で癌をはじめとしたさまざまな健康被害が出ている。

 「The India Story」は、インドの市場に農薬などで汚染された食品が出回っており、それを普段から食べている消費者に深刻な健康被害が出る可能性があるという不都合な真実を告発するために作られた問題意識重視の映画だ。だが、監督が未熟のため、その問題を観客の心を掴む形で提示することができていなかった。残念な作品である。