Jajantaram Mamantaram

3.0
Jajantaram Mamantaram
「Jajantaram Mamantaram」

 日本に一時帰国する前にあとひとつだけ映画を観ておくことにした。「Ishq Vishk」(2003年)、「Khwahish」(2003年)、「Nayee Padosan」(2003年)など、是非観ておきたいヒンディー語映画があった中で僕が選んだのは「Jajantaram Mamantaram」。2003年5月30日公開の子供向けヒンディー語映画で、「Monsoon Wedding」(2001年)や「Bend It Like Beckham」(2002年)など良質のインド映画を連発しているiDream Productionの作品である。PVRナーラーイナーで朝10時半からの回を観た。

 「Jajantaram Mamantaram」とは特に意味のない言葉で、映画中で合言葉としてよく出てくるフレーズである。主演はグルシャン・グローヴァー、ジョイ・フェルナンデス、ジャーヴェード・ジャーフリーなど。監督はソウミトラ・ラーナーデー。

 典型的なムンバイーっ子のアーディティヤ(ジャーヴェード・ジャーフリー)はアラビア海で遭難して小人の島に漂着する。島にはシュンディーという王国があり、ブーパティという国王によって統治されていた。小人たちもアーディティヤもお互いの存在に驚くが、アーディティヤは持ち前のユーモアでシュンディーの人々と仲良くなる。

 一見平和そうに見えたシュンディーにも悪の権化がいた。将軍チャラン・スィン(グルシャン・グローヴァー)は王国を乗っ取ろうと画策しており、巨人ジャームンダー(ジョイ・フェルナンデス)を使ってシュンディーの人々を恐怖に陥れていた。アーディティヤはジャームンダーを退治してますます村人たちの信頼を得る。

 アーディティヤの一番の親友は一般兵のジェーラーンだった。ジェーラーンはアーディティヤに励まされてアモーリー姫と恋仲になるのだが、それを見たチャラン・スィンは国王に密告してジェーラーンを追放の刑にさせる。そしてチャラン・スィンの王国乗っ取り計画は本格的に始動する。アーディティヤはパワーアップしたジャームンダーによって重傷を負わされ、国王らはチャラン・スィンによって幽閉される。

 しかしジェーラーンを中心にシュンディーの人々は団結し、アーディティヤを看病すると同時にジャームンダーに対抗するための武器を作った。ジェーラーンは国王救出に成功し、アーディティヤも再度ジャームンダーと対決して打ち負かす。こうして王国に平和が訪れ、アーディティヤはムンバイーに帰るために海へ去っていくのだった。

 どうしても「ガリバー旅行記」が連想されるが、映画のウェブサイトを見ると原作はグジャラート地方に伝わるおとぎ話「バカースル」だと言い張っている。小人の国に迷い込むという設定なので、SFXがふんだんに使用されていたが、ハリウッド映画と比べるとまだまだ幼稚である。しかしインド映画のヴァラエティーが広がることはいいことだ。このような子供向けのファンタジー映画もインドで製作されるようになってくると、映画界全体にもいい影響が出ると思う。

 ストーリーには脈絡のない部分がいくつもあった。アーディティヤがシュンディーへ漂着するまでの過程がほとんど説明されていなかったり、途中意味のないキャラクターが出てきたり、アーディティヤがどうやってムンバイーに帰るのかよく分からなかったりと、細かいところでもどかしいところはたくさんあった。だが子供向け映画ということであえて批判は避けておこう。主人公のアーディティヤのキャラクターは賛否両論あるだろうが、面白かったのでこれも目をつむっておく。悪役のおっちょこちょいぶりは子供たちに非常に受けていた。

 わざとやっているのか知らないが、セットはなんだか安っぽくて幼稚だった。学芸会の劇のような家や衣装をみんな着ていた。それらのデザインはインド各地に住む部族の風俗が参考にされていると思う。

 僕としてはあまり楽しめなかったのだが、まあこういうインド映画もたまにはいいかな、と思わせる映画だった。この路線でもどんどん映画を作っていくといいと思う。